不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

継続すること

昨晩の稽古の折、弟子と話した内容です。
私は20代の頃、海外留学や海外赴任、地方赴任のため何度か全く道場の稽古に参加できなかった時期がありました。
20代というと一番の伸び盛りですからストレスがたまります。仕事でもストレスを抱えていましたが、とにかく稽古に参加できないことがかなりストレスでした。従って多忙な仕事の合間を縫って独り稽古を工夫したりして、可能な限り技量を落とさないよう努力はしていました。

とはいえ毎回、帰国あるいは帰省した折に道場に行くのは結構な恐怖でした。もちろんそれは私が欠席の間、道場は一体どのくらいレベルが上がってしまったのだろう、自分は付いていけるのだろうか、恥を掻かないだろうか、などなど、妄想だけが膨らんで道場に行きたくなくなる気分と戦いながら行った記憶があります。

もちろん独り稽古という方法には限界があり、特に自分が未熟な折はどんなに独り稽古をしても効果という点では熟練者の独り稽古には敵いません。それは当たり前です。なので久々に稽古に参加するとそれなりに打ちのめされますが(笑)、やはり自分は武芸が好きなのだなという気持ちが再確認できたことが嬉しく思ったものでした。また独り稽古をしていただけに行きにくいとは言っても休むほどでもなし。

物理学では止まっている物体を動かすのと、少しでも動いているものを動かすのとでは使役するエネルギーの量が違うことはご存じだと思いますが、稽古も同じです。何ヶ月か何年かパッタリ行かなくなってからまた行こうとすると、膨大なエネルギーが必要になります。

なのでやはりその道を歩み始めたら遅くてもいいので歩み続ける方が時々立ち止まるよりもエネルギーを浪費しないと思うのです。エネルギーが有る時は早くすればいいだけのことですから。
周囲に対して須く興味関心を持ち、武芸に応用ができるか否かを照らし合わせたりすることでその道を歩むエネルギーを維持できるのではないかと思った次第です。

令和六年弥生十三日
不動庵 碧洲齋

稽古中の弟子

 

霜月二十二日稽古所感

「流技」とはは私が便宜的に付けた造語です。ネットで検索しても武芸に関して上記の単語はほとんどなかったようです。
文字通り「技を流す」稽古です。別にこれは私のオリジナルではなく、昔から行われていた稽古方法です。
普通に互いに、或いは片方が連続して技を掛け続けるというものです。掛かり稽古のようなものでしょうか。
他と何が違うのかというと、私の場合それは「受身」。技を受けて受身を取り、すぐさま相手を攻撃する(この場合は相手の胴着を掴む)。
当流では受身も重視するので投げられて受身を取り速やかに立ち上がり再度相手の胴着を掴むまでも稽古の範疇になります。ここが違う点です。
逆に捕り方は相手を投げた後、速やかに実戦的な残心を以て再起した受け方を待ち構える。残心は単なるポーズではなく、実用的であるべきと考えます。特に最近ですが。
言ってみれば残心を取り備えるのが早いか、受身をして再起するのが早いかです。
捕り方は投げてホッと一息ついたり、投げてバランスを崩したりすれば態勢を整える間もなく受け方に胴着を取られます。
一方で受け方も受身を取ってから慌てて捕り手の胴着を取ればバランスの悪いまま再度攻撃になりますからこれもマズい。
広義で(広義ではないかも知れないですが)態勢の位取りです。どちらかが先に主導権を取れるかで戦機を握ることができます。位取りができれば機先を制することができるということです。
普通に考えると受け手の方が遅いに決まっていると思うかも知れませんが、当流の受身は一般的な受身とは異なるため投げ飛ばしてバッタン、そこから再度立ち上がって態勢を取る、ではありません。それなりの技量であれば受身が終わった状態=攻撃態勢になっていますので、技量によっては投げられてから反攻するまでの時間はかなり短くすることができます。

