不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

大いなる和と為す

当流は外国人の比率が大変多いことでよく知られています。
私が所属する道場でも半分近くが在日外国人です。
元々日本に働きに来ていて、そこで当流を知ったという人もいれば、本場の日本で稽古がしたいが為にわざわざ日本に移住したという人もいます。
私はそのような環境で38年間稽古を続けてきました。なので自然、外国人と交流を持ち英語を話すことが日常でした。もっとも在日外国人門下生たちは皆流暢な日本語を話す人が大半ですが。

当流にふたりの外国人門下生がいます。
いつも気にならないありきたりのことですが、昨日稽古をしていてふと気付きました。
1人はアメリカ人、もう1人はロシア人、どちらも当流の武芸を学びたいが為にわざわざ日本に移住してきて、どちらも日本人と結婚して子供もいます。
彼らは共にかなり流暢な日本語を話します。道場内で会話をするとき、英語を話すこともありますが、その多くは日本語です。アメリカ人とロシア人が日本の武芸を学ぶために日本語で会話をする。私には当たり前すぎる日常ですが昨日はふと気付いてしまった、違って見えた日常的な風景でした。
そこに日本の在り方を重ねて見た気がします。

私は昔日本語教師をしていたことがあります。
その時、将来的に日本にいる外国人たちが日本語を共通語として会話をする時代が来る、そんなことを考えていましたが思えば今がまさにそんな時代です。
現在、残念なことにロシアはウクライナに対して不当な侵略をしており、ロシア人の同門も社会的に肩身の狭い思いをしていると思いますが、ロシアが事実上の仮想敵国と見做しているのがアメリカです。
個人的にはISSなどで大変素晴らしい宇宙開発協力を行っていて、頼もしく思っていただけにロシアのウクライナ侵略には本当に腹が立ちましたが、道場におけるアメリカとロシアは日本の文化を介して強い絆を持っています。
日本人としてこれほど喜ばしい事実はありません。これこそまさに私が理想としている大和の民の精華を体現している事実だと思います。日本は世界にあってこのような役割を持っていると信じています。

多少落ち目の経済力ではなく、目も当てられない政治力でもなく、やむを得ぬ事情とは言えシャカリキに伸ばしている軍事力でもなく、今なお目を見張る科学力でもなく、この日本の文化力を以て世に尽くす、これではないかといつも思っています。昨今YouTubeなどでやたらと自国礼賛動画を見受けますが甚だ見苦しい。国自慢をする暇があればその自慢のネタを実際に用いて世界貢献に努めるべきです。
我が国の存在意義は世に平らかなる和をもたらすことと思っています。理想に過ぎると思う人もいるかも知れませんが、今まで国内外で色々見聞してきた上で私はそのように感じるのです。
我等が文化を発信することは国威掲揚や祖国礼賛などという愚かしくも小さなためではなく、世界に真の和をもたらせるためであるという想いが強い今日この頃です。

令和六年卯月二十八日
不動庵 碧洲齋