入門者の成長パターンは概して3つほどあるように思います。
一つはなだらかな上り坂型。大半はこれでしょうか。
一つは階段型。私はこれに入ります。
一つは急上昇型。
その中で一番多く辞めていくタイプが3つ目の急上昇型。ある程度のところまで行くと、それ以後、全く停滞して驚くほど成長しない。いえ、これで留まることを知らず成長する人がいわゆる天才なのでしょうが、3番目に限っては今まで会った方は全て天井でどん詰まり、辞めていくケースが100%でした。実際「天才」という人に会ってはみたい。
思うに基本、芸事というものはそうそう急速に覚えられるものではなし。早く成長する人はツボを押さえていますが、逆に言えば急上昇型の人はツボだけしか抑えていない。だから問題があるのではないかと思います。
例えで言ういわゆる「天狗になる」人も3番目。一つ目と二つ目は着実に伸ばすので鼻が高くなることはまれです。
学んだからもう用はないとか、思っていたのとは違うとか、人間関係とか、色々辞める理由はあります。もしかしたらそうかも知れませんが、そうやって色々な所を渉り歩いて一体どれ程のものなのかと、私は思ってしまいます。器用な人は色々味見ができていいのかも知れません。私は不器用なので当流をずっと歩むだけです。
そういう意味で私は「一芸は万芸に通ず」を真面目に信じている方です。
今まで何人もの人が門をくぐってそして出ていったことか。辞めるには惜しい技量を持った人も多かった。逆に言えばよい技量を持ちながら、人として疑念を抱かざるにはいられない人も然り。そういう人たちは縁がないのか運がないのかと思っています。
辞めない人はその時大した技量でも人徳もなくても、継続することで間違いなく磨かれます。そういう意味で継続は力なりというのは事実のように思います。間違いなく言えることは継続している人は速度はともかく間違いなく血肉になっているという事。私などはヘボいなりに細々と継続しています。自然、身に付いたものは多少大げさに言えば金剛石のようなもの、盤石です。
そこそこ在籍していても伸びていないなと苦しんでいる人はいますか?でも大丈夫です。創意工夫をして継続するという意志を持ち続けている事自体が臥龍の構えです。風雲がやってくれば一気に天に昇ります。私などは階段型ですから伸びない4.5年の間が一番辛い。焦燥感や敗北感にも苛まれました。今は克服していますがそれでもいわゆるスランプの時期は気分のいいものではありません。そういうときは精進工夫をしてじっとこらえ、時季を待つ以外にはありません。
自分がうまくなったと錯覚して「教えてやる」ことに生きがいを感じたり、自負心を持ったり、優越感を持ったりするとすぐに腐敗臭を発します。「鼻が高くなる」というヤツです。元来武芸者と言わず芸事を精進しているものは須く高貴な花の香りを纏って自若泰然と構えて精進すべきではないかと思っています。どこかの首長の台詞ではありませんが「武芸者に下品な男は不要だ」です。
平成二十九年皐月三十日
不動庵 碧洲齋