不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

建長寺水無月坐禅会 所感

今回、坐禅会の先輩と共に年に2回ある建長寺坐禅会のうちの6月の方に行って参りました。 座禅は17年ほどやってますが、宿坊の宿泊は何度もあるものの、こういう坐禅会での宿泊は初めて。 朝7時に出立、北鎌倉には丁度9時着。2時間掛かります。今少しこの距離が短ければ足繁く出掛けられるのにと思います。駅で先輩と待ち合わせそのまま目の前にある円覚寺へ。今や禅宗界の寵児と見做されている円覚寺管長猊下横田南嶺老師が住職してらっしゃるお寺。白山道場で何度かお目に掛かったほか、私が参加している禅寺の老師は兄弟子なので今の寺に移った際、晋山式でもお目に掛かりました。禅のみならず人間的に卓越したものを持っている、そんな気がする方です。
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円覚寺境内の弓道
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少し時間があるので円覚寺の後に東慶寺に参りました。駆け込み寺として有名ですが、最近になってある一つの墓地があの「のぼうの城」に出てきた忍城にて活躍した甲斐姫の墓ではないかという事で埼玉県民としては是非とも手を合わせたい場所です。 次に有名でしたが今まで行ったことがない寺の一つが明月院あじさい寺として有名です。さすがに花の名所なので若い人が多かった。
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あじさい寺あじさい。まだ若干早かった。
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忍城甲斐姫の墓と言われている、東慶寺墓所建長寺に入る前に腹ごしらえ。去来庵という古民家をリフォームしたレストランですが、そこのビーフシチューがうまい。ちょっと高いのですが食べる価値ありです。普通は結構混んでいるのですが、開店とほぼ同時に行ったのでOKでした。 腹ごしらえの後に建長寺。入って他の3寺同様に御朱印を頂きました。今まで年度か来てたのですがいつも御朱印帳を忘れていたので。あとお土産として禅のTシャツ(笑) 後は軽く見て回って受付のある大庫裏に行き暫し待つ。既に先に数人来ていました。 受付で名前を言って費用を支払います。その後大庫裏の上にある大部屋に通されました。そこで荷物を置いて準備をして教務部の和尚よりいろいろ説明があったものの、説明をした雲水は若く、一生懸命でしたがカミカミで全然要領を得ない様子。教務部としては人前で話すことには慣れねばなりませんが、やはり人には向き不向きもあるのではと思います。時々フォローを入れる先輩格の和尚や教務部長の和尚の方が大変分かりやすかったです。恐らく習熟のため初舞台だったのかも知れません。厳しい専門道場をくぐり抜けてきたのだと思いますから、今後の精進に期待したいところです。
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準備と言っても私は作務衣を着たままここに来たので着替えとかは必要なし。どうやら作務衣でここに来たのは私だけのようだった(笑)。 参加者は定員70人とありましたが、60人ちょっとぐらいのようでした。男性が8割ぐらい。年齢的に若い人もいました。作務衣ではなくて普段着の人が多かった、意外にも。スマホと財布は貴重品として預入、スマホは例えば夜とかに使っても良かったのですが預けている人もいたので私も預けました。折角の修行なので。 全員揃ったところで大方丈に行く。そこで開会式。う~ん、ここでもちょっと段取り悪いなぁ、と思いました。マイクを使えばすぐ分かるのに同じ事を言いながら総員で言って回ったり、提唱の紙を取りに来させたり。列ごとに回すだけでいいということに気付かなかったのだろうか。 最初は読経して早速座禅。私は運がいいことに大方丈の中でも一番風の通りがいいところでした。 最初に3炷坐って飯台観(配膳と給仕をする人)たちが去って準備ができるまで更に短い時間座禅。飯台観はボランティアで茶礼を含めて毎回8人。私も粥座(朝食)で申し出ました。 結局座禅は夜坐を含めると丸1日で12-13炷ぐらい坐った計算になるのかな?さすがに1日でそのくらい坐ると結構膝にきました(笑) 参加者を見ると、そこそこ座っている方がほぼ全員、初心はいなかったように見えます。普通のオバチャンでも座相良かったし。大ベテランっぽい方も10人以上はいた気がします。私なんかペーペーですが、柿渋染めのいい感じに色落ちしている作務衣を着ていたのでもしかしたら周囲に大いなる誤解を与えてしまったかも(笑) 先輩の話だと面倒をみてくれる教務部職員がいつもよりずっと少ないとか。今回は2.3人程度でしたが、以前はもっと多い人数だったそうです。確かに少ない気がしました。 建長寺の大方丈は観光場所なので周囲の回廊には普通の観光客がいます。要するに見世物になりながら坐るわけです(笑) それ程気にはなりませんでしたけど。ただ慣れないお経を読むのが大変だった。普通の坐禅会では般若心経と白隠禅師和讃、家で短いお経を読む程度で、建長寺独自のお経や普通読まないお経を読むのは難儀しました。今後のことを考えて頂いた経典も時折読むことにします。 