不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

ポール・ティベッツ氏について

原爆投下機長の息子、大使派遣に不満あらわ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100806-00000415-yom-int

私はB29爆撃機エノラ・ゲイ」の元機長ポール・ティベッツ氏は立派な米国軍人だと思っています。重要な命令を大統領から受けたのですから、やはり優秀な軍人だったのだと思います。もし彼に原爆投下の罪があるという人がいたら、私は絶対に同意しません。米国人で彼を非難する人がいたらそいつこそ恥知らずな非国民です。彼は忠実な軍人でした。原爆がどのような超絶した兵器なのか、当時は造った人も含めて正確に知るよしもありません。例え知っていても、大統領からの命令を「人間としてそれはできません」という答えをする軍人に栄光はありません。軍人は命令に対して忠実に従うものなのです。ましてや当時、米国の方が絶対的な優勢下にあってなお、特効攻撃を繰り返す日本に、決定打を与えたいと思わない軍人がいたら、そいつは軍人ではありません。軍を辞めて牧師にでもなった方がいいでしょう。そしてその息子も父親を誇って然るべきです。彼は何ら恥じる事はありません。日本人である私が認めます。

日本人の中で未だに米国を憎き敵国だとみなしている人がいるでしょうか。日本人の素晴らしくも優れた資質の一つは「罪を憎んで人を憎まず」ということを本気で実行している事です。たぶんこれは世界でも類い希なる資質だと思います。

日本人は戦争を憎んでいます。でも米国や英国を憎んでいる人はいないと言っていいでしょう。いたら博物館にでも飾っておきたいものです。本気で好感を持つ人もどれだけいるのか分かりませんが、とりあえず米国や英国、少し落ちるかも知れませんが露国にすら本気で嫌悪している人がどれほどいるのか。

私の母もそうでした。母の父、つまり私の祖父も昭和19年の夏、サイパンに増援するための輸送船団に参加していた船員でした。そしてたどり着くことなくサイパン近海のどこかで戦死しました。また、母は防空壕に待避中、米海軍艦載機のパイロットから笑みを浮かべながら機銃掃射を受け、九死に一生を得ました。4歳だったそうですが、パイロットの顔も当時の事も悪夢のように覚えていました。でも本気で私は米国は憎くありません。私は米国に留学しました。今、私には米国の親しい友人は何人もいます。英国にも露国にも友人がいます。母もそうあるべきだと信じていました。戦争は憎いです。こういう時は日本人でよかったと誇りに思います。今でも半世紀以上も昔の事を引き合いに出して、国民の感情を駆り立てる事がどんな気持ちなのか、ちょっと理解できません。かなり愚かな事だという事だけは理解できます。少なくとも賢い事ではありません。該当する国の方々は心して欲しいと思います。時間は神の力を持ってしても一方通行、人やもの、国の寿命にすら限りがあります。辿り着けもしない昔の話しを真に受けるヒマがあったら、今の平和に感謝し、更に余裕があったら来るべき将来に備えるべきでしょう。

1発の爆弾で何十万人も殺せるという事実に震撼しなかったら、人間を止めた方がいいでしょう。全員、一人残らず自分を憎んでいる人たちだけをそのように殺すのなら多少意味合いは違うのでしょうが、現実にそんな馬鹿な事はありえません。ティベッツ氏だってそれを知っているから、死ぬまで苦しんだと思います。世界で唯一人、核兵器を使った男として人類史に名を残してしまったのです。本人はただ、栄誉ある軍人のままでいたかったに違いありません。そういう意味では立派であり、悲しい方だったと思います。米政府はどのくらい彼を手厚く遇したのでしょうか。

原爆と言わず、高価な兵器は一人の手で作り上げ、使えるものではありません。関わっている一人一人に疑問が湧き、違う道がないのかどうか、徹底的に苦しんで欲しいと思います。私は戦争を否定しません。やむを得ない場合は戦争もやむを得ません。しかし始まってしまう前に万事を尽くして欲しいと切に願います。

SD100806 碧洲齋