不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

天地人

天の時、地の利、人の和というのは古代中国からよく言われているツキが回ってくるための三大要素です。こんな言い回しにはなってますが、古今東西、普遍的な定義のように思います。


孟子はこう言ってます。「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」なかなかの至言です。完全抽象概念である天の時、いわゆる「ゴッド・チャンス」を得るためにはその条件作りたる「地の利」を取揃えること、そしてその「地の利」を完璧にするためには日頃の人間関係の構築が不可欠であると言っています。最終的にはやはり人間の問題なんですね。完全抽象概念も順を追ってかみ砕けば、具象的行動に落とし込んで顕在化できるという考えでしょうか。そこで「ゴッド・チャンス」も突き詰めれば人間関係の機微から生まれるものだと言うのが中国哲学の根幹のようです。私も天命を経てそういうものだと実感するようになってきました、少々遅いですかね。


先日、古くからの友人とそのお嬢さんと3人で日本舞踊を鑑賞するために国立劇場に参りました。それに出演している日本舞踊の先生がまた、私の友人だからです。女優永野芽郁似の美人ですが、日本舞踊歴は30年を超えるベテラン、私の武芸歴にも匹敵します。(でも私よりも一回り以上も若い)時折話すと互いに伝統芸能に通ずるものこれありで、話が弾みます。


友人のお嬢さんは女優の卵です。そう言うこともあって教養を深めるために誘ったのですが、観たいという事で食いついてきたことに一つ感心しました。
個人的にはちょっとした教養程度で誘ったのですが、鑑賞後に連絡があり、日舞の先生に入門したいとのこと。いや、これは驚きました。早速日舞の先生と連絡を取って都合を聞いて、教えたところこれまた一番早い日を希望してきました。フットワークが軽いとこれまた感心。孫子には「兵は拙速を尊ぶ」とあります。すぐ動く人には決断力があり、神様に祝福されやすい人です。決めかね考えあぐねる人は基本チャンスはほぼ巡ってこないものだと思います。


で、昨日2人を引き合わせたのですがすぐに入門を決めたのにも驚きました。これは日舞の先生の人徳もさることながら、友人の娘さんが常にアンテナを張り巡らせ、鋭敏に感じ取っているからだと想像します。チャンスを逃すまいとする姿勢はあるとないとでは天地ほどの差があります。特に芸能界は。こういうハングリー精神を維持していたら彼女はきっと著名な女優になると思います、というか私はずっと固く信じてます。そうだ、今のうちにツーショットとサインもらっておかねば(笑) ま、ツーショットはたくさんありますけど。


と言う事で昨日は「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」によって、まさに羽ばたかんとする若者が正師邂逅したまさにその現場に居合わせることができ、大変光栄でした。また遥か35年前の自分と重ね合わせ、我が志を革めるのでした。いや、昨日は本当にめでたい日でした。


令和参年神無月五日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

f:id:fudoan_hekiganroku:20211005165623j:plain