不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

護身術 護心術

最近、よく護身術という言葉を見かけます。

女性や子供が暴漢に襲われたりしたときに使おうというアレですね。

まじめにそういう教室を開いている方には言いにくいのですが、正直あまり役立つようには思えないというのが私の意見です。

ある程度長いこと武道や格闘技をやっている人が応用として護身術を使うことはあると思いますが、護身術を学ぶために道場や教室に通うのはあまり費用対効果で考えるとお得ではないと考えます。

もっと正直に言うと、武道や格闘技をされている方の中でも護身術ができない人は大勢います。

その日その時その場所で、その相手とそのルールとその時間内で競う事に馴れ切ってしまっている方などは、とっさの場合どれだけ動けるのか、少々疑問に思うこともあります。

(蛇足ですがスポーツという観念ではそれはとてもよいとは思ってはいます)

素人がとっさの場合に攻撃を意図している相手に向かって技をかけるなどと言うことはアニメやマンガの世界だけと思った方が現実的です。

例えば自動車レース教室に通うにはまず普通に運転できることが前提ですし、ソムリエになるにはまずお酒が飲めることが前提です。

武道や格闘技を学ばずに護身術だけ、と考えている人はこの例を思い浮かべてみて下さい。

あまり厳しいことばかり言うのも何なので、私が考えている現実路線を少し。

襲ってくる人の心理は:

1.襲われる人はびびっているだろう。

2.襲われる人は自分よりも弱いだろう。

(肉体的には強くても総合的な状況で)

という判断をしています。

だから、とても簡単に言うと地震や火事の時のようにびびらず焦らず慌てなければ、かなりの確率で活路が開けます。この相手の見切り、見当違いの差があなたを救うのです。

日頃から人様に恨まれたり憎まれたりされるような覚えのない方は、そういう状況で殺される心配がないので、物取りの場合は大人しく差し出し、容姿や器量に少々自身がある方の場合は貞操を守ることだけを考えればいいでしょう。とりあえず該当する緊急事態に遭遇してしまったら、それだけを考えた方がいいかと思います。もしあなたが夢見る少女でアニメとかマンガをよく読むようだったら、決して変な勇気を持ってはいけません。87%ぐらいの確率で失敗します。

容姿に自信があったら涙を流しながら襲ってきている人の目をまっすぐに見るといいかもしれません。怯む確率大です。そういう意味では演劇ができるといいかもしれません。「あなたのようなステキな方がそんなことをするなんて、哀しくなりますっ!」なんて言えたら、多分言われた側は北極海の水をぶっかけられたような気分になること請け合いです。うまくしたら交番まで大人しく連行できるかも知れません。泣きたくなかったら微笑むという手もあります。そういうときに微笑まれたらやはり相手はホロリとかギクリとかして罪の意識を感じる可能性大です。でもそれは作り笑いではダメです。完全に自然な笑みでなくてはいけません。戦闘状態の人間は本物と偽物を峻別することもあります。そういう意味で信念を持つためにおかしなものでなければ何か信仰を持ってもいいかもしれません。私が知る限り、こういう状況下で微笑ませる事ができる一番効果的なものは神とか宗教のような気がします。(もちろん神様や仏様をそんな風に利用してはいけませんけど)ナウシカがテトと仲良くなるシーンなどは参考になるかも知れません(すみません冗談です)。

相手がかなり興奮していたりテンションが高かったら落ち着いて持ち物の中や周囲を見渡して武器になるようなものを見つけ、落ち着いて使用して下さい。落ち着くと言うことがとても肝心です。落ち着いて周囲を見渡せばチャンスはかなり広がります。既出の襲ってくる人の心理1と2をよくよく心に焼き付けて下さい。

素手で相手を投げ飛ばしたり関節技を掛けたり急所を打ったりするなどというスーパーアクションは忘れましょう。この際スッパリ忘れて下さい。

あなたが非常に幸運でしかも運動神経が抜群で格闘センスに優れていない場合はまず失敗します。上記のうちどれか一つだけだったらまず失敗しますし、二つだけでは大ばくち、3つ揃っていても五分五分でしょう。だいたい運動神経が良かったら走って逃げましょう。

「健全な精神は健全な肉体に宿る」と言われています。肉体と精神は入れ替わってもいいのですが、あなたが運動部の女子高生とかだったら走って逃げた方が間違いなさそうです。

私の勝手な想像ですが、毎日数キロのジョギングや筋力トレーニングを欠かさない、健全な犯罪者というのは極めて少ないのではないかと思います。もしそういうのに遭遇してしまったらあなたはとても不幸な女性です、としか言えません。すみません。

