不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

2017年度 第4回秩父巡礼の旅 壱

秩父巡礼で巡る寺は34ヶ寺で距離は約100キロです。しかしながら1番札所から29番札所までで約40キロ、つまり以後の5ヶ寺だけで60キロもあるという計算です。1版から29番まではほとんどが秩父市街地かその近郊ですが、30番札所から34番札所まではかなり離れたところにあります。今回私たちは30番から32番までを歩きました。 今年はロシア人相棒の休みの関係で8月18-19日の1泊。真夏の暑い盛りと思いきや、関東地方はこのところずっと雨だったため気温の心配はなさそうなものの、雨が心配でした。予報では降ってもごく僅かという事ですが、今回は今までと違って電車で行かねばならないため、荷物などはすべて自前で持つ必要があります。故になるべく軽くして楽に行きたいと願った次第。 自宅の最寄り駅から始発の電車で春日部駅まで、そこで柏に滞在していた相棒と合流して羽生駅まで。 羽生駅からが長い。今回は前回打ち止めにした29番札所に最も近い浦山口駅に行くことにしました。1時間半近く時々しゃべったり寝たり食べたり。 天候は今にも降ってきそうな程の曇天。浦山口で降りると駅員さんに写真を撮ってもらい出立。
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前回の終了地点、29番札所長泉寺の入口まで1キロ。そこから国道140号線を道なりに進んで並行して走っている秩父鉄道と交叉する直前の場所に即道神社というのがあります。これは即道坊というお坊さんを祭った神社なのですが(そうすると筋から言えば寺のはずですが、ま、それは置いておくとして)この即道さん、怪しげな遥か昔の人ではなく、出家前の名を六兵衛定之といい慶安10年(1657)ごろにこの秩父にて生まれたそうです。で、子供の頃から怪力で俊足だったとか。 エピソードが幾つか。 ・12段のハシゴに薪をいっぱい積んで走り回った。 ・腰に一反(約12メートル)の布を付けて走らせてみると、あまりの速さに布が地面につかなかった。 ・当時江戸まで往復200キロもの距離があったが、1日で往復してしかも買ってきた魚は腐っていなかったほどとのこと。 ・お堂の中にある二抱えほどの石は即道さんが富士山から持ち帰ってきた石だとか。ざっと見で150キロはくだらない重さです。ちなみに秩父から富士山までも片道150キロぐらい。本当だったら即道さん、人じゃないかも(笑) 怪力で俊足だけではなく、なかなか手先も器用で隣のお堂に安置されている薬師如来像は即道さんが作ったものとされています。時代が時代だけにそれほど大ボラを吹いているとも思えず。人体の可能性の深さを思い知りました。 しかも手先も器用で隣のお堂にある薬師如来像も造ったのだとか。 即道神社。即道坊が富士山から持ち帰ったとされる岩が安置されている。
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薬師如来堂。これも即道坊が彫ったものだとか。
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そこから約5キロ、ずっと140号線を西進します。天気が良かったら荒川左岸の140号ではなく、右岸の細い道路を線路に沿って歩きたかったのですが、あいにく天気が悪く、念のため大通りを歩いた次第です。 140号を逸れると割と傾斜がある道を上っていきます。約1キロ歩いたところに本日最初にして最後の札所、第30番法雲寺があります。
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庫裏前の池が大きく作られた寺庭がなかなか美しかった。 そこから石段を登り本堂に到りますが、昇ったところから観る寺庭も良いと思われます。ただ我々は7キロを歩き、かつ雨天だったため(途中で雨具を付ける)やや疲労困憊気味。今回は回る寺も少ないので丁寧に読経したのは言うまでもありません。
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このお寺は私がお世話になっている臨済宗建長寺派の寺院なのでできたら住職と少しお話しをさせていただけたらと思ったのですが、御朱印のやり取りはあったものの、いささかお話を聞ける感じの雰囲気ではなかったので致し方なし。 34ヶ寺いつも住職が待ち受けていて、話をしてくれるとは期待してませんが、雨天の中、参拝客もほとんどおらず、かつ徒歩で参拝にやってきた我々に多少愛想良くしてくれてもいいのにとは思いました。
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で、寺を出立し一路三峰口駅まで。2.3キロ。雨が止んできたので途中で雨具を脱ぎました。前回からポンチョにしましたがやはり巡礼はポンチョに限ります。また遍路笠は強い風がない限りは恐るべき便利さ。カッパのフードは視野が利かないし肌に付いて気持ち悪いのですが、遍路笠は風通しは良く、視界を遮るものは無い。またしっかりあごひもを付けていれば多少の風でもOK。もしこれで折りたためたら、ポンチョ+遍路笠は最強の雨具です。 三峰口駅で一旦トイレに行きました。少し休んでから出立。ここから旅館までが長距離で12キロ。しかし3.5キロほど歩いた途中になかなか期待できそうなそば屋があり、30分遅れで到着しました。外観はごく普通の、比較的新しいそば屋です。グーグルマップの投稿ではなかなかの高評価だったので、天ぷらくるみそば大盛りを注文しました。摺下ろした胡桃が入ったそば汁で頂くざるそばです。いや、これは想像以上にずっとおいしかった。山間部の小さなそば屋と思っていましたがいい意味で期待を裏切られました。最近食べたそば屋の中では一番おいしいと思います。
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それから4キロほど狭いトンネルもある道を歩いて行くと道の駅があり一旦休憩。ただしまだお腹はいっぱいのままでした(笑) 早くも旅館の夕食が食べきれるかどうかが心配になりました。道の駅を出てからやや上り坂。峠を越えて下ると川があり、それを超えて1キロで旅館やしき。長い旅程でした。旅館やしきは想像していたよりもずっときれいで、古民家をリフォームしたのでしょうか。中は何度かに亘ってリフォームされたらしく、真新しかったり、そうでなくとも十分快適なきれいさでした。 部屋は2階で見晴らしが大変良かった。1時間少々休んでから・・・外の庭で稽古(笑) 足がこわばり、疲労困憊しているときこそが神機の間合いや拍子が見えてくるものです。ま、どんな稽古だったかはナイショ(笑)
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稽古を終えて帰ると夕食。いやいや豪華で見ているだけで胸が一杯になりました。 もちろん全部きれいに食べましたが、昼は大盛りにしなければよかった。 部屋に戻ってから相棒と色々な質疑応答に応じて9時過ぎには就寝。それはもう爆睡しました。 この日歩いた距離は27キロでした。
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山あいの宿 やしき http://yasiki.com/ 平成二十九年葉月二十一日 不動庵 碧洲齋