不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

諸葛孔明の手紙

私は高校1年生ぐらいの時からずっと諸葛亮を尊敬して止まないのですが、諸葛亮には妹がいて、孔明三顧の礼を受け家を立つ前に人物鑑定の大家で地元の名士でもあった龐徳公に嫁いでいました。そしてその妹が産んだ子は龐渙といい、晋王朝では牂柯太守にまでなった諸葛亮の甥御です。その龐渙に諸葛亮が送ったとされる手紙が今に残されています。
----------------------------------------------------
(書き下し文)
それ志は当に高遠に存すべし。先賢を慕ひ、情欲を絶ち、疑滞を捨て、庶幾の志をして、掲然として存する所あり、惻念として感ずる所あらしめよ。屈伸を忍び、細砕を去り、咨問を広め、嫌吝を除かば、淹留ありと雖も、何ぞ美趣に損せん、何ぞ不済に患はされん。もし志強毅ならず、意慷慨せず、徒に碌碌として俗に滞り、黙々として情に束ねらるれば、永く凡庸に竄伏し、下流するに免れざらん。

(現代訳)
そもそも志は、高尚にして遠大でなければならない。昔の賢者を慕い、勝手な感情や欲望を絶ち、滞ったものを棄て、高遠である志をして、特に明らかに心の中に思う所があるようにさせ、ねんごろに心に思い浮かぶものがあるようにさせなさい。自分の意志を曲げたり伸ばしたりすることを忍び、己の感情の細かくくどいことを去り、疑問に対して問いたずねることを広くし、他人に対し疑って怨むことを除いたならば、仮に久しく留まることがあったとしても、どうして良い趣にへり下ることがあろうか。どうして成し遂げないことに患わされることがあろうか。もし意志が強固不屈でなく、感情も激しく高ぶらず、ただ何もしないで平々凡々と世俗の中に沈滞し、虚しい感情に拘束されてしまったならば、永久に普通の状態の中に逃れ隠れたまま、品行の悪い下位の状況から逃げ出せないであろう。
------------------------------------------------------
現存している、諸葛亮が書いたとされる文はほぼ全てが事務的なことばかりでおよそ散文的な内容のものは乏しく、それが逆に諸葛亮の人柄を物語っているとも言えなくはありません。その中でこの渙に送った1通と息子に送った2通だけは私的なもののためか、異色を放っているように思います。

昨日、阿部寛主演のドラマ「ドラゴン桜」が終わったばかりですが、それに通じるものがあります(笑) それでふと紹介したくなりました。

 

令和参年水無月二十八日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

f:id:fudoan_hekiganroku:20210628215114j:plain

中国の歴史ドラマ「三国志 three kingdoms」で諸葛亮演じる陸毅さん、かなり再現度が高い(笑)