不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

開戦1年

開戦当初はロシア軍の破竹の勢いで数週間の内にキーウは陥落して例によってまたロシアの野望の犠牲になるのかと思いましたが、さすがに西側諸国の堪忍袋が切れたようです。結構多くの国がロシアは火蓋を切らないと見ていましたが、アメリカは始めると主張していました。プーチンが乗せられてしまったのか、元々やるつもりだったのかは分かりませんが。キーウ、ゼレンスキー大統領の周辺で数ヶ月前から軍事顧問団として貼付いていたのは英国SASだったそうです。イギリスも情報を得ていたのですかね。

個人的には(というより多くの人が)キーウ陥落、ゼレンスキー大統領は国外に逃げるかよくて西部に避難と思ったのですがこの俳優出身の政治には全く素人の大統領が見事に国民を鼓舞して乗り切りました。私は日本人だけあっていわゆる精神力を戦争に持ち込むのは愚かしいと思っていましたが今回このウクライナ魂、しかと見届けました。本当に見事です。

また戦前から準備はしていたのでしょうが、西側諸国の連携も鮮やかでした。
戦後になってみないと分かりませんが、双方とも少なくとも数万とか数10万の死者を出していると思います。特にウクライナでは民間人が大勢亡くなってますから。
攻めてさえ来なければ死ななかった人たちだけに悔やんでも悔やみきれません。
ロシア側は全く説明なしに装備も訓練もままならない状態で線上に放り込まれた兵士たち。
まさかロシア史上もっとも繁栄している今頃、侵略するために徴用されるとは思ってもいなかった一般人。
またロシア国民の多くも国家に騙されているということに気付いていると思います。
とはいえウクライナ国民はロシア国民の何倍もの苦難を受けています。

双方とも文化的違いがかなり少ない同族で、友人や親族が両方の国にいる人が多い。
そんな国に攻め込む気分たるや最悪ではないでしょうか。
ウクライナも脅かされこそすれまさか本当に攻め込むとも思わず。
ましてや1年も続く戦争になるとは誰も思わなかったのでは。

結局のところ戦争を始めたのはプーチンですが、もはや昔懐かしの独裁者の体です。
今後恐らく世界の大半の国から歓迎されないでしょうし、一部の忠実な部下以外からも敬意を払われないと思いますが、文字通り孤独な独裁者です。

個人的には今ウクライナで戦っているロシア兵達はどう思っているのか関心があります。
親近感がある隣国に攻め入って軍隊のみならず現地の住民までも殺害しているという事実をどのように捉えているのか。
国家権力というのはやはり恐ろしいもので、色々なドキュメンタリーを見ていても個人などは有無を言わさず簡単に連れて行かれて歩兵の駒にされてしまいます。
これが三権分立がしっかりした民主国家なら、ある程度国家とも戦えるのですが、こういうときロシアや中国と言った憲法や法律があっても十全に機能しない国は恐ろしいと感じます。

ロシア軍が戦略的に盛り返すことはあまり考えられませんが、徴用兵が増えれば当然戦死者数は増えていくと思います。もっともウクライナも同じぐらいの戦死者数を出しているはず、最後の最後まで物量で押してきたらどうなるのか、考えただけでもゾッとします。やはり共産国家、元共産国家では人の命はかなり軽いものだと今回の戦争でよく分かりました。

欧米諸国はよく連携していると思います。EUやNATOという組織があったからでしょうか。
もし中国が台湾に侵攻してきた場合どうでしょうか?
ロシアと北朝鮮は当然敵側に回りますし、韓国もとても味方とは言い難い。そうなると台湾以外ではベトナムやフィリピン、マレーシアといった国しかありませんから日本の存在が大きい。もし中国の台湾侵攻が現実化したら再び太平の世が打ち破られますかね。

どうして世の中はもう少し平和に生きられないのか、いつも考えます。

令和五年如月二十四日
不動庵 碧洲齋