不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

車無し生活の省察

昨年正月に車を手放してから1年半が過ぎましたが、その間に色々想ったことなどを少々。

【メリット】

1.お金が掛からない。車は乗っていようといまいとお金が掛かりますが、日常経費がほとんどかかりません。ちなみに乗れば乗るほどに車は疲労しますから、修理/交換すべき部品と燃料代、高速代は幾何学的に増大します。

2.心労が少ない。自分の肉体で制御しきれないほどの高速で移動しています。自分が怪我をする分にはいいですが、同乗者や対面者などが事故に遭う可能性は常に絶対に「ゼロ」ではありません。だから車に乗っているときは常に心のどこかでそういう心労があるわけです。

3.不急不要な外出が減る。どうでもよい小さな買い物のために出掛けたりしなくなります。出掛けるときはあらゆる条件をよく考えてから出掛けます。例えば天気や体調、往復の荷物の量などは極めて慎重に考えるようになります。

4.縛られない。駐車場や盗難、保険など、自動車は手間暇や費用の嵩むことが多いのですが、せいぜい自転車の生活だとそういう束縛からかなり逃れられます。

5.確実にエコに貢献。10キロ程度の買い物をする為に、70キロの体を700キロの物体とガソリンで10キロ往復させる。どういう言訳をしてもこれがそもそもの地球温暖化、エネルギーの浪費になると言うことは痛感しました。10キロという買い物でなくとも、ちょっと遠目の本屋に行くという場合なら尚更。車が多分、無駄ではなかろうと感じるのは、軽自動車でも定員一杯の4人が乗って、荷物を荷台にいっぱい積んで、20.30キロ以上先の交通の便がよくない処に行く場合とか、そういう場合です。1人で何気なく大した用事でもないのに自動車を走らせるぐらい、エネルギーロスと環境破壊を手助けする行為はありません。自動車を所有している時に比べたら我が家は確実に3ケタ分ぐらい、二酸化炭素排出量を抑えていることは間違いありません。

【デメリット】

1.天候に左右されやすい。荷物の有無や交通の便にもよりますが、天候が悪いとかなり制限されます。雨具を用意したり、干したりする手間も掛かります。

2.緊急時は本当に困る。今のところ1年半でありませんでしたが、急な病気や怪我の時に車がなかったらちょっと困ると思いますが、ま、タクシーという手もあります。

3.自由度がない。最近は格安レンタカーもあるので、結構安く簡単に借りられますが、営業時間の関係でかなり自由度がない。そしてシェアしないと高く付くこともあります。また、公共交通機関の営業時間にも左右されます。

4.荷物。大きな買い物をしたときなどは本当に車があると便利。大きな、と書きましたが、要するに自転車に乗らない程度の荷物です。

5.体調にも左右される。文字通りです(苦笑)。逆に言えば万全でないときは出掛けるなって事かも知れませんけど。

要するにどこに出掛けるにしても自由度にかなりの制限が掛かると言うことです。昔の人はそういう生活をしていたというのは本当ですが、あいにくと現代では昔と同じ行動範囲という訳にいかないのが、「なるほど文明だ」と思わざるを得ないところです(苦笑)。文明といえば、さすがに日本の公共交通機関は優秀だなと思いました。やはり定刻通りに動いて、かつ網の目のように敷設されているので、主だったところに行くためには全く難儀しません。公共交通機関のいいところは、運転者のようにいつも気を張っていなくてもよいということ。移動しながらもぼーっとしていられるところが大変気に入りました。

ちなみに費用について計算したところ、公共交通機関の月の出費は、スイカの毎月の出費と概ね同じぐらいでした。そして概ね毎月借りているレンタカーの費用の合計は、推定2年にすると車検分ぐらいにはなるかと。なので実質的にはエクストラで掛かるのは車体本体価格と不規則な部品交換、オイル交換ぐらいかと思います。あくまで私の場合ですが。

個人的には行動半径が広がることは、見聞を広めるにもいいですし、何よりも可能性が広がる。私の場合などは海外の友人も多いので、月1ぐらいで観光案内をします。息子ともよく出かけました。そんなときなどはすぐ車がないことが時々惜しいように思うことが、車を手放してから多くありました。

私の禅の師匠がいつの間にか自動車を運転していて驚きました。聞いたところ、親の体調が思わしくなく、時々病院などに連れて行くのに必要になったので、50近くになって自動車の運転免許を取って、軽自動車を買ったとか。必要に迫られということですね。で、先日伺ったときには、今まで何気なく自転車で行っていたところが、車で行ってしまうようになる、果たしてこれがいいことか悪いことかいつも考えてしまう、とのことでした。今の私にはリアルに分かります。ちなみに師匠は以前庭の手入れの時に脚立から落ちて足首を少しおかしくしたので、多分それ以後は長距離を歩くことは難儀だったと思います。

息子が来年から中学生になるという節目なので、50パーセントぐらいの確率でまた車を持ってみようかどうか検討しています。ま、買うにしても軽自動車の安い奴ですけどね。

平成二十七年水無月十五日

不動庵 碧洲齋