不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

治水事業 in 中国

「工」という漢字をご存じだと思います。

これは元々、2本の川の間に水路を建設する様を図式化したものだと言われています。

2本の川とは中国では古来「河」と「江」と呼ばれています。

現在の黄河と長江です。

例えば中国で現在、実在の可能性が高くなってきた中国最古の王朝「夏王朝」(紀元前2070年頃 - 紀元前1600年頃)の始祖、禹(う)の父、鯀(こん)は治水事業の失敗で咎めを受けています。

そしてその息子が名誉挽回をしてめでたく治水事業が成功したという伝説があります。

今から5000年も昔の話です。

もっとも始祖禹王の生活も大変なもので、治水工事のために鋤や鍬を河川でふるい、家庭を破壊し身体がぼろぼろになくなるほどの重労働だったとか。

その頃から中国では治水事業は重大なことだったんですね。

そういうバックグラウンドを知ると、今の中国がしている三峡ダム事業などの壮大さや重要性も分かろうというものです。

領土の大部分は乾燥していて水も少ない土地柄ですから、田畑を潤してくれる人こそが本物の帝王というのもうなずけます。

惜しむらくは禹王が徳に優れ、自ら率先して質素倹約をして行動を起こし、政治にも優れていたが、決して誇ることはなかったのに比べ、現在の中国政府の行状はワールドワイドで迷惑をかけまくっているところに問題があります。

中国古来からの有徳の君主たちはきっと、地下で慟哭していることでしょう。

国史、中国思想を学んできた私だって悲しいです。

治水事業は力業ではどうにもなりません。

お金があるだけではだめなのです。

天を知り、地を知り、民を思えばこその大事業だと思います。

万事慎重な日本人ですら失敗することがあります。

残念ながら今の中国政府に天の時、地の利、人の和が揃っているとは、到底思えません。

そしてその結果、自然の逆襲に苛まされるのです。

私はお釈迦様の手に握られた孫悟空が、中国のような気がしてなりません。

このカオスのような中国の現状を打開する君子が、中国の草民から出てきてほしいと切に願っています。

SD110607 碧洲齋