不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

覚悟を持って生きる

当流は大変国際的で、古流の中では抜きん出て外国人門下生が多いと思います。世界規模で言えば外国人門下生の方が圧倒的に多いと言えます。
私が所属する道場も然り。12,3人いる直門の半分は日本在住の外国人です。

本部道場で稽古をする際は、受付で名簿に名前と国籍を記入します。国籍欄がある辺りが何とも当流らしいですが。本部道場は各古参の師範たちが使っていますが、私の師匠も週に2回、ここで教えています。私も毎週日曜日には本部道場に行って指南を受けています。

最近、その参加者名簿を見て思うことがあります。
私はこの道場では最古参ですが、ナンバーツーについて。
彼はアメリカ人でとても美人の日本人の妻を持ち、1歳になる娘がいます。
彼の道場名簿への記入の仕方についてです。
外国人なので本来はカタカナのはずですが、苗字は10年以上も前に私が頼まれて作った漢字の名字を使っています。そしてもちろん、苗字・なまえの順で記入する(笑) しかもその漢字の名字は長年使っているために通名としてちゃんと公式に認められていますから、どれだけこの苗字を気に入ってくれているのか。作った側も身が引き締まる思いです。

そしてその次の国籍欄、昔は彼はアメリカや米国と記入していましたが、最近は「日本」。
永住許可はあると思いますが、国籍は変えていません。それでも彼は国籍欄に漢字で「日本」と書いています。

最初は武芸を志しているが故に、日本に対する単なる憧れのようなものではないかと思ったりもしましたが、さにあらず。
日本の武芸を志すことに端を発し、そのために日本社会で生きる覚悟を決め、今や日本人と家族になり日本社会の一員となっているということに対しての覚悟のように、最近は感じるようになりました。

彼自身は在日10数年になります。間違いなく日本は多くの意味で住みやすい国ではありますが、アメリカとは全く違う文化です。それでも日本文化や日本社会を心から愛して、母国とは全く違った文化を持つこの国で覚悟を持って生きているように思います。ある意味日本人以上に日本人らしいところがあり、時折感銘を受けることがあります。

そしてこうも思います。日本人はこれほどまでに日本の文化や伝統、或いは社会を理解しようと努力して愛しているのかどうか。日本に生まれて日本国籍を持っているというだけで、その上にあぐらを掻いてはいまいか。世界には心底日本を愛して止まない外国人が多くいて、私は当流での交流を通じて実際に見ています。毎年、或いは数年に一度、せっせと貯めたお金を使って来日して稽古をしてまた去って行く外国人同門が大勢います。そのような彼らの覚悟を、日本人門下生は正しく受け止めているのか。私が日々精進をするのは、そういう彼らの覚悟を真正に受け止められるに足る人になりたいという思いからです。

令和五年長月二十一日
不動庵 碧洲齋