不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

「はやぶさ/HAYABUSA」

昨日、息子と「はやぶさ/HAYABUSA」を鑑賞しました。

ネットでは概ね良い評価でしたが、確かに期待に違わず非常によい作品でした。

演じていた俳優陣は大変だったことでしょう。

なにせ演じているオリジナルが今現在も第一線で働いていて、その業績は日本国民で知らぬ人はないほどのものなのですから。

ところどころにNASAの湯水のような予算を羨む台詞がありましたが、日本の凄いところは少ない予算でも創意と工夫でそれを凌いでしまうところ。

お金があったら楽なのに、それがないところで工夫をする。

思えば日清、日露、大東亜と、他国に比して少ない戦力、国家予算でどう戦っていかねばならないか、ないものの中での戦いの連続でした。

外国人が持ち得ない、日本人独自のセンス。

単なるモノ、ただのキカイにすら、魂が宿り、一つの命を成していると、かなりの日本人が遺伝子レベルで信じ切っています。

日本のロボット工学の発展を観ても然りですが、人間と自然を分け隔てない、人とモノも分け隔てない、そんなセンスが光っていました。

日本刀、これには武士の魂が宿ると考えられてきていますし、今を以て刀匠は絶大な尊敬を持たれています。

車、車にもどこどこ大師の御守シールが貼ってあります。

車好きにとって車は相棒のようなモノです。

そうそう、「スタートレック」ではエンタープライズ号は何度でも再建されますが、「宇宙戦艦ヤマト」では何が何でもヤマトです。

鉄腕アトムも生まれたときから人の心を持っていました。

こんなところも思想の違いが出ているように思います。

私が知る限り、欧米人はモノは大事にするし、思い出の品はあるにしても、日本人のこのような考え方はあまりしません。

日本人は本気でキカイにも魂が宿っていると信じている辺り、欧米諸国のものの考え方に対する素晴らしきアンチテーゼになり得ると考えます。

私は以前、外務省にある各国データの軍事予算の総計を出したことがあります。

軍隊をもっている全部の国の予算を合わせると、軽く300兆円を超えたと思います。

日本の国家予算が(赤字国債が半分だったにせよ)100兆円ですから、年間で経済大国日本の国家予算3つ分が軍備に使われています。

これが多いのか少ないのか分かりませんが、今のところ世界で一番高額な宇宙計画であるISS運用が12兆円にもならないことを考えると、いかに人類はバカげたことに予算をつぎ込んでいるのか分かろうというものです。

ま、いまのところ軍備でしか理解してくれない不良国家も少なからずあるという現実もあるのですが。

それにしてもはやぶさの落下の映像は美しいです。

何度観ても涙を誘います。これは日本人だけでしょうか。もしそうなら日本人で良かったと思わずにはいられません。

http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=1Uu5ZA6e7GE

2年後には「はやぶさ2」が打ち上げられるそうです。今度は国民の絶大な支持があることでしょう。

人間同士の愚かな戦いよりも無限に広がる大宇宙に目を向けさせる人がたくさん生まれるように祈りつつ、息子から宇宙について問われるたびに、熱心に答えるようにしています。

息子が大きくなる頃には、宇宙旅行はそんなに珍しいものではなくなることでしょう。

孫が大きくなる頃には、月や火星も人類が大した労もなく行けるところになっていると思います。

その時、人類が振り返って「何と愚かなことに予算をつぎ込んでいたのだろう」とあきれ顔で笑うときがあったとしたら、もしかしたらこれは人類が平和の戸口に立ったのかも知れません。

人類が今まで、やってきたことが愚かだったと気付かせるほどに、宇宙は広大だと思います。

上皇后陛下美智子様がこのはやぶさについて歌を詠まれています。

多分、これはかなり異例のことではないでしょうか。

『その帰路に己れを焼きし「はやぶさ」の光輝(かがや)かに明かるかりしと』

その明かりで何を見ますかと、皇后陛下が暗におたずねになっているかのような気がします。

SD111024 碧洲齋