不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

張飛の国・孔明の国

日本では三国志というとやはり劉備玄徳と諸葛孔明が一番人気ですが、本場中国では張飛益徳の人気が高いようです。私は日本人と中国人のものの考え方がよく現われていると思います。

日本ではクールでスマートな勝ち方がよしとされています。それは例え武道でもそうです。例えばハリウッド映画のようにがっぷり四つになって激しい血みどろの肉弾戦の末に勝つというのは絶対にダメです。私も基本、孔明型の勝利でないと納得しません。

中国では威勢のいい、勇猛果敢なヒーローが好かれているようです。情にもろく武骨漢、算段が立っていなくとも胸を叩いて「俺に任せろ!」と言うのがかっこいいようです。雄叫びを上げて、敵陣にまっしぐらと言うのがカッコイイのだそうです。

今回中国に行って本当にそう思いました。中国では男は威勢の良さ、面子如何がとても重要なのです。だから現地工場や展示会で明らかにこれは謝らねばならないシチュエーションでも絶対に謝りませんでした。道路では譲り合ったり感謝し合うなど論外です。

これがいかんとか悪いとか言っても始まりません。これがこの国のスタイルなのです。日本国内では国際通を自認する人たちが、謙譲の美徳なんか世界では通用しないと言って憚りませんが、実際そういう気質は世界的に見てかなり善良な民族と思われています。善良すぎて何考えているか分からない、という程です。同じように中国では世界でどのくらい自分流を押し通せたかを同族に見せびらかせられるかが重要なのです。面子です。まあ、この場合、世界中から非難されてはいますが。

やはり日本人は誠意や知謀と言ったものを駆使してクールに勝つ孔明が好きで、中国人は大酒飲みで情にもろく、勇猛果敢な張飛が好きなようです。

出張中、中国国内の販売店様を集めて弊社では初めての会食をしました。

中国では基本酒が飲めないと話になりません。

そしてできたらたばこも吸えることです。

同じ卓でほとんど1人ずつ飲み交わしました。

そして熱く語り心の内を全て吐露しました。

正直に言うと、この会食は大成功でした。

立案・実行責任者は男泣きでした。

私もちょっと泣けてくるぐらい大成功だったと思います。

責任者は日本に帰化した元中国人です。奥さんは日本人です。

初めての試み、このような極めて日中関係が悪い時期です。私や社長が行くかどうかの瀬戸際まで来ました。

責任者がもし中国人のままだったら何の気苦労はしなかったでしょう。

またキッパリ中国人を捨てたらこれまたどんなに楽なことか。

彼は中国人と日本人の狭間で本当に苦しみもがいていたのがよく分かりました。

本当に頭が下がりました。

また、販売店の皆様にも感謝しきりです。

打ち解ければ中国人も情が厚い、ある意味日本人以上にもり立ててくれるなと感じました。

色々な中国人がいますが、少なくとも参加された販売店様は皆、品行方正な紳士でした。

古代中国の思想家・政治家だった管子の言葉があります。

「倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る。」

今すぐとは言いません。中国の皆さんがこの言葉を噛みしめて、少しでも真の意味で世界のために尽くせる民族になって頂ければと思います。

SD101130 碧洲齋