不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

国威発揚

ロシアでは昨日9日は戦勝記念日として大々的に軍事パレードなどが行われて国威発揚されました。日本と違って陸続きの欧州諸国では第1次、第2次世界大戦共に凄惨で血みどろの地上戦が行われています。日本も米軍戦略爆撃機による絨毯爆撃で大体50万人以上が死んでますが、欧州諸国ではそんな数字ではありません。例えば先の大戦、日本では軍民合わせて300万人以上が死んでいますが、当時の人口約7200万人に対してわずか5パーセント以下です。欧州などでは人数こそ多くなくとも比率で言えば軽く死者が2桁パーセントに達した国や大都市がゴロゴロあります。欧州の戦闘はかなり悲惨なものでした。


ロシア、当時のソ連ナチスドイツから侵略を受けていて、あちこちで防衛線を構築したものの、どんどん打ち破られて結局モスクワにすら一部侵入を許してしまったほど。最終的には厳冬が助けとなって辛うじて防衛に成功したといった感じです。ロシアの友人から話を聞きましたが、中学生の生徒すら都市防衛の任に着かされ、一クラスで生存できたのは数人足らずというのも珍しくなかったそうです。その中学生たちはシベリアから援軍が来るまで抵抗したらしいですが、中学生ですからそもそも武器の使い方なども知らない上に、食料なども全く十分ではなく、飢えと寒さでも多く死んでいったそうです。どこまで信憑性があるか分かりませんが、ソ連の軍民死者数は2000万人を超えるとあります。文字通り日本の死者数とは桁違いです。ソ連1939年頃の人口は大体1億でしたから2000万人は20%です。ロシア人の5人に1人は死んだ計算になると思うとどれだけ厳しい戦いだったかがよく分かります。

 

で、5月初頭までにシベリアからの援軍がやってきたこともあり、やっとナチスドイツが降伏して平和を取り戻せたかのように見えましたが、ここでシベリアの援軍やその他の部隊がまたとんぼ返りでシベリアに戻っていきました。言うまでもなく日ソ中立条約破棄に伴う侵攻作戦準備の為です。対独防衛戦でクタクタだったソ連は、米国にボコボコにされて過去のような軍事力のない日本と極東で戦火を交えることはしばらくないだろうと踏んでいましたが、ソ連に条約を破棄して攻めろと要請した国があります。もちろんアメリカです。対独防衛戦の為、アメリカは膨大な物資をソ連に送り、ソ連に大きな貸しを作りました。更にソ連としては戦後の荒廃した国土を再建するためにまだ米国の支援が必要だった為、疲弊していた陸軍を鼓舞してシベリアに戻し、満を持して日ソ中立条約を破棄、満州北方領土に侵攻しました。
一応、駐ソ連日本大使館にはキッチリと条約を破棄する旨は告知されたそうですが、それがせめてもの良心だったのでしょうか。

ソ連としては国家が疲弊しきった状態で軍隊を極東に戻して、しかもソ連には別段得策になるわけでもない米国の戦略に加担することに不満はあったのでしょうが、その辺り国家防衛の為に援助物資をもらったという借りを返す律儀さがあったようです。この辺りはロシア人だなと思いますが。そういう事情ですからソ連軍の将兵は極東で盗賊のような行為を繰り返し、疲弊した国力を回復する為に日本人を拉致してシベリアで労働させました。どんな理由でもこれは許しがたい行為ですが、ソ連側の立場に立てば、何故そうしたのかが分かります。人や組織から何かを貸し借りするときはよく気を付けるべきですね。アメリカの壮大で狡猾な戦略は恐るべきものがあります。日本は戦う前に既に負けてました。ま、ソ連が聖人君子の国だったらアメリカの悪魔の誘いを拒絶したかも知れませんが(笑)

 

結果論として、ソ連北方領土を得て、極東における海軍の行動の自由がある程度確保できたわけですから、まあまあ悪くなかったと思ったのでしょうか。また共産国家ですから、条約を破り他国民を略取して労働させ、挙げ句領土まで奪ったことについては内心罪を感じていても鉄の顔で無視するのが常套手段かと。非道なことをしてペコペコ謝るのは国家ではありません。世界的にもそんなバカげたことをしているのは・・・日本だけです(笑)

 

北方領土は戻ってこないと思いますが、日本の経済規模はロシアの5.6倍(もっとかな?)にも及びます。戻ってこない領土のために極東開発を義理でやる必要はありません。個人的には希のない極東開発の支援をストップして、ロシアに悲鳴を上げさせることも可能ですが、その逆、もっとジャブジャブ使って極東地方を日本に味方させることもできるかも知れません。何せロシアは不正や賄賂が横行している国ですから首都から遠く離れた場所なら日本の資金力で経済的支配下に置くことは無理ではないように思います。元々ロシア人の大半は意外なほどに親日です。腐敗したロシア政府よりは歓迎されるかも知れません(笑)

 

ただ腹が立つこともあります。モスクワ郊外の軍事博物館では第2次世界大戦は5月9日に終わり、それ以後の展示がないと言うところ。日本人としてはちょっと不満ですね。あちらにしてみたら国家レベルの恥はもうなかったことにしたいという事だと思いますが。敗戦国とは言え、日本はそれなりに国力があるので、ここはもうちょっと世界に非を唱えた方がいいとは思ってます。

 

令和参年皐月十日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

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