不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

人種差別で目覚めたこと 一

先ほど、2018年上映の米国映画「グリーンブック」を視聴しました。以前にも観たことがあるので2回目になります。
かいつまんでいうと、ニューヨーク在住の超有名な黒人ピアニストがツアーを組み、南部を興行するに当って、専属ドライバーとしてイタリア系の用心棒を雇い、道中に色々あったと言う話です。このピアニストは欧州などで修業をしていわゆるエリートです。博士号を二つも持っています。だから音楽家なのに「ドク、ドクター」と呼ばれていました。時代は1962年頃。ピアニストは黒人で、巡業するのは南部です。当時はまだ半ば公然と人種差別が行われていた時代でした。
劇中でもVIPにも関わらずレストランが利用できない、トイレは外の汚い方、スーツを買うこともままならず、黒人は夜間外出禁止という地域を訪れた際には拘留されたりしました。その中で2人は互いに影響されあい、無事に巡業を終えたという話。この2人は共に実在していて、話も実話ベースで作られています。2人とも2013年に他界しました。死ぬまでよい友人だったそうです。

ドライバーが警察の横暴な態度にキレて警察官を殴ってしまい拘留されたとき、ピアニストはいいことを言っていました。
「暴力は敗北だ。品位を保つ事が勝利をもたらすのだ。」
自分の美学を押し通して、品位を保つというのはなかなかに難しいことだと思います。実力や能力がなくてはダメですし、それなりの財力も必要かも知れませんが(私はまずそこで躓きますね)、それ以上に人徳や品位というものが必要不可欠な気がします。自分の道でも能力だけではどうにもならないんですね。私はそう思います。

私は米国留学中、このコンビが巡業した州の大半に行ったことがあります。いわゆる「ディープサウス」と言われる米国の南東部分に位置する幾つかの州です。21歳にして初めてレンタカーを借りて、サウスカロライナ州チャールストンに行った折、レストランで不当に長く待たさせるという、人種差別を初めて受けました。腹が立ったのでマネージャーを呼べとウェイトレスに行ったら初めてビビりましたが私も凄い剣幕でしたから奥からマネージャーが出てきて無礼を詫びて、一番高いシーフードを頂きました(笑) ちなみになんでチャールストンに行ったのかというと・・・南北戦争の戦跡を観に行く為でした。南北戦争はこの街から始まりました。

それ以後、数回ほど人種差別を受けましたが、私は大抵押し通した方です(笑) 暴力沙汰にはなったことはありませんが、際どかったことはありました。まあそれは若気の至りということで。それらの体験は20年以上過ぎた今でも思い出すといい気はしません。留学前には「日本人が」差別を受けるなど考えたこともありませんでしたが、現実を目の当たりにすると色々考えさせられました。

ま、長くなったので次回。

令和参年水無月三日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

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映画「グリーンブック」のワンシーン