不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

銀河英雄伝説の言葉から

「銀河英雄伝説」において色々なキャラクターたちが政治や軍事についてなかなかおもしろいことを言っています。私はそれを書き留めたものを持っているのですが、昨今、ロシアのウクライナ侵略もあり、幾つか関連がありそうな語録をご紹介します。

 

- 政治は軍事の失敗を償うことができる。 だが、その逆は真でありえない。

*日露戦争では停戦条約のテーブルにロシアを座らせる目的で戦われました。太平洋戦争時の軍人と違って日露戦争当時の軍人たちの見識の高さはさすがです。大変失礼ながら同じ帝国軍人とは思えないほどです。ちなみに日露戦争当時の高級軍人の多くの生まれは江戸時代、ちょんまげをして刀を差して、将軍や大名に付き従って世界もほとんど知らなかったサムライたちが数十年後、世界でも最新の科学兵器に座乗して世界戦史に名を残す輝かしい戦歴を打立てました。やはりサムライという人たちは優秀だったようです。

 

- 侵略や虐殺が、狂った専制君主の野心から出たものであれば、まだ救いがある。 絶望としか言えないのは、民衆が選んだ指導者によって民衆が害される場合である。

*正直現在のプーチンがどれだけ市民に支持されているか分かりません。独立系メディアでは2-3割ではないかというところもありす。ただし実際にどん底だったロシアをそれなりのところまで高めたのも事実なので、それに奢らずにいたらプーチンもいい指導者だったのにとは思います。

 

- 「政治なんて俺達には関係ないよ。」という一言は、それを発したものに対する権利剥奪の宣告である。

*これはロシアに限った話ではなく、日本などがこれでしょうね。ロシア市民はそもそも公正な政治的権利すらありませんからその点では哀れに思います。

 

- 本来、名将と愚将との間に道義上の優劣はない。 愚将が味方を100万人殺す時、名将は敵を100万人殺す。 その差があるだけで、殺されても殺さないという絶対的平和主義の見地からすれば、どちらも大量殺人者である事に差はないのだ。

*この言葉は好きです。戦争の本質を突いているように思います。正邪ではなく、戦うことそのものが悪という考えには賛成です。

 

「人民を害する権利は、人民にしかありません。…専制政治の罪とは、人民が政治の罪悪を他人のせいにできるという点に尽きるのです。 その罪の大きさに比べれば、100人の名君の善政の功も小さなものです。」

*民主主義の本質的なことを言ってますね。先の大戦とて軍部が暴走したとか、昭和天皇が始めたとか言う人もいますが、これは立派に帝国議会で可決された事案ですから結局帝国人民が希望して始めたに過ぎません。今の日本の政治家たちも結局のところ私たちが選んでいるに過ぎませんが、もう少しマシな人材が出ないものかどうか。

 

「人間の行為の中で、何が最も卑劣で恥知らずか。 それは権力を持った人間、権力に媚びを売る人間が、安全な場所に隠れて戦争を賛美し、他人には愛国心や犠牲精神を強制して戦場に送り出すことです。」

*プーチンとゼレンスキー大統領のコントラストが印象的です。どんな危機的でも首都を離れなかったゼレンスキー大統領は素晴らしいと思う半面、プーチンはいつもテロに怯えているのは何とも情けない限りです。

 

「専制とはどういうことだ。 市民から選ばれない為政者が、権力と暴力によって市民の自由を奪い、支配することだろう。」

*ロシアにも一応選挙はありますが、全く公正でも何でもない、単なるパフォーマンスです。つまりロシアの現政権は正確にロシア国民から支持されているわけではありません。ロシア帝国時代もソ連時代も人民には政治的権利がありませんでした。ま、日本人とてその政治的権利を正しく行使している人が行ったいどれ程いるのか疑問ではありますが。

 

「政治の腐敗とは、政治家が賄賂をとることじゃない。 それは個人の腐敗であるに過ぎない。 政治家が賄賂を取ってもそれを批判することができない状態を、政治の腐敗と言うんだ。」

*これはロシアのみならず中国やその他独裁国家でもその通りで付け加えるべき言葉もありません。

 

「独裁者という名のカクテルを作るには、たくさんのエッセンスが必要でね。 独善的でもいいから揺るぎない信念と使命感、自己の正義を最大限に表現する能力、敵対者を自己の敵ではなく正義の敵とみなす主観の強さ…」

*プーチンもヒトラーもナポレオンもこれに酔って無謀な戦争をした感ありですかね。

 

「政治家とはそれほど偉いものかね。 私達は社会の生産に何ら寄与している訳ではない。 市民が納める税金を、公正かつ効率よく再分配するという任務を託されて、給料を貰ってそれに従事しているだけの存在だ。 私達はよく言っても社会機構の寄生虫でしかないのさ。 それが偉そうに見えるのは、宣伝の結果としての錯覚に過ぎんよ。」

*これはぜひとも日本の政治家たちに唱和させたい(笑)

 

ま、こんな感じです。

 

令和五年葉月十日

不動庵 碧洲齋