不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

手裏剣のこと

手裏剣は忍者が使う武器としては一番有名ですが、世に知られているのはほとんどフィクションです。

手裏剣は正確には「忍者”も”使っていた武器」です。

普通の(あまり普通すぎるのは別として)武士も使える人はいました。

現在でもいくつかの流派が活動されています。

通常、古武道の世界で「手裏剣」と言ったら棒の形をした「棒手裏剣」です。

星形手裏剣は普通使いません。あれは作るのが面倒ですし、真っ直ぐに飛ばすのが難しいのです。また、一撃で倒すことも難しいのです。何故なら回転しているとは言え、力が刃の数に比例して分散してしまうからです。そして形が形なので持ち運びが不便でした。ただ、戦国時代などにいたと思われる速成忍者には使いやすかったかも知れません。それと手裏剣以外の用途としても使えたことでしょう。まあ、それは棒手裏剣でも同じことですが。

とりあえず棒手裏剣はちゃんと命中させれば相手を殺すことも可能です。刺さらなくても間違いなく怪我します。また、実際、手裏剣はそんなにたくさん所持しません。重いのです。当流では持つのはせいぜい9本と言っていますが、9本でも結構重いですね。人にもよると思いますが、2.3本ぐらいが妥当ではないでしょうか。流派によって形が異なるのは本当ですが、現実的にはどんなものでも打てるようにならないと意味がないでしょう。(手裏剣は「投げる」ではなく「打つ」と言います)それは剣術でも同じことで、流派指定の型の木刀でなくとも木切れでも同じように扱えた方がいいと思います。だいたい忍者が流派指定の手裏剣など使っていたら、敵にばれてしまいますから。そして手裏剣を作る労力と実用性を天秤にかけると非常に微妙としか言いようがありません。

ま、前置きはそのくらいにして、今日は会社が休みでゆっくりするつもりでした・・・が、朝、いきなり同僚から電話がかかってきて、イレギュラーが発生し、結局会社に行くハメになりました。こういう時は会社まで車で10分というのはありがたいですね。イレギュラーの処置自体は30分程度で片付けるも、1日の予定が大幅に狂ってしまいました。で、机の奥にしまっていた鉄の棒切れをごそ~っと取り出し、誰もいない工場に忍び込みました。(実際には営業関係の社員が何人かいて、断りましたけどね)

工場には廃材があります。以前裁断した鉄棒だけでは少ないので、廃材置き場から錆びた鉄棒をいくつかゲットし、カッターで手頃な長さに切りました。こういう時工場は便利です。10ミリもの鉄棒もサクサクと切れる大型電動カッターがあるのです。で、次は削り出し。これまた大型の研磨機があるので取りかかりました。久しぶりだったのと、今回10ミリ径という太い鉄棒を研磨したため、3.4本やったところでくたくたになりました。一休みして辺りを見渡すと、あるじゃないですか、もっと大きな研磨機が。すぐに鞍替えして作業を始めると先ほどよりはずっと早くなりました。ただし手裏剣はどうしても手で保持して、回転させながら研磨しなければならないので、気を抜くと手裏剣があらぬ方向に吹っ飛んでいってかなりキケンです。実際何度か吹っ飛びました。研磨を終えると今後は仕上げの研磨のために別の研磨機で何度か削ります。終わった頃には私服が鉄粉と研磨粉だらけ。顔も手も鉄粉まみれでした。そして13時近くなっていました。

一旦帰宅し、昼食を取ってから再開。会社から拝借したサンドペーパーなどで錆を落とします。かなり頑固なのもありました。そして刃先の焼き入れ焼き戻しをします。これがなかなか難しい。これをしないと先が簡単にひしゃげてしまうのです。ガスコンロで刃先を赤くなるまで熱し、なったところで水に漬けます。全部終えると今度は焼き戻し。こちらは赤くならないぐらいで水につけるのですがこの案配がまた難しい。これらの作業が全部終わったのが15時過ぎでした。疲れた・・・。

今回出来上がったのは10ミリ径のものが10本、8ミリ径のが7本です。10ミリ径の1本が僅かに曲がっていたのに気付いたので、1本は破棄しました。始めから分かっていたら研磨しなかったのに・・・。ま、それでも久しぶりに補充した17本なので、大切に使いたいところです。長さはいつもそうですが、大体同じ長さにしているだけで、数センチの違いがあるものもあります。これはわざとです。どんな長さのものでも扱えないといけないと思うからです。刃先の研磨は本当に難しく、手裏剣を打っている人ならどんな形状がベストなのか分かると思いますが、紙面では説明するのが難しいため割愛します。

それにしても明日は腕のあちこちが筋肉痛になっているかも知れません。研磨中は神経を張って歯を食いしばっていたので先ほどまでかみ合わせがおかしかった感じでした。本当に疲れました。

写真は不動庵 碧洲齋謹製 できたての棒手裏剣です。左は今まで使っていたものと同じ8ミリ径で7本、右は今回初めて大量に作った10ミリ径10本。

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SD100305 碧洲齋