不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

おもてなし、とは

私は全くグルメではないですが、高校生ぐらいの時からしばらく読んでいた「美味しんぼ」は本当に凄いマンガだと思いました。出てくる料理はどれも美味しそうでしかも実在しているもの(笑) 大人になってから何人かの料理人と話す機会がありましたが、人によっては自分のバイブルと断言していた人もいました。
もう長らく読んでませんが、機会があったら山岡さんが海原雄山と和解してから最終回ぐらいまでを読んでみたいですね。

色々なエピソードがありましたが、幾つか印象的だったもののうち、特に印象的だったのは海原雄山がある日、何かの用で貧しい知人の家に行った折、そこのご主人は大したものを出せないと恥じつつもお米を黒い漆器に入れて欠けたり割れたりしている米を取り除いてからご飯を炊いた、という話。例によって山岡さんと競っていた話ですが、山岡さんが愕然とした、というレベルの旨さでした。
ここでは出てきた米の産地などは語られていなかったと記憶していますから、海原雄山が食べるものとしてはかなり珍しく「普通の品質の食材」です。にも拘わらず海原雄山が感銘を受けるほどにうまいご飯だったそうです。
これは私も驚きましたね。特に「美味しんぼ」では至高あるいは究極の食材を得るための労力がよく描かれていますから、この回はかなり異例ではなかったかと思います。
この回は特に日本人のおもてなしの精神が描かれていたと思いました。

これは「とある家族の話」です(笑) 取り敢えずそういうことにしておいてください(笑)
奥方が夕食時、台所の流しにあった洗い忘れていた汚れた皿を食卓の上にドンと置きました。
もちろん使ったものですから料理の汁などで十分汚れています。それをこれから夕食を食べる食卓の上に置いたわけです。
ご主人と息子さんは唖然として言葉もありません。
夕食は手羽先入りシチューでした。その汚れた皿は手羽先の骨を入れるためだったようです。新しいものを出すのは洗うのが面倒と思ったのでしょうか。

幸いご主人と息子さんは思慮深い人たちだったので何も言わずそのまま食べ終えました。
以上(笑)

話を聞いたとき、最初は何かの冗談かと思いましたが、本当のようです。
料理のうまい下手、食材の良し悪し以前の問題が、ここにはあります。料理をする人の技術以前の問題でしょうか。道徳観念がどうかしてます。この方の道徳観念についてはこれ以外にもかなり疑念に感じることもあるようですが。

最近、普通じゃないと思った話でした。

不動庵 碧洲齋

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