不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

寺庭の炎

此度福山を訪れた理由は福山から車で1時間ほど山に入った神石高原町にある光信寺という寺に友人が働いていたから。その友人はオーストラリア人なのですが僧侶で、縁あって光信寺に勤めています。

光信寺、奥が本堂

光信寺はバブル絶頂期に近隣の造船会社によって建立された禅寺ですが、リゾート的な目的もあり、境内には大浴場や食堂、宿泊施設があります。また100人以上が入れる禅堂などがあり、ちょっとした大本山級の大きさと言えます。石庭も大変広く、素晴らしい。

本堂内部、割にシンプルな作りです

100人以上収容できる禅堂


また寺には養鶏場や田畑もあるのである程度自給自足しています。卵などは1日約100個弱採れるそうです。 実際養鶏場まで行ってエサを与えるところを見てきましたが結構鶏がいました。

寺に隣接して温泉もありますが、我々はそこから少し離れたところにある神石高原温泉の方に行きました。pH10.4と書いてありましたからかなりのアルカリ性です。実際風呂に入ると少しぬめっていました。ただし普通の温泉よりも心地よかった。しかも光信寺隣の温泉よりもずっと小さいので人も少なく、落ち着いて入れました。

案内された部屋はなんと15畳!私の部屋の倍です(笑) 目の前は石庭があり大変素晴らしい部屋でした。友人以外にも数人働いていました。偶然にもその1人は以前、私と同じ草加市に住んでいたことがあったとかで世の中は結構狭いものです。

見事な石庭

温泉に行って寺で打った蕎麦などを食べて腹を満たしましたが、丁度先ほどまで介護関係職員のレクレーションのためにキャンプファイヤーを寺庭でしていた関係で、まだ炎がいい感じに燃えていました。寺庭と言っても学校の校庭ぐらいもあるのでかなり広い(笑) その中央に炎があって、周囲は山なので完全に暗闇。寺の入口の照明が少しだけ見えるといった状態。
空を見上げると満天の星空でした。地面には赤々と炎が燃えていて空は満天の星空。ここ最近経験しなかったような幻想的な風景でした。

入口にやや長めの竹が立てかけてありました。
それで炭をかき集めたりしていましたが、そのうちちょっと振ってみたりしました。元々私の得物は鎗ですので、何やら焚き火の前で一心不乱に鎗を繰り出す始末(笑) 誰もいなかったからやり始めたのですが、誰かが見ていたらかなりアブないヤツだと思われたことでしょう。幸い夜間の寺には豪州の友人だけが住んでて、その日のゲストは私だけでしたが。

焚き火周りで修練をする

そのうち火の明かりが届かない闇からふと誰かが抜け出てきた気配がしました。同じような棒を持っています。
そしてもの凄い速さと角度で突いてきます。私もギリギリで躱して反撃します。
秘術を繰り出してその闇の相手を撃破しようとしますが相手もかなりの遣い手、センチ以下で見切られて躱されてしまいますが、同じく相手の攻撃も私は体にかすりそうになるほどで見切り、避けます。
相手が互角だと逆に見事な同期が取れる動きが現れます。
どちらも息をも漏らさずして静かに攻防を繰り返しました。

ふと相手が闇に戻るとまた、炎がはぜる音と静寂が戻ってきました。
その相手は少し前の私だったのか、少し後の私だったのか。
自分で自分を倒すには昨日よりも強くないとできないこと。
武芸者に休みは無いということでしょうか。そうかもしれません。
昔山籠もり修行をしていたときにもそいつは現れました。山には不思議な力があるものです。
故に昔から山は修行の場とされてきたのでしょう。
その夜はだだっ広い大寺院の一角で寝ました。ここまで静かだったのは久し振りです。

自灯明法灯明の趣あり

翌朝は6時前に起きましたがまだ山間部では薄暗く。7時少し前にやっと明るくなりました。
軽く朝食を取り、7時過ぎに光信寺を後にしました。

令和五年弥生十九日
不動庵 碧洲齋