不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

臘八初日

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師走朔日は禅宗において、特別な日になります。

仏教の始祖であるお釈迦様が、大宇宙の真理を得ようと一大決心をして「今、悟りを得られなければ生きてこの座をたたない」と誓い菩提樹の下で坐禅を組んだのがこの12月1日とされています。

禅宗の僧堂では臘八大摂心と呼ばれ、その故事の追体験をするために7日間寝ずに坐るという大変な修行が行われます。

お釈迦様は王子という、大変恵まれた地位を棄て、美しい妻と生まれたばかりの息子を棄ててまで出家してまで追い求めたい真理があったのでしょう。

私も今に至るまで家庭人と言うよりは修行者に近いと思っています。

高校ぐらいの時だったか、とある占い師から「あなたは家族縁が薄い、安らげるような家庭には縁はないが、ずっと修行をしていく者としては大変恵まれた条件を持つようになる。」と言われたことがあります。その時はあまり真に受けませんでしたが、今の環境を鑑みるとまさにその通り。ありがたいことに息子も私の生き様には十分納得してもらっています。

人によりけりなのでしょうが、私の場合は武芸だけではいささか知りたいと思う真理に届かず、禅をして初めて、真理に至る道具というか指針を得た気がしたものでした。今では武芸と禅は両輪のような関係です。

私が通う禅寺では毎年この時期、在家のために座禅会が行われます。2炷1時間と提唱ですが、その前の随坐を含めて2時間弱の坐禅と提唱、ちょっとした茶礼を7日間連続で行うわけです。通常はこのようなカリキュラムは毎月第1、第2日曜日だけ行われます。

家から寺まで片道12キロ。往復24キロの道程を7日間自転車で通うのですが、仕事帰りですし冬場ですからそれなりにきつい。自動車を3年前に手放してから3年は車なし生活をしようと決めていたので、今年までは自転車で通います。

本来は通うことも修行なれば、安易に車や交通機関すら用いるべきではないのかも知れませんが、現在では社会全体が速度を要求します。スローライフに浸っているだけの余裕もなく。何か複数の用事をしなければならないときは距離があったりします。故に3年間で感じたことは移動速度を上げることはやむを得ないと言うことでした。

とはいえ、車がなくても意外にそれほど困らないことに気付き、内燃機関搭載の乗り物のうち、もっとも小型の50ccスクーターを買うことにしました。地球環境保護の点からも、70キロ程度の人間が移動するのに同じく70キロ程度の乗り物であれば大変環境に優しい。軽自動車でも700キロはあります。70キロの人間を運ぶのに700キロの物体を動かすというのは大変不経済で環境にはよろしくない。自分にできるところから環境保護をした方が良いと、これは結構真剣に考えています。

この臘八坐禅会をするようになってもう10年になるでしょうか。ここ6.7年はほぼ皆勤です。今年ももちろん皆勤を目指しますが、自転車で通った3年間の重みというのはやはり他とは違うものがあります。

さて、今日から7日間毎年のように粛々と坐りたいと思います。

平成二八年師走朔日

不動庵 碧洲齋