弟子のKK君はここ最近はなかなかにめざましい進歩を見せていますが、昨夜の稽古で基本技をたった10回連続で受け手と捕り手をやらせただけで、どちらも終わる頃には息が上がって足腰が立たなくなるほど弱っていました(笑) 数回程度であれば割にうまく技を繰り出すKK君ですが、やや長目の連続技だとまだまだ持久力に欠けるようです。持久力というのは体力ではなく、力の抜き方を覚えること、安定したバランスを取ること、そしてムダな動きを徹底的に削ぎ落とすことにあります。私などはまだまだそれでもムダな動きが多いと師からしょっちゅう指南されるのですが、多分このコンセプトは他流でも同じかと思います。

一つ一つの技、複数技の有機的運用である術、これらを総合的に見ながら指南して参りたいところです。

令和五年霜月二十三日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

武神館 不動庵道場
【日時】毎週火又は水曜日:19:00-21:00, 土曜日:14:00-17:00
【場所】峯町会会館:埼玉県川口市峯999-1
【アクセス】東武スカイツリー線 草加駅西口
東武バス 川11にて約15分
バス停「貝塚」降りてすぐ。
駐車場あり。
入門希望者・興味ある方はご連絡ください。

霜月十八日稽古所感

弟子と稽古するときは、若干強めに投げ飛ばします。
当然ながら弟子は普通に結構吹っ飛びます。
弟子は受身を取ってダメージ軽減に努めますが、私が投げるとちょっとぐらいでは踏ん張れないほどに勢いよくボールかコマのように転がります。
といってもマットの上なので、怪我をするほどではありません。
稽古後数日、受身が取れなかったところが筋肉痛や打撲で痛くなります。

何故そのようなことをするのかというと、それは「完全な受身」ができるようになるためです。
例えば当流の熟練者であれば、コンクリートのような固い地面であっても自由自在に受身による機動が可能です(可能なはずです)。
最終的にはこのような能力を付けてもらうために日々受身の稽古をしますが、やはり自分の身を以て体で覚えるのが一番早く、そのために私は怪我をしないレベルで強めに投げています。
実際、KS君はここ最近はメキメキと実力を上げてきており、強めに投げ飛ばしてもまずまずうまい受身が取れるようになってきました。1年2ヶ月にしてはまずまずと考えます。

受身の修行はまだまだ続きます。片手や両手が使えない状況で受身をしたり、各種武器を持って受身をしたり、色々な条件の障害物を避けながら受身をしたりなどなど。どんどんレベルアップします。私たち指南する立場の者は、これらを如何に効果的に弟子たちにクリアさせるかが課題になってきます。
これらができての当流体術ありきです。

私は崖に面している山の斜面で六尺棒を持ちながら受身の稽古をしたことがありますし、色々な傾斜がある所でも受身を試したりしました。当流に於いて受身は単なる技を受ける時の動作ではなく、それ自体が技であり、機動手段でもあります。故に技の稽古と同様に受身の稽古もします。私の実体験に基づく見解でも受身はかなり有効でした(笑)

本日は稽古前に久々に坐禅を20分、禅仏教の話を少々と受身、一つの技の幾つかの変化を指南しました。

令和五年霜月十八日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

武神館 不動庵道場
【日時】毎週火曜日:19:00-21:00, 土曜日:14:00-17:00
【場所】峯町会会館:埼玉県川口市峯999-1
【アクセス】東武スカイツリー線 草加駅西口
東武バス 川11にて約15分
バス停「貝塚」降りてすぐ。
駐車場あり。
入門希望者・興味ある方はご連絡ください。

霜月八日稽古所感

昨夜は型稽古と基本技の構えに大半の時間を費やし、残った時間で技を一つだけ稽古した。
型については家でも行っているらしくまずまずよくなってきたが、虚空に手刀や拳を打つことの意義、心構えなどについてよく指南した。当流の、特に当道場の流儀では流水の如く淀みや切れ目のない動き、水面下の見えない動きを要としている。またKK君が「一拍の技」を意識していたことはよいことだった。

