不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

有朋自遠方来

当流は日本国内では知る人ぞ知るレアな流儀ではありますが、海外では多分現代武道を除く流儀の中では一番有名な流儀ではないでしょうか。
私が聞いた話では世界で80ヶ国以上もの国に公称50万人程度の門下生がいるのだそうです。
そういうことで16歳の時から世界中から外国人門下生が来日しては短い人で1週間、長いと1ヶ月とか滞在して稽古をします。富裕層の門下生などは年に何度も来日することがありますが、経済的に苦しい国の門下生たちも爪に火を灯す思いで年に1度、あるいは2.3年に1度来日して貴重な時間を稽古に励み、余暇で日本文化に触れたりしています。
ここ最近の世界のトレンドでは日本に旅行することがなかなか盛況ですが、当流の外国人門下生たちは30年以上前から熱心に日本に通っている人が大勢いました。
なので私にとって外国人と接しているという環境は普通なのです。

毎年来日する同門や数年に一度顔を見せる同門と会うと嬉しく思います。
そして彼らの滞在中はなるべく楽しんでもらったり、日本についての理解が深まるよう、時間が許す限り努力しています。
武芸を通じて日本人のものの考え方を学んで自分たちの国に持ち帰り、それを実践してくれると思うとこちらも力が入ります。また、彼らがもたらす西洋文化の神髄についてもよく語ります。親しい仲では政治、軍事、経済、歴史、文化などさまざま多岐に亘ります。
そのような知見こそが調和の取れた国際感覚を身に付ける要諦だと思います。
やはりどうしてもテレビやネットのニュースだけではいびつな国際感覚になりがちです。様々な国の外国人たちとサシで語りあっての本物の国際交流です。

現代は本当に素晴らしく科学が発展していて助かります。私が入門した1986年は海外の友人とやり取りするにはエアメールしか在りませんでした。1999年頃にアルゼンチンの友人と初めてメールでやり取りできたときは涙が出るほど嬉しかったですね。
そして今やSNSでほぼリアルタイムで世界中にいる友人たちとコミュニケーションが取れます。毎月のように世界数カ国に住む友人たちとオンラインチャットをしたりテレビ通話をしたりと、本当に未来に生きているという感じがしますしこの科学の発展には感謝しかありません。

とはいえやはり直接会った時の嬉しさは格別です。
何千キロも彼方からやってくるわけですから、有り難い上に嬉しい。
孔子の言葉をまとめた「論語」にはこんな言葉が載せられています。
「朋あり遠方より来たるまた楽しからずや(原文:有朋自遠方来、 不亦樂乎)」
江戸時代以前も孔子が生きていた時代も同じだと思いますが、遠くから知り合いがやって来るというのは本当に大変な事でした。それだけに嬉しさもひとかたならぬものがあります。
私は海外から同門が来日したときはいつもこの論語の言葉を思い浮かべます。

昨今はインターネットを介して海外の人と友人になることは容易になりました。言語の壁も今やかなり敷居が低くなりました。ほんの少しの勇気を持ってぜひ世界中の人と交流を持って、リアルに国際社会を感じてみてください。特に若い人たちにはとても魅力的に感じることでしょう。

令和六年皐月十三日
不動庵 碧洲齋

豪州同門を禅寺に連れて行き、坐禅を体験させたときの写真