不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

ひよっこと出稼ぎ

私は有村架純さんの大ファンです。ということで、「ひよっこ」は欠かさず観ています(笑) 有村さんだけでなく、レギュラーメンバーみんな、若さも相俟って本当にまぶしいぐらい。・・・そんなことを書くと余計、自分が年取ったように感じます。悲しいです(笑) みね子さんたち世代は大体私の両親ぐらい。私の両親はどちらも戦前生まれですが、妻の両親はちょうどみね子の世代。みね子さんは昭和39年で18歳ですから生まれは昭和21年。確か妻のお義父さんと同じ年齢だったと記憶しています。今、みね子さんは孫に囲まれて生きている、そんな世代のはずです。生まれた時、物心ついたときはまだ戦災の爪痕があったことを覚えていたかも知れません。そしてドラマの通り、日本がぐんぐんと伸びていく時代。

私は昭和44年生まれですから、その希望に燃えた戦後最初の世代が大人になって結婚してできた子供の世代です。生まれたときからカラーテレビも車もクーラーも普通にありました。

ま、それに較べると不況だとか経済格差とか言われていても日本の豊かさというのはやはり、発展途上国に較べたら、較べてはいけないほどに発展していると言えます。

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朝ドラを観ていると、ある人たちを思い出すことがあります。

同じくらい若い世代の女の子たちで出稼ぎに来ている集団。ただ時代が時代だけに彼女たちはベトナムから日本にやってきた、いわゆる技能研修生という名の労働者です。昨年、昔の同僚だった日本語教師に誘われて、同じ埼玉県にある企業が借りている研修生用のアパートに何度か行って、日本語を教えました。

その企業はコンビニの弁当や惣菜を作るメーカーです。工場は24時間操業で休みと就労時間は不定期。働いている人の多くは外国人の若い女性です。故に彼女たちが一生懸命に作った惣菜類を期限切れのために廃棄されるという現実には深い悲しみを覚えます。

この工場だけではなく、実際、かなり多くの底辺の労働はすでに外国人に依存しています。しかも正規の労働者ではなく、誰が作ったのか研修生などという都合の良い制度によって安く使われているところも多々あります。

彼女たちが勤務している企業の名誉のために言っておきますが、その企業は福利厚生もちゃんとしてますし、アパートも大学生が下宿しているような普通のワンルームかそれ以上、お給料もまずまず出るそうです。幾つかのコンビニが共同出資して建てた会社だとか言っていました。しかしそういう好待遇の企業というのは多分少ないはずです。

前にちょっと調べたことがありますが、今の日本において、この社会の質を守るために外国人労働者を排除した場合、ニートや受刑者、老人のパートタイムを全部活用しても実は全然間に合いません。故に昨今、24時間経営は本当に必要かという話が持ち上がってきたと想像します。世界も社会の実態も知らぬ、一部の愚かな人間たちが盛んに外国人労働者たちを排撃していますが、現実問題として私たち日本人はこの生活レベルを維持するためにはいわゆる下流老人はもとより外国人労働者も酷使しないと維持できません。そう書くと移民に肯定的だと思われてしまいそうですが、そういう意味では無く。移民というシステムはあって然るべきですが、日本の場合、地理的にあまり受入の公正さが保たれない気がします。ただ働いた人には公正な対価を支払うべきだとは思います。

そのベトナム人の女の子たちは底抜けに明るい。部屋を見ても本当に質素、必要最低限のものしかなく、贅沢とはかけ離れていますが、みんな働くことに前向きでした。きっとみね子たちの時代もそんな感じだったのだと想像します。ベトナムから来た彼女たちには仲間もいるし、昔と違ってインターネットがあるので祖国の家族や友人たちとも簡単に会話ができます。私が米国に留学したときよりも祖国との距離がずっと近い。労働環境は良いと言っても3交代制だったら真夜中に働くこともあるでしょうし、土日に休めるわけではありません。それでも休みの日にはどこかに行って日本を堪能しているようです。FBでもその様子が時々分かるのでホッとし、彼女たちを応援したくなります。

彼女たちが祖国に帰った後、日本について周囲の人たちに何と言うのか、それだけが本当の日本です。祖国礼賛やら他国との比較をしてアツくなっている連中が妄想している日本は日本ではない。個人的には先進国に多少ナメられても発展途上国の人たちからの敬意や信頼を勝ち取る方が大きい、私はそう考えています。先進国にありながら欧米列強とは一線を画し、それでいてアジア諸国とはひと味もふた味も違う国、日本。その真価を作れるのは日本人だけです。その世界における立ち位置を知り、信を勝ち取るために慎み行う。他の先進国と同じように科学力、経済力、軍事力という土俵で競うのではなく、それ以外の何かで圧倒する。日本には、いえ、日本だからこそできると、ここだけはいつも祖国礼賛しています(笑)

私たちの生活において既に多くの外国人労働者たちが大変な思いをして日本社会の高品質さを維持しています。故に私たち日本人はバブル期のような贅沢を棄て、本来より拠り所としてきた質素倹約に戻り、もっと本質的な部分を見つめ直せたら、心の豊かさの何たるかを知るのではないかと思います。

平成二十九年皐月二十三日

不動庵 碧洲齋