不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

諸葛孔明が子に宛てた手紙

誡子書 諸葛孔明

夫君子之行 靜以修身 儉以養德

非澹泊無以明志 非寧靜無以致遠

夫學須靜也 才須學也

非學無以廣才 非志無以成學

滔慢則不能勵精 險躁則不能治性

年與時馳 意與日去 遂成枯落

多不接世 悲守窮廬

將復何及

夫れ君子の行いは、静以て身を修め、倹以て徳を養う。

澹泊に非ざれば以って志明らかならざる。寧静に非ざれば以って遠きを到すなし。

夫れ学は須く静なるべきなり。才は須く学ぶべきなり。

学に非ざれば以って才を広むるなし。志非ざれば以って学を成すなし。

滔慢なれば則ち精を励ますこと能わず。険躁なれば則ち性を治むる能わず。

年、時とともに馳せ、意、歳とともに去り、遂に枯落を成す。

窮盧に悲しみ守るも、将復何ぞ及ばんや。

優れた人の行いは、静謐にあって己が欠点を顧みて身を正し、質素倹約を以て人徳を向上させる。

無欲でなければ志を明らかにすることはできない。穏和でなければ目指すところには至れない。

学問をするに穏やかでなくてはならず、才能は学問から生まれる。

学問に励まねば才能は広げられず、志がなければ学問に取り組めない。

傲慢であれば自らを奮起させることはできない。

短期で忍耐に欠ければ自己抑制ができない。

年は時と共に駆け抜け、意志も歳と共に過ぎ去り、ついに枯れ落ちてしまうようなものだ。

そのようになって貧困に陥り、襤褸屋を守るようになるのも自業自得である。

先日何かの折にたまたま見つけた諸葛孔明のお言葉です。

これはタイトルの字義通り、諸葛孔明が自分の子供に訓戒として残した手紙です。

初めて読んだ、と思っていましたが、自宅に戻って孔明関係の書籍を漁るとちゃんと載っていました。気付かなかったようです。

諸葛孔明は我が心のヒーローだったにもかかわらず迂闊でした。

改めて読んでみると、なかなか優れた内容のように思います。

諸葛孔明は史実に於いてもなかなか政経の才覚があると思いますが、才を成すには学、学を成すには静と順序立てています。静、というのは多分、静謐さはもちろんのこと、穏和さを指しているのだと思います。静というのは孔明のトレードマークの一つのようにも思います。

またエゴを戒め、質素倹約を推奨している辺りもさすが孔明

襤褸屋というのは文字通りの家と言うよりも、もしかしたら老後の自分自身を指しているのかも知れません。老いて学問や人徳がなかったら、これくらい悲惨な老人はないでしょう。

早速息子のために訳して紙に打ち出し、息子と語りました。

息子の場合、ロケットの設計技師だそうです。それにたどり着くまでまだまだ先ですが、志を持つことだけはよくよく言い聞かせました。自分の満足が誰かのためになる、それこそ人間が生きていく上で最も重要なことだと語りました。

私ができることはなるべく努力してよい学校に入れることは言うまでもありませんが、そんなことよりも宇宙開発の素晴らしさを一緒になって考えること。夢を持たせふくらませ続けることだと信じています。いい高校、いい大学に行け、などというのはサルでも分かる結論であって、そういう結論に行き着かせるまでの行程こそ重要ではないかと思います。

幸いにも息子は私よりずっとデキは良さそうなので、そういう心配はなさそうですが、息子が設計したロケットを死ぬまでに一度見てみたいものです。

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平成二十四年神無月二十三日

不動庵 碧洲齋