不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

受け身のこと

ここ数ヶ月、受け身について色々顧みています。
受け身というと、技を掛けられた人が行う技法と捉えがちですが、当流では移動手段、武技の一環と捉えています。
それだけに受け身の種類も大変多く、入門当初それらをマスターするのに四苦八苦したものでした。
現在では酔っていても(ま、酒はほとんど嗜みませんが)、寝ぼけていても受け身はできます。

故に当流の受け身は他の流儀では要求されないスペックを要求されます。
・あらゆる条件下で受け身ができること。
・音を出さないこと。
・振動を出さないこと。
・気配を出さないこと。
・受け身中に攻撃ができること。
・任意の場所に受け身ができること。
・地面に落ちているものを拾えること。
・受け身の後にすぐ攻撃に移れること。
などなど、単純に「技を受ける」以上の要件を求められる故に奥が深く難しいものがあります。
例えばクッションダンパーがある柔道場で、限りなく振動が感じられず、音もほとんどしなければ大したものです。
現実的にはそれはかなり難しいものですが、コツや要が分かれば後は精進するだけです。

今まで二人ほど、卓越した受け身の技術を持った人に会ったことがあります。
言うなればネコのようにしなやかに動ける人です。
残念ながら1人は思うところがあって道場を去ってしまいました。もう1人はアメリカ人で以前日本に住んでいましたが、現在は米国在住です。
20年近く前に彼らと知り合って以後、受け身にはかなり労力を費やして技術向上に邁進してきましたが、一向に彼らには及びません。私の方が先輩ですが恥じるところ大です。

昨日は弟子が休んだので独り稽古になりました。
1時間近く受け身の稽古をしていました。畳の上とフローリングの上。
受け身は場所によって要件が変わります。固いところでも普通に受け身ができることは当然ですが、即反撃ができるような体勢まで持って行ったり、音を立てないようにしたりと色々臨機応変な工夫を要求されます。
私はあまり古い伝書は読みませんが、個人的な感覚だと現代の方が固いところで受け身をせざるを得ない状況は多いと思います。故に現代の武芸者は更なる工夫が要求されると思います。

先ほどもうちのネコで何度も実験しました、5センチの高さから逆さに落としてもキチンと脚を着いて着地できます。
このくらう上手くなったら言うこともないのですが(笑)

受けニャゴロ
飛び降りニャゴロ
ゴロニャゴロ
ネコはまことに
優れた師なり
(笑)

令和四年臘月四日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