アニメやマンガのように華麗に一発逆転できる方法が2つあります。

先にも述べたように日頃からジョギングなどをして足腰を鍛える。襲う側はかなり高い確率で運動不足です。そしてあなたが中学生や高校生で平均以上の体格だったら間違いなく走って逃げることができます。女性だったら不必要に格闘して玉の肌を傷つける必要は全くありません。特に美女・美少女を自負する方々は人類の宝ですからそういう無粋なことは止めましょう(笑)。逃げるだけ。そのためのジョギングはあなたを更に美しくするという素晴らしい効果もあります。一石二鳥です。相手が疲れ果ててしまったらその時は思いの丈をぶつけて下さい。逆襲してもいいでしょう。でもその前に必ず119番です。あなたが犯罪者になってしまいます。

もう一つは武器になるようなものを持つことです。専門店で護身用の道具を買ってもいいのですが、頑丈なボールペンとか大きめの釘、血を見るのが嫌いだったら防犯ブザーをできたらダブルで持つことをお勧めします。大きなものはダメですが、小さなスイスアーミーナイフなどを日頃から使い慣れておくのもいいでしょう。複数入れて置いた方がよいです。一つだけだと焦っていると上手く取り出せないかも知れませんので。あなたの体ではなくサイフの方に関心がある場合にも備えて例えば1万円札などは常時入れて置くなどした方がいいかもしれません。自分の貞操や命を思えば1万円は安いものです。お金があったら数枚入れておき、襲われたときにパァーッとばらまくのもいいでしょう。忍法金遁之術というヤツです。

どちらの場合でも「冷静でいる」ことが重要です。びびっていては早く走れませんし、武器や撃退ツールを取り出すこともできません。だから冷静でいることが重要なのです。女性だったら貞操だけでなく顔に傷が付く心配をできるぐらい冷静になれたら、もしかしたら活路を見いだせるかも知れません。

使わない方がいいですが、容姿に覚えがある女性が体目的で襲われた場合、暴力を振るわないことを約束させて自分から脱ぐ、という方法があります。涙ながらに怯えながらゆっくり脱げば、相手は冷静になる可能性が高いです。ならなかったら脱いでいる間に周囲を観察してチャンスを見いだした方がいいでしょう。

これも止めた方がいいですが、大人しく組み伏せられ、事を成すときに相手の金的などを狙うという手もあります。指で目を突くのもありです。ちょっとドラキュラみたいで怖いですが頸動脈を噛むというのもいいでしょう。血を見るのが嫌なら両手の掌で相手の両耳を同時に打ちます。最低でも片方の耳の鼓膜が破れます。

ともあれそこまでくるとギリギリで血を見かねないので、お勧めしません。これらの術はその昔、くのいちが使ったと言われています。本当かどうか分かりません。

ちょっとばからしいかも知れませんが、体を許せるボーイフレンドがいるなら、日頃からどんな感じにしたら淫猥な感じになるか、色々試してみてもいいかもしれません。大抵の彼は喜ぶかも知れませんが、ともあれ彼が引かない程度にしてください。周囲に何も武器がないときは女性の体を以て武器として下さい。あくまで最悪の場合です。

蛇足ですが、女性は男性に比べて血を見ることに慣れています。普通の男はちょっとした流血でも結構青ざめます。そういう場合も女性が強いのではないでしょうか。もちろん、大抵の男は女の涙にも弱いものです(笑)。多分。

・・・で、冷静になるためのトレーニングとして護身術を学ぶのであれば、まあまあそれもありかな、と思います。実際に使えるようになるには数年かかることもありますが、心持ちは結構早く変わっていくものです。そうの手の教室に通ううちに不幸な場面に出くわしてもある程度冷静さを保てるようになればしめたものです。でもできたらそれ以上のことは試そうと思わないで下さい。繰り返しますが、うまくいかない確率の方が高いでしょう。

もっともっと冷静になれることを学ぶと、人は闘争モード時、結構間が抜けていることを理解するかも知れません。なので冷静になると言うことは相手が気付いていない活路を見いだすチャンスでもあるのです。

ともあれ日本で殺される心配をしたくなければ、日頃から人から恨まれたり憎まれたりしないこと。危ない場所には行かないこと。あまり美しさを強調しないこと。オッサンくさい言い方ですが、女も中身が肝要ですよ、特に男性と付き合いが長くなれば。その上で肝を太くして適度な運動をしていれば、護身術などと言う大層なものにお金や時間を掛けずにすみます。だから私は日頃から「護心術」の方が重要だと思うのです。

以上、不動庵 碧洲齋の護心術概論でした・・・役に立たなかったらスミマセン。

SD101102 碧洲齋