不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

ロシアの友人と語る

ここ数日、ロシアの親友と色々やり取りしてます。
何故か彼はフェイスブックが使えているのでメッセンジャーでのやり取りです。
昨夜からのやり取りです。



ロシア軍によるウクライナ侵攻からすでに1ヶ月が経過しました。 しかし、ロシアの軍事作戦はあまり成功しておらず、世界からの非難と制裁ははるかに強くなっているようですが、ロシアの現状はどうですか?


プーチン氏-私たちの民主主義の大統領彼は聖人です彼はナチスと戦い、スラブの世界を守ります ナチスと西洋の悪魔に対する特別な行動です。それはすべてが破壊するウクライナナチスです。彼は自分自身やエゴイスティックなことについて考えることは決してなく、常に一般市民についてのみ考えています。すぐに彼はウクライナの人々に自由を与えます。 -テレビからの情報です。 まさに、この意見に同意しない人々は、現在、国家の裏切り者として認められています。もっと説明が必要ですか?
言葉を失いますよね? ロシア人は毎日テレビからこんな情報を見たり聞いたりしています。
今では、私はこの種のテレビニュースを見ている人と意思疎通することはほとんど不可能です。


なるほど、国営メディアが言っていることとまったく同じようです...ロシアでは多くの独立系メディア会社が強制的に閉鎖されたと聞きました。 ロシア国民は、情報を知る自由が限られていることに疑いを持ったりしないのですか?


半数の人が考える可能性を失ったことがわかります。政府が彼らの代わりに考えるからです。そして正確に言えば、考える可能性を失わない人は、今や政府にとって危険な人です。
しかし、外国のテレビや独立系ブロガーから情報を入手することはまだ可能であり、望めば世界の状況を見ることができます。結局それは心と心に依存します。


あなたはとても良い点を指摘しています。 非常に長い間、ロシア国民は国の活動について判断する必要はありませんでした。 ちょうど旧ソ連が崩壊した30年前から判断することを要求されはじめました。 しかし、それはまだ不完全な環境です。 ですから、国についての考察と判断は、依然として「国を統治する誰か」によるものです。 そして、「ロシアはすでに選挙を行っている」ので、西側の市民はその事実を認識していません。 この侵略によって、私は、多くのロシア市民が、西洋市民のような民主主義についての標準的な考え方を持っていないことに気づきました。 そして、私はそれを変えるのは非常に難しいはずだと気づきました。 あなたの考え方や見方は私たちと同じです。ロシア市民の多くが考えを変えてくれることを心から願っています。 そうでなければ、ロシアはより良いものに変わることはありません。


友人はご両親が旧ソ連時代からリベラルな考えの持ち主で、本人も西側諸国の市民と同じような視点を持っています。
ウクライナ侵攻が始まるまでは私は彼がロシア人の標準的な考え方だと勝手に思っていましたが、実際そうではないことに気付きました。気付いてから恐ろしくなりました。

結局ロシア人は「まだ政治について自分で考えて判断するレベルにない」のです。不完全で不正が横行しているとは言え、旧ソ連からすでに30年も経ち、例えば今のウクライナ侵攻の最前線で戦っている兵士らのほぼ全員は自由を知り、ものが豊かにあり、世界中どこにでも自由に行けるロシア世代でしょう。故に私たちは誤解するのです。「彼らは政治のスタンダードも同じ」と。

日本が江戸時代から明治時代になり、「民主主義」が入ってきてから30年頃と言えば、清国を撃破したものの西洋列強には勝てず遼東半島を手放し、第5.6回衆議院選挙が行われました。投票できる人は納税15円以上の25歳以上の男子のみでした。大正時代にはいわゆる「大正デモクラシー」が花開き、共産主義なども含めて国民が政治の自由を理解し始めたものの、そのすぐ後には列強どうしの闘争があり、第1次、第2次世界大戦が終わるまで日本の民主主義はほとんど発展がありませんでした。手痛い敗戦と米国による干渉があって現行の憲法ができ、ここに初めて完全な民主主義国家になりました。明治維新から80年以上も経っています。「この日本民族をして」80年かかったわけです。ロシア人が本当の意味で民主主義を理解するのにあと50年もかかったとしても何の不思議もありません。

今の日本人が本当に民主主義を理解しているとは到底思えません。貴族、将軍、戦前の天皇、戦後の内閣、色々変わりましたが、国民は本当に民主主義に目覚めているんでしょうか?頭がすげ変わっただけでそんなに変わったようにも思えないことしばしばです。実際政治が市民によって変えられたことがないからです。英語で言うところの「civil war」が一度もありません、多分。全部武士などが中心にやったことです。この事実はいつも恐ろしいと思います。だから日本人が自発的に政治の権利について考えて、そのための行動を起こしているのかと言われたらしてないと、私は言えると思います。

とはいえ今の多くのロシア人は政治やそれに付随したことについて考えることを誰かに委任していいる、というのが最大の悪と言えます。優れているだろう誰かに全権委任して、委任した以上は自らは義務を果たすだけ、という人がかなり多かったので驚きます。その義務とは政府が情報を統制したり、反対意見を言う人を逮捕するのも是とするという辺りがまだロシア人が人権の何たるかを理解してない証左と言えます。私たち西側諸国の人間からすれば、例え納税義務を怠っているような人であっても政府に文句を言う権利、自由に情報を得る権利があると知ってますが、ロシア人はそんなことすら知らない人が多い。

故に今回のようにまるで19世紀末か20世紀初頭のような他国侵略に対しても何ら疑いもなく政府を信頼している人が多いと言えます。民度が低いとかそう言うことではなく、歴史的バックグラウンドを知ればより深く理解できると思います。(ウクライナ侵略を理解しろとはもちろん言いません、単にロシア人の理念ということです)

令和四年弥生二十四日
不動庵 碧洲齋

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