また、昨夜は家にあった数冊の古い「月刊秘伝」を譲渡した。当流の記事が掲載されているものもあり、興味を持ってくれて何より。彼自身は宗家には偶然一度だけ会うことができたが、それは彼にとってなにより修行を続けられるきっかけになったことと思う。

武芸だけではないと思うのだが、優れた技は無数で微小の、高い精度の動きが、任意の目標に向って有機的な連携でピッタリそこに至った場合に発現される。そしてその為の稽古は禅で言うところの「教外別伝」「不立文字」のように文字や言葉では伝えられないものである。故に有志の武芸者たちは日々汗を流して修練に励んでいると考える。

私なども武歴が長いばかりで稔りが薄いことこの上ないことを恥じ、精進工夫を怠らず武芸に邁進して参りたいところである。

令和五年霜月九日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

群馬県南牧村 黄檗宗不動寺にて

武神館 不動庵道場
【日時】毎週火曜日:19:00-21:00, 土曜日:14:00-17:00
【場所】峯町会会館:埼玉県川口市峯999-1
【アクセス】東武スカイツリー線 草加駅西口
東武バス 川11にて約15分
バス停「貝塚」降りてすぐ。
駐車場あり。
入門希望者・興味ある方はご連絡ください。

霜月五日稽古所感

このところマンツーマンの稽古が続く。
実際のところ、5人入門しても残るのはせいぜい1人ぐらいというのが当流に長年身を置いている私の感想。来る者は拒まず(大体)、去る者は追わずというのが基本である。

昨日はKK君が夜勤明けでやや体調がよろしくないというので坐禅と受身は省略、通常の夜間稽古のようにした。
指南した技は二つほどでいずれも投げ技。
長けてくると相手が崩れて動く軌道が見えてくるものである。
なので自ら押したり引いたりすることはほとんどない。
また、歩法も独特なためいわゆる見えない動き、感じられない動きになるため、KK君はよほど注意していないと運足が分からず。
本来であれば一箇所を見るかのように全体を見て、全体を見るかのように一箇所を見なければならないのだが、初心者にはそれがなかなか難しく。
更に進むと視覚に頼らない動きになっていくのだが、それはまた別の話。

組み手に於いてはそもそも組む前が要である。
そして流水の如く、清風の如く動くことが肝要である。
そして最も重要な技法は技そのものよりも崩しの技術であると、師からいつも指南を受けている。

マンツーマンの稽古では自然熱が入るため、結構肉体的にきつく感じる門弟は多い。
力の抜き方や無駄のない動きをまだマスターできていない門下生はそのうち受身から立ち上がることもままならなくなるが、その辺りの動きが一番よい動きである。
肉体が疲労の限界に達すると、本能的にムダな動きや無駄な力を抜いて動くため、逆に技がきれいに決まる。そのため私はよくマンツーマンの時はギリギリまで絞ることが多い。
弟子もその時の感覚さえ忘れずにいれば、ある意味一足飛びに理想的な動きを体感できる。

今月は主に水曜日夜と日曜日夜というイレギュラーだが海外門下生の来訪以外はマンツーマンの稽古になりそうだ(笑)

令和五年霜月六日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

坐禅会のために通っている寺

 

神無月三十一日稽古所感

昨日の稽古も1名(笑)
ま、増えてきたらマンーマン指導もできなくなると思い、今だけできる指導を心掛ける。
夜の稽古は時間的な制約や平日ということもあって比較的軽めの稽古にしている。
なにせマットの出し入れだけでも2人で行うと結構時間がかかるので。

昨日は組み手からの崩し。これは先週私が通う道場で行ったもの。
でしにはあまり技の手順については細かく指導しない。
間合と拍、下半身の安定や最小限の動きについて細かく指導している。
理由は動きの手順は動画や伝書でも確認できるため。

また、昨日から動画撮影も許可した。
私はどちらかというと動画を使うことには否定的な方だが、マンツーマンであることや時折自分でも見られることを考えて試験的に導入した。
要は動画を稽古に利用する場合の弊害をよく知っておくことが肝要だということ。
その上で利用すれば動画を見ることの利点は大きい。

