皆さんは例えばロシアや中国について「知っている」と思いますか?
百万歩譲ってアメリカについては知ってますか?
ま、「知っているか」という問い自体抽象的ですが、もっとかみ砕いて言えばそれらの国の人たちと膝を交えて話したことがあるのか、とか、その国に実際に行ったことがあるのか、とか、そんな感じの意味です。ただ「知っている」と言うからには行ったにしても観光レベルではないと思います。
私が初めてロシアに行ったのは2010年、以後毎年、主にモスクワとその周辺(周辺と行っても数百キロも離れていることもありますが)を訪れました。一度の滞在は概ね10日程度で宿泊は主に民泊、多分普通のロシア観光ではほぼ不可能な体験と言えるでしょうか。観光ガイドにの掲載されていないようなところにも行きました(というか大抵は観光とはほとんど関係無いところに滞在してますが)。ウクライナ国境から100キロぐらいのところにも2回行きました。もちろん2020年と2021年は行くことは出来ませんでしたが。
どうも・・・日本人(だけではなくて欧米人全般ですが)はさして多くない情報とさして多くない興味、引いてはそこから来る固定観念と先入観を基にしてロシアを判断しているように思います。(何度も言いますが、日本人のアメリカ人観すらかなり怪しいと思います)まあ人の精神などと言うものは概して単純なものを好む傾向があり、スターウォーズばりに絶対善と絶対悪の国家間戦争をバチバチにやるという構図の方が受け入れやすいのは言わずもがな。しかし現実にはそんなに簡単なものではありません。
ロシアにいたときに見聞した感想です。ウクライナとロシアはほぼ兄弟国と言って良く、現在のような情勢下に於いてすら、別段互いに憎み合っているわけではありません。両国に親族がいるという人も大勢いて、両国の国民は互いによく知っているという感じです。実際、ポロシェンコ政権時には多くのウクライナ人がロシアに逃げ込んできたのを私は実際に見ました。その時ウクライナ国境から100キロほど北の地域にいましたが、大きな町には避難してきたウクライナ人が多くいました。
実際、私の感覚だとウクライナ政府が親露政権だと争いは少ないものの、やはり民衆の生活がいささか苦しい、或いは息苦しくなり、反露(もしくは親西側)政権だとロシアとの対決姿勢が強くなっている気がします。いずれの場合もどうも統治力というのか政治力が弱く、バックではロシアやアメリカの政治が多分に働いているように思います。
西側の言い分ですが、旧ソ連時代からロシアという国は信用ならぬという事。残念ながら現在のプーチン政権を見ていると、全く民主主義ではありません。選挙こそ行われているものの、堂々と不正が行われていることはよく知られています。プーチン氏が優秀であることは認めますが、民主主義とは相容れない存在であることも同じぐらい認めざるを得ません。ふた昔前の列強国時代だったらさぞ力量を発揮したかも知れませんが、彼は生まれた時代を間違えた、そんな気がします。また軍事行動にしても西側陣営ほどにはスマートではなく、どうもゴリ押し感が拭いきれません。一日本人としてもやはり先の大戦末期における旧ソ連の行いにはいささか国際間の信用問題として疑念を持ちます。ちなみにロシアの軍事博物館に掲示してあった第2次世界大戦の終了は5月8日、ドイツの降伏で終了しています。これは少々腹が立ちましたね。もちろんロシア国民は極東での出来事はよく知っていて、それはそれで良いと思っていない人は多く見受けられますが(ロシア人の大多数は親日的です)、政府の公式見解というものは恐ろしいもので、博物館や教科書にそう書かれていると国民の心理もそうなってしまうものです。ただしその当時のソ連の状況を見れば、あそこまで国際社会の信義に反することをせねばならない理由も理解できます。(ちなみにそうせよと仕向けたのは連合国です)
ロシアの言い分としては、まず欧米諸国がこぞって旧ソ連時代から変わらぬ価値観で敵視している、ということ。私はロシアがどれだけ変貌したのか、もっとアピールすべきだと思いますが、政治に関して言えばかなりまだまだダーティーです。ロシア人の国民性は基本的に日本人と似ていて、あまり自分からアピールとかはしない方です。それもあって欧米諸国がロシアに対して誤解や先入観を持っている部分が結構あります。またロシア国民も言いたいことはあります。どんなに選挙において投票してもかなり多くの不正や操作によって野党が勝ち上がることはかなり難しいというのがあります。これでは政治的権利を行使する気持ちが萎えてしまうと思います。私も初めの頃は「民主主義国家の国民だったら投票という、政治の権利は必ず行使すべし」と言い続けていましたが、最近は政治不正を知るたびに彼らにそういうのは酷だと思うようになってきました。政治に関してはまだまだ、ロシア国民には「私たちの政府」というよりも「プーチンの政府」という見方が多いようで、国民の代表としての政府ではないという認識のようです。またロシアには共闘できる国が少ないために、止むなく中国と関係強化をしてますが、一般国民に限って言えば中国人を高く評価しているロシア人にはとんと見たことがありません。彼らにだって卑しむべき基準はそれなりにキチンとしています。
欧米諸国のロシアに対する先入観や固定観念、ロシアにおける非民主主義的な政府の独断専行、これらが原因のように私は思います。
先日、ロシアの友人に今回の件について尋ねてみました。回答は以下の通り、和訳しました。
「残念ながら、状況はより深刻です...ロシアとウクライナの対立ではありません。私の見るところ、多くのロシア人とウクライナ人は何の問題もなくコミュニケーションしています。政府はNATOに「旧ソビエト連邦共和国からすべての軍事基地を撤退させるか、軍事的な回答をする(プーチン政権)」というメッセージまたは最後通牒を送った。私は憂鬱な気分です。」
この戦争が回避できますように。
令和四年睦月二十五日
不動庵 碧洲齋