酔って車を運転すれば、自らに禍を招く。
酔ってバスを運転すれば、客に禍を残す。
酔って武芸の稽古と為せば、自らに禍を招く。
酔って門下に指南と為せば、多くに禍を残す。
昨日の稽古の前に、師と何気ない会話をしていました。
その中で、ヨッパライは稽古すべからず、という話になりました。
飲酒運転ですら、守らなかった者に対して厳しい制裁が加えられます。
昨今のあまりにも痛ましい飲酒事故を見れば納得します。
我々武芸者も同じ事。
一門下生でも人を殺傷する技術を習得している訳ですから、酔ったままで稽古などすれば大変な事になります。
いわんや弟子を持つ身であれば、酔いが回った状態で指南を続ければロクなことがありません。道を違えた殺人者を育成してしまいます。
・・・あ、お酒の話しではありませんよ。では何に酔うかって? それは・・・
自分に酔ってはならない、ということでした。(笑)
私たち武芸者はある意味自己満足でやっている人が多いと思いますが、自分に陶酔しきってしまったら終わりだと言うこと。やはり正しい道を見るには自分に酔っていてはいけないと思います。相手を圧倒する力を持つと普通はその力の魅力に酔います。力とか権力をもって平然と泰然としていられる人は少ない。
武芸を以てどのように社会に貢献できるのか、常にそういう視点を持つことが重要だと強調していました。確かに武技だけうまくて社会性がなかったら、とんでもない人間を育成していることになりますからね。そう視点を持つにはやはり、自分に酔っていてはいけない。
なかなか有意義な話しでした。
平成二十五年文月五日
不動庵 碧洲齋