最初の崩し技は上手く行えればほとんど相手を支えたり手を添えているだけで相手を投げることが可能だが、自分の都合のよいように無理に引いたり押したり、自然ではない方向に投げようとすると技は掛からない。

また、相手に感じることができない歩法、足捌き、体移動をすることが肝要と何度も言うがさすがにこれはすぐにはできない。

昨夜は久し振りに自分の動きを動画で見たが、イヤイヤまだまだ。個人的に理想的な動きは受けが何をされているのか把握できぬままに倒されること(これは及第点になりつつある)、第三者から見ても何をしているのか全く分からない動きがよい。まだまだ私の動きは悪い意味でよく見えてしまうことがある気がする。

2本目は行き違いの応用。相手がすれ違いざまに胸ぐらを掴もうとするときに掛ける技。
これも間合と拍子、正しい方向が重要。特に相手の腕を振るのではなく、相手の腕で振り、相手の体幹を崩すことが肝要。なかなかこれが難しい。私は長モノ武器に例えて説明したが割と理解できたようだった。

令和五年神無月三十一日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

富士山麓白糸の滝

武神館 不動庵道場
【日時】毎週火曜日:19:00-21:00, 土曜日:14:00-17:00
【場所】峯町会会館:埼玉県川口市峯999-1
【アクセス】東武スカイツリー線 草加駅西口
東武バス 川11にて約15分
バス停「貝塚」降りてすぐ。
駐車場あり。
入門希望者・興味ある方はご連絡ください。

神無月二十一日稽古所感

本日、ジョイントマット洗浄のために三十分ほど早い13時半に現着。
すでにKS君が先に来ていて、たまたま副会長さんも会館に用事があって開けてくれた模様。
早速洗浄を始めようとしたのだがKKさんが休みということ。
仕方がないので2人で始めた。
20枚のジョイントマットをまずは洗浄剤で両面を拭き上げてからスチームクリーナーでやはり両面を拭いて軽く拭き上げてから壁際に立てかける。1時間ちょっと掛かったものの触った感じは完全に油分が抜けていた。稽古終了時も革足袋の裏の光沢がなくなった。やっと相成ったという感じ。

本日前半は突きと蹴りに対する捌き型。
攻撃に対しては受けず避けず防がず水の如く流すべし。その勢を我がものとするを良しとするが、高い精度を以て攻撃を見切り、最小かつ最大効率の動きを体得すべし。

後半は組み討ちからの崩し。
組み討ちは組む前にほぼ勝負を決める。掴んだときにはすでに勝敗を決するつもりで間合い、拍子、精度を見切るべし。組みては虚を掴ませて実に転化するとき即ち相手が崩れるとき。

いずれも足捌きの安定と静かな送り足、見えぬ動きを以て成しうる。

どちらも終わり近くになると感覚を掴んできたかのように思うが、今後の研鑽に期待するところ大である。
・・・普段はあまり武技については語らない方だが、たまには良かろう。

悩みの種は未だ門弟が少ないこと。当道場の場合は海外からの来日門下生が頻繁に来るものの、それでも直門はもう数人は欲しいところ。門弟には最低でも週1程度の稽古は心掛けてもらいたいところ。

ジョイントマットを片付ける折はこれまた工夫を凝らし、断面L字型の硬質段ボール紙を10枚ごとの束各角にはめてその上からバンドで締めた。ダンボールにはダンボール用ホチキスが打たれていてバンドはそこを通すようになっているためダンボールはバンドからは外れない。これで片付けが次回から楽になる・・・はず(笑)

令和五年神無月二十一日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

先週土曜日に挙行された峯ヶ岡八幡神社における道場初めの御祈祷の写真

武神館 不動庵道場
【日時】毎週火曜日:19:00-21:00, 土曜日:14:00-17:00
【場所】峯町会会館:埼玉県川口市峯999-1
【アクセス】東武スカイツリー線 草加駅西口
東武バス 川11にて約15分
バス停「貝塚」降りてすぐ。
駐車場あり。
入門希望者・興味ある方はご連絡ください。