不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

古い胴着を着る

一昨日、11年使っていた3代目胴着が破れ、急遽2代目胴着を引っ張り出して着用しました。

実はたまたま先月、初代と2代目胴着を久し振りに押入から出して洗濯機にかけたばかり。偶然なのかどうか。初代は少し小さく、何度も補修したので使えるかどうか微妙なのですが、2代目は3つの中で一番高価な胴着だけあってまだまだ使用に耐えられます。

ここ10年ぐらいの黒い胴衣は染め方の技法が進歩したのか何度洗濯しても色落ちしませんが、それ以前は良く色落ちして、白灰色になってしまいました。当然のことながら色が薄いという事はベテランです。昔は色の薄い胴着にボロボロの帯を締めている雲上の師範方を仰ぎ見て精進に励んでいたものです。30年ぐらい前の当流では5段以上は文字通り、正真正銘レジェンドでした。

この胴着に袖を通したのはいつだったか・・・多分、日本語教師になる直前、24.5だったと記憶しています。棒術、槍術、薙刀術を学び、特に槍術に強く惹かれた頃だったかと。先生から東海堂がもっとも良い品質だと聞かされて、買いました。ただ日本語学校に就職すると、5年ほどの間に豪州2回、名古屋、大阪、福岡とあちこち転勤になり、しかも昨今良く言われている「ブラック企業」のドストライク格でしたから、大変得がたい経験もできましたが、勤務していた頃はほとんど稽古もできず。

その後転職してからはまんべんなく稽古に出て精進に励みました。その胴着は結婚して息子が生まれて1.2年ぐらいまで着ていました。言うなれば開化直前、夜の帳が上がる直前、そんな頃だった気がします。尤も今の自分が開花したとか開眼したかは甚だ疑わしいですけどね。たぶんしたつもりでいるだけでしょう。

不思議なもので昔の胴着を着ると、その頃に学んだことがドッと思い出されます。かなりのディティールまで思い出せます。五感全ての生の感覚というのか、ありありと思い浮かんできます。もちろん懐かしい感じも同時に思い起こされました。あまりにリアルに良く思い出すので昨日の稽古では逆に戸惑いました。

これ、大人になってから高校時代の制服とか着ても同じなんでしょうか?私は卒業してから即廃棄してしまったので分かりませんが。ちょっと興味ありますね。

本日の天気は昨日に続いて強い風に雨。満開になったばかりの桜がもう散り始めています。

泣きたくなる光景ではありますが、世の無常を示しているかの如く。自然の厳しさも伝わります。

画像

咲き乱る

時を俟たずに

雨嵐

桜吹雪に

まほろばの見る

平成二十九年卯月七日

不動庵 碧洲齋