不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

氷と笑顔が付いてきた

その国の豊かさを計る指標というのはたくさんあると思います。

戦時中、東北の田舎に住んでいたおばあちゃんが日本の敗戦を予期したそうです。

その理由を聞くと、彼女は毎日リヤカーを引いて田畑に仕事に出ていましたが、リヤカーのタイヤが入手しにくくなった米国製から日本製にしたとたん、しょっちゅうパンクするようになったからだとか。

戦艦大和は凄かった、零戦は強かったと言っても、基礎工業レベル、基礎科学レベルでは当時の日本は欧米には及んでいなかったが現実でした。そもそも零戦を製造していた工作機械の多くは米国製でした(笑)。

一昨年前にロシアに来たとき、レストランでは飲み物を注文しても氷が入っていませんでした。

真夏です、ムチャクチャ暑かったです。ロシア人だって暑かったはずです。

ところが今回、同じ店に入ったところ普通に氷が入っていました。

市街地の別の店にも行きましたがやはり氷が入っていました。

これはロシア人が他国の人に合わせるようになってきた、または厚いときには氷を入れる程度の贅沢が簡単にできるようになってきたのだと思います。

このようにサービス業のサービスが向上してきたという事実は、国が豊かになってきていると言うことでしょう。

ビザもホログラフシールが廃止になったり、外国人登録義務が緩和されたり、ニュースではEU諸国に限り短期間の観光ビザが不要になるとさえ言われています。これは多分、多少問題があっても国が正常に発展してきているという証左ではないかと思います。

私は行く先々の店の店員もよく観察しました。

驚きましたね。ロシアと言わず共産国の店員というのは官民問わずほとんど無愛想ですが、昨年、一昨年に比べて笑顔で対応する人がかなり増えました。昨日行ったモスクワ最大の書店ではほとんどが自分の仕事に誇りを持ち、かつ楽しんでいるとさえ思える雰囲気でした。カフェの店員やこのホテルの従業員でも笑みを浮かべる余裕がある人が増えました。

総じて日本人にはなかなか理解しにくいかも知れませんが、例えばこのホテルの従業員の多くは多分、出稼ぎ労働者です。しかし掃除のおばさんも給仕のお姉さんも美人と言うだけでなく品があり、素養の高さがうかがい知れます。もちろんそうでない人は外国人もよく利用するホテルで働くことはできないのでしょうけど。

日本人の悪いところは何でも日本と比較すること。それは酷というものです。

海外にいると日本人の悪い部分もたくさん見えてきます。

心に余裕が出てくると社会が潤います。もちろんそのためには経済的に豊かになっていく必要もありますが、それ以上に重要なこともあるのではないかと思います。それは何なのか私にもよく分かりませんが。

ロシアでは(ロシアでも?)プーチン大統領のある意味強引なやり方に反感が持たれていますが、基本私は武芸が強くて実際に社会に大きく貢献できている人は尊敬します(苦笑)。日本のような調整型の政治家だったらロシアはとっくに傾いています。日本も今、安倍総理の下で回復のために努力していますが、今の日本にはそのぐらい強いリーダーがいないと没落してしまうと思います。

ロシアもお役人などの腐敗はまだまだ信じがたいレベルであることが多いのですが、このような民衆の素養が高くなるにつれて、腐敗も収まってくるのではないかと思います。

平成二十五年水無月六日

不動庵 碧洲齋