不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

たった一つしかない

ここ数日の息子の興味は「グーグルアース」。

ネットに繋がらなくなる少し前から熱心に見ています。

その見方がまたおもしろい。

通常、グーグルアースを表示させると、国境や国名、地名や都市名や有名観光地、などが表示されていますが、息子は設定でそういうものを全部消して見ます。

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何年か前に、息子に言ったことがあります。

「お釈迦様やイエスキリストは地球に居ながらにして、地球が宇宙に浮かんでいる、小さな命の球だということを悟ったのかも知れないね。」

たった一つ、宇宙に浮かんでいる一つの存在、そういうことを言ったことがあります。その後もニュースで戦争について紹介される度に私は、

「どうして人は人が勝手に作った境目のために戦争なんかするんだろうね。地球はたった一つなのに。」と口癖のように言っていました。

先日、近未来の宇宙開発を描写したアニメ「プラネテス」を観た折、月生まれ、月育ちの少女が地球上の国の概念について理解できない様を観て、息子は何か感じるものがあったようです。その少女が月から見た地球のように、息子もグーグルアースで地球を見ていました。時々グーグルアースの地球を見ている息子の後ろ姿には声をかけがたいものを感じます。

今朝、朝食の時、息子は言いました。

「グーグルアースを見るとき、俺、レイヤーを全部消して見るんだよ。」

「ああ知ってる。」

「レイヤーを消すとさ、国境とか国名とか何もないんだよね。」

「そうだな。」

「宇宙から見ると、本当にこんな感じなんだよね?」

「うん。」

「じゃあ人が勝手に書き入れたレイヤーを、どうしてグーグルアースみたいに簡単に消せないんだろう・・・。そうしたら戦争なんて起きないのに。」

「・・・お前が宇宙から地球を見て、その感じたままに人類が平和に暮らせる方法を見つけるといい。」

たぶん、同級生に比べると息子にとって外国は遠いところではありません。手が届きそうで届かない、もどかしいところにあるのかも知れません。

「うん、宇宙に行って地球を見たら悟れるかな。」

先日の公案の件からかなりしつこいです(笑)。

「ああ、宇宙全体が何かに充たされていて、躍動していることが悟れると思う。そういう気持ちで地球を見たら、戦争が馬鹿馬鹿しく感じられると思う。」

「俺、やっぱり留学した方がいいかな?」

痛いことを言います(苦笑)。

「もちろんだ。MITかUCLAバークレーとかに行って、色々難しい事を学んで凄腕の宇宙飛行士になれ。できたら高校生から海外に行ってみるのもいい。」

「宇宙に行って何か悟れたらいいな。」

息子は科学と宗教の両方を一度にやろうと思っているようです。まあ似たようなものですが。

宇宙から帰ってきたら、臨済宗のどこかの僧堂にでも入ってもらい、初めて宇宙を飛んだ僧侶にでもなってもらいましょうか(笑)。悪くない。

私にとって息子を留学させることは容易ではありませんが、私の両親がしてくれたように息子にもそういう機会を与えたいと思います。

平成二十五年霜月二十九日

不動庵 碧洲齋