嬉しい意外。食事は修行僧並に超簡素なものだと思っていましたが、簡素には違いないものの思ったよりはずっとよく、味も良く、しかもお代りができたので満足でした。薬石(夕飯)には揚げ豆腐、野菜天ぷら、沢庵、けんちん汁、ご飯でした。ご飯とけんちん汁はお代りをしました。それで十分な量でした。 ただひどく困ったことが一つ、食堂は板張りの床にござを敷いてあったのですが、これで正座をすると拷問並に痛い(笑) さっきも言ったように集まった方々は多分、それなりに坐っている経験が多いような方ばかりのようでしたが、それでも床の固さに顔をしかめてなんども膝を変えたりして痛みにこらえて食べていた方は結構いました。だから客観的に見て結構痛いものだったのだと思います。閉会時に教務部長さんが「修行僧はそもそもさっさと食べるので!」と誇らしげに言っていたのですが、60人以上もいれば、味わってゆっくり食べる人もいるのでさっさと済ませられず、更にゆっくり味わって食べている人もいたので結構長い時間脂汗を掻く始末でした(笑) ちなみに翌朝の朝食の飯台観(配膳/給仕の手伝い)をさせて頂いた折は給仕した後に8人+和尚1人で食べるのですがこちらはさっさと食べたため全然OKでした。やはり長い時間あのような固いところに正座は痛いですよ。確か専門道場は食事時も結跏趺坐ですからせめてそうしてほしかった。結跏趺坐なら床が固くても食事する時間ぐらいは余裕で持ちこたえられます。さすがに最後の斎座の折には教務部長さんから周囲に気を配ってそれに合わせて食べる、とお言葉がありました。できたら最初に言って欲しかった(笑) 薬石を終えてから座禅。食事の前に座禅が多く、今回は1日で10炷以上と記録的に多い体験でした。座禅の後は9時過ぎから各自寝るのですが、夜坐OK。私は22時過ぎまで大方丈の裏手、池のある庭の所で坐りました。実際座禅をしないでぼーっとしていた人も多かったようですが、それはまあいいでしょう。夜坐はなかなか良かったです。 夜は大部屋で先輩の隣で寝ていたのですが、私は起床時間までいびきを掻いて爆睡していたようです(笑) でも起床の鐘が鳴った瞬間にぱっと普通に起き上がったとか。寝ているときの姿というのは自覚できないものですが、なかなかおもしろい。自分的には意識はあって何か不測の時はぱっと起き上がれる状態でした。でもいびきを掻いていたというのは身体は休んでいたという事でしょうか。 座禅の時の細かな規矩で疑問に思ったもの。座禅の時の手の形。最初は法界定印を指示されましたが、翌朝はからは白隠結びにしました。先輩は最初から白隠結びにして和尚に直されたようですが、この位はやりやすい方でもいいんじゃないかと思います。実際今朝提唱に参加された修行僧はみんな白隠結びでしたから。私も実際、朝からは白隠結びで何も言われませんでしたし、私以外にも白隠結びをしている人はいました。あと自分の単を立つとき坐るときの一礼を教えてなかったのですが、あれは何故だったのかな。ちなみに時々私の隣に座った和尚はちゃんと一礼していたし、私もしていました。大方丈に出入りするときは集団なので一礼は難しいでしょうけど。単独で出入りしたときはもちろん入退堂時は一礼をしました。
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今回の一番の目玉は専門道場を直に見られること。普段は立ち入り禁止の奥の場所にあるので一般観光客が見ることはまずありません。こういう特別なイベントの時だけです。数年前に建て直されたばかりなのでまだ新しく、やっと白木が白くなくなってきたという感じ。初めて見たので感動です。朝の提唱はその僧堂の反対側に立つ方丈で、師家の老師が行います。管長猊下は参加されませんでしたが、それ以外のエラい役職の方々と修行僧などが参加しました。職員のオバサンもいましたからやはり特別なんでしょう。 前日の管長猊下の提唱に較べるといささか聞き取りにくかった。私はどこを読んでいるのか分かりましたが、座禅歴が短い人などは全く分からなかったかも。碧眼録の60何則でした。私は半跏趺坐で聞きましたが、緊張のせいかやはり終わった後疲れました。しかし大変良い経験でした。
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その後は作務。外でやるのかと思いきや、幾つかに分かれて、私は今朝畳んだ布団を仕舞う係。ビニール袋に入っている布団を掃除機で空気を抜いていきます。60以上もあるので2つの掃除機を使ってもそこそこ時間がかかりました。その後は寝泊まりしている大部屋の掃除。もともときれいなのでそれ程手間ではありませんでした。 その後は閉会式。 これだけの参加者を指導して捌くというのはなかなか大変なものがあると思います。教務部の和尚様方や料理を作ってくれた業者、建長寺職員の皆様、彼らの労働なくしてはこの宿泊坐禅会は成り立たないことは容易に理解できます。坐禅会ではそういうものが比較的分かりやすく、考える余裕があるため、改めて深く感謝をする次第です。来年も是非参加してみたいと思います。
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涼しい顔をしてますがクタクタです。奥の門は観光客が入れないエリア。修行僧たちがいる専門道場です。今回参加者はそこに入ることができました。 令和元年水無月二日 不動庵 碧洲齋