不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

ロシア市民が政治を語る

私はコロナ禍以前に毎年来日していたロシア人同門とよく政治の話をしていました。
何度か訪露した折にもよく政治の話をしました。
そこで感じたことです。
一部過去のブログと重複すると思います。

私が話した感じです。
多分一般的なロシア人の多くは我々が高校ぐらいまで学ぶような国際社会通念のような授業はあまり受けてこなかったように思います。例えば三権分立とか国家主権とか、ごく一般的な概念を知らないか、知っていてもさして重要なものとは認識していません。
なので国内で憲法や法律が恣意的に曲解されたり、拡大解釈されたり、無視されたりしても「いい権力者」であれば許せる、何かいい考えがあるに違いないので問題ない、という、ウソみたいですが今は懐かしの帝国時代の臣民の考えのままの人が大変多い気がします。選挙が公正ではないことを理解している人は割と多いですが、選挙の公正さを守ることの重要さ、それが守られなかったことから引き起こされる重大なことを彼らはあまり想像できません。この点は驚くほど幼稚です。

ただ彼らは決して愚かなのではなく、1917年まではロシア帝国皇帝の臣民であったし、1991年まではソビエト連邦の市民でしたから、そもそも民主主義には全くなじみがなく、基本的人権はともかく、社会に於ける基本的権利と言うものはほとんど理解していないのも無理はありません、と言いたいところです。
特に高齢者はそれが顕著で、YouTubeでも検索できますが目も当てられないほど愚かな発言をする人が多い。
もっとも、その点日本もいったいどれ程の日本国民がそれを理解しているのか疑問に思うことはありますが。

更に彼らはずっとプロパガンダ教育の中で生きてきました。ソ連が崩壊してウクライナ侵略が始まる前までは国が豊かになってきていましたからそれほどいびつなプロパガンダは必要なかったように思いますが、高齢者たちはかつてのソ連の栄光を夢見ていますし、中高年はまだ古い時代の思想を引きずり、欧米諸国のような民主主義にはなじみがありません。インテリ層、ホワイトカラー層などはその限りではないので政府を信用してません。さすがに若い世代はプロパガンダを含めてロシアの教育全体を疑って掛かっているようですが。

ロシア人たちと政治の話をすると、彼らは熱心に米国大統領はどちらが良いか議論します。これ、失礼なのですが傍から見ると本当に笑えます。自分たちの大統領はもう10何年も権力座の座に居座り続けて、キングオブ不正選挙なのにロシア国民はそれでも他国の選挙には興味はあるようです(笑) 
そして彼らはウクライナでは公正な選挙によってゼレンスキー大統領が当選したという意味が理解できません。実際、前大統領ポロシェンコの妨害が多く、公正を保つにはなかなか苦心したようですが、それでもゼレンスキーが当選してポロシェンコはキチンと大統領の座から去りました。ロシア人はこれ如何に重要であるかということを理解できません。民主主義国家の市民たる我々は選挙は絶対公明正大であるべきで、いかなる権力者もこれに従わねばならないというのは神聖不可侵の約束事ですが、ロシア人はこんな簡単な民主主義のお約束すら理解できないのです。私は幾度となくこの重要性を説明して理解させましたが、彼らの教育はこれが重要であることは教えていないようです。これは本当に驚きます。恐らく中国国民も同じく理解できないのではないかと思いますが。

ちょっとぐらい国内法や国際法を曲げても権力者が自分たちをよい方向に導いてくれるのであればそれは問題ない、というのが彼らのスタンスです。恐るべしです。それと少々可愛そうなのは彼らの世界的な影響力がまだ大きいと思っている辺り。実際少なくはありませんが、もうソ連時代ではないのです。そして悲しいかな影響力があるのは殆ど軍事だけ。経済力に至っては韓国と同じ程度、日本の数分の一、米国の10数分の一程度でしかありません。これが彼らのプライドを痛く傷つけているように思います。ですが現在、民主主義と資本主義の組み合わせが今のところ国家を経済的に強くするもっとも効率的な組み合わせであることは疑いもなく。ロシアが頼みにしている中国も恐ろしい勢いで崩壊しつつある今、どうしていくつもりなのかと思います。

ロシア連邦が唯一、世界に影響を与えていた軍事力ですが、これまた驚くべきことに戦略思想が前世紀的で兵器も結局張り子の虎で今回の侵略では西側兵器のいいテスト材料にされている始末。やはりよい兵器を作るには基礎がしっかりした資本主義で培った経済力に裏打ちされていないとできないことが分かりました。まあ、物量作戦は第二次世界大戦さながらですが。せいぜい自慢できることが兵器ぐらいと言うのも情けないですが、今後はそれもあまり市場を広げられるようには思いません。

やはり国家の基というのは国民の教育ありきなのだと、今回の戦争で痛感させられました。
今回色々ロシア人のイタい所を書きましたが、実際問題、ロシア人の国民性はアメリカ人よりは遥かに日本人と似ているのは間違いありません(笑) 我々も愚かな政治家に騙されないよう、気を付けたいところです。

令和六年弥生三日
不動庵 碧洲齋

2010年に初めてロシアに行った時に撮影した赤の広場