刃と火のこと
我が家における、基本重要技能として「刃物と火」を重要視しています。
人類が発生して以来、獣よりもひどいと思う部分もありますが、とりあえずこの二つの道具のお陰で他の獣たちよりは若干優位に立ってきました。人の手が加わった道具としては刃物が最初の加工済み道具ということになります。また、自然にあった化学反応を制御できたという意味で「火」が取り扱えるということも他の動物と人間を峻別する重要な線引きです。今日でも形を変えてこの二つの道具は人類の営みに必要不可欠な働きをもたらしています。
そういうことで我が家では息子が幼少の時から「刃物と火」を扱わせています。
何度か指を切ったこともありますし、ストーブや焚き火で熱い思いをしたこともありますが、ともかく多分、両方がそれぞれ持ち合わせている諸刃の便利さを認識したと思います。私は刃物と火は人間として最低限、絶対必要不可欠な道具だと考えています。
私が初めて自分のナイフを手にしたのは14歳、中学3年生の時でした。当時流行始めていたいわゆるサバイバルナイフでした。その少し前にサバイバル技術に関する本を読んだ折に、ハンドル部分に色々なものが格納できるナイフがあるというのを知り、買ってみたわけです。不良の「護身のため」という理由とは違いましたね。その後1年ぐらいは色々本を読んだり実践したりして、我流で手入れの方法も学びました。
シルベスター・スタローンが「ランボー」に主演して、サバイバルナイフを使っていたということは、高校になって映画好きの友人から教えてもらうまで知りませんでした。ランボーを見てからはあのようなデカいナイフも欲しくなり、バイトなどをして、30センチ近い大型のナイフなどを買ったりしました。一番高いナイフはバック社のバックマスターでした。10万円近かったと思います。
現実には大型ナイフというのは使う機会が少なく、大きいだけで実用には不向きだったので、しばらくは同じくバック社製のチタンハンドル製折りたたみナイフを使っていました。数年前に強烈に欲しいと思ったナイフが出ました。伝統工芸師、佐治武士が製造している和式ナイフ群です。和物が好きな方にはたまらない魅力だと思います。私が持っているのは刃渡り16センチ、ハンドルは鮫革を巻いた木製。鞘も木製です。刃はよく使われる440炭素スチールではありません。波紋が付いている和風の刃です。山で稽古するときなど、これを帯に差しても全く違和感がないのが嬉しく、日常でも時々、料理に使ったりしているぐらいです。
実は私はドイツで行われていた工芸品の展示会で佐治武士さんとお会いしたことがあります。JETROのブースで彼のブランドナイフを展示していた時に会いました。意外に気さくな方でしたが、海外ではもの凄く人気のある方のようです。今でも色々な種類のナイフを出していますが、彼の想像力は本当に素晴らしいと思います。日本が誇れる職人ではないでしょうか。
最近、使ってみようかなと思っているナイフがこれ(下)。
フィンランドの武友がくれたものです。しばらく箱に入れたままでした。ハンドルの側面が白木になっていて、ベルトに取り付けられるようにクリップが付いている折りたたみナイフです。片手で刃の出し入れができます。持った感触は悪くありません。メッキ処理がされていますが、意外に実用的です。少し刃を研ぐ必要がありそうですが、ちょっとしたときには使ってみようと思います。
スイスアーミーナイフ(上)は日常的に鞄に入れています。このモデルはハンドルがアルミでスイス軍が兵士に支給しているモデルです。何故買ったのか記憶にないのですが、小さくて便利なので使っています。
今日、日本では刃物は犯罪に使われる道具の代名詞のように言われますが、実際にちゃんと使いこなせる人が何と少ないことか。論語読みの論語知らずという態でしょうか。
個人的にはパソコンを自在に操れても刃物や火を扱えない人類にはちょっとゾゾッときます。そのような人類がたくましく未来に邁進するようにはどうしても思えません・・・。
SD101029 碧洲齋