不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

道行くことについて

自分の技量についてです。
「お前は下手だ」と言われたとき、どう反応しますか?
それなりの努力をしているときに言われたらカチンときますか?
冷静に受け止めますか?
怒り狂って反論、或いは反撃しますか?
それとも無視しますか?
また、それを言った人が上級者、同等者、下級者で反応は変わりますか?

これはあくまで私の場合なので参考にならないかも知れませんが。
血と汗が滲む思いで修行をしている・・・わけではなく(笑) 細く長く弛まぬ努力をしているという感じですから「努力が足りない」と言われればそれまでかも知れません。そのようにシャカリキになって稽古していた時期もありますが、猛ダッシュで長続きさせるのは難しいですね。

今まで努力してきたことについて何か悪いことを言われて怒らない人はプライドがないのか稽古に裏付けされた確信がないのか。もし長く武芸の修行をしてきたのなら程度に差こそあれカチンとくるべきです。そうでなければ報われません。

とはいえ、そこで下品に反論したら水泡に帰します。
下級者であれば、そもそも優れた技法を理解するとは思えず。見えていない部分がまだまだ多いため、致し方ない。
それ以外の人であれば自分が気付かない、足りない部分を指しているのかも知れませんし、言った方がまだ自分のレベルに僅差で達していないのかも知れません。
伝統芸能に限らず僅差などと言うものは差のうちに入らず、そんなものはすぐに抜かれてしまいます。

言うまでもありませんが、例え悪意で指摘されたとしても、それは天の声と思って慎んで受けた方がより利用価値があります。
そもそも武芸を長く嗜んでいると、それだけで技量そのものを正当に評価しない人も多くいるものです。長くやっていればうまくなる、エラい、というバイアスが掛かります。これが一番怖い。
多くの賞賛の言葉に酔って、今いる自分の場所がどっかりと座り込んでしまう王座だと勘違いする人、それとも未だ困難な登山道の道中にいるだけなのか、その辺りを我が身に誡められる人だけが先に進めると思っています。

未熟を指摘されたら邁進の点火剤にして、それとは別に深い思慮と分別を武器に進んでいく、私はそのように考えています。

令和五年文月十八日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

服部半蔵の鎗