演武じゃないよ、演侮だよ
中国ニュースを見ていたら、眼についてニュースがありました。
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演武中に事故…刀身が飛んで観客女性の顔面に当たる=南京
江蘇省南京市のアポロ演芸センターで13日夜、少林寺武術の演武を披露していたところ、演武者が握る柄(つか)から刀身がはずれて飛び、観客の女性の顔に当たった。中国新聞社が報じた。
女性は男性の友人とともに、客席最前列に座っていた。演武用の刀なので刃はなく、女性は右目の下にすり傷ができた程度だった。大きな出血もなかった。病院で検査を受けたが、骨などにも異常はなかった。
男性は、危険があることが分ったのに演舞ショーを継続したことや、事故発生後20分間も担当者が来なかったこと、補償について口に出さなかったことなど、センターの対応は不満だと述べた。
センター責任者は「われわれが開業して7年。こんなことが発生したのは初めてだ」と述べた。事故を起こした演武者については「少林寺武術をマスターしており、問題はない。刀が老朽化してたからこそ、事故が起こったのだろう」と主張した。
補償については会社上層部の指示を仰いで、被害者に連絡して協議するという。(編集担当:如月隼人)
以上 サーチナ 社会ニュース 2011/10/14(金) 13:02 より転記
最近、ものすごい勢いで世界を席巻している少林寺武術ですが、この記事を読んでいると中国武芸のレベルが分かろうというものです。
演舞ショーを継続?
絶対にあり得ません。自分の演武で怪我をした観客がいたら、すぐさま止めてけが人の介抱をし、応急処置をするのが当たり前です。これは別段演武でなくとも当たり前、グローバルスタンダードの処置です。これをしない中国の一般社会の異常さに驚きを隠せません。
事故発生後20分間も担当者が来なかった?
これも絶対にあり得ません。現場の責任者はもちろんのこと、最高責任者も来るべきです。20分かけてそこまで来たのか、その間近くにいても連絡がなかったのか。上記の行動を見る限りは後者と思わざるを得ません。
補償について口に出さなかった?
色々なレベルがあるでしょうが、この場合、少なくとも被害者の保険ではなく、加害者団体が保障するのは当たり前です。これはもしかしたら中国だからか分かりませんが、まさかけが人を放置しようと思ったのではと勘ぐってしまいます。驚きです。
「われわれが開業して7年。こんなことが発生したのは初めてだ」?
つまり7年間、武器や器具の手入れをしていなかったと言うことか?安全の確保を見直してこなかったと言うことか?武器を使っていることを意識していなかったと言うことか?こういう発言自体、驚くほど危機感に対する無知さを露呈しています。
「少林寺武術をマスターしており、問題はない。刀が老朽化してたからこそ、事故が起こったのだろう」?
日本の武芸者なら全く以て笑止なコメントと言わざるを得ません。まあ、これを言ったのは開催場所の責任者だから仕方ないとも言えますが、演武者は演武を継続したのですから少なくともセンター責任者と同意見だったと言うことでしょう。一般的な中国人社会の危機管理に対するものの考え方がこの発言に集約されていると考えられる発言です。こういう考え方なら高速鉄道の大事故もあり得ることでしょう。
日本で刀を使う演武をする場合、基本的に演武者自身で必ず武器の手入れをします。
刀だったら目釘を外して柄を外して鍔やその他の金具にゆるみやガタがないか確認します。最低でも目釘の点検はするものです。目釘が緩かったら取り替えるか、水に浸して強度を高めたりします。
むろん、絶対も完全もあり得ないのがこの世の定めですが、読んだ限りでは現場責任者も演武者も危機管理を忘れてゆるみきった状態で演武をしていたと想像します。
中国の武芸者は衣装や武器、健康管理などは分業制なのでしょうか?(笑)
そういうのは少なくとも日本では武芸者とは言いません。
私は武道屋と呼んでいますが。
聞くところによると今、嵩山少林寺は毎年、何十億円にもなる程の、莫大な商業収入を得ていると言われています。
師事している老師も嵩山少林寺に数回行きましたが、昔に比べて無駄に豪華で品がなく、寺町も僧侶も金儲けのことしかないような雰囲気だったとコメントしていました。
残念ながらこの事件はそれを裏付けるように思います。
我ら日本武芸者はこれを以て他山の石とし、さらなる戒めをして、日本文化の精髄を決して他国に嗤われないよう精進して参りたいと思います。
SD111014 不動庵 碧洲齋