不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

進化と深化

長年武芸をしていると、あるとき、今まで当たり前のようにしてきたことの中に驚きの真実が隠されていたことを発見します。体の動きはもちろんですが、心理的なこと、昔からの知恵、などなど。場合によっては改めて調べると既に書かれていた事もありますが、希に誰も想い付かなかったことだったりします。前者が深化だとしたら後者が進化でしょうか。
私は既知の事象の理を深化させることによって、取り組んでいることを進化させることがあるとすれば、何かを正念工夫して進化させた結果、既知の事象をより深化させることもまた然りと考えています。日本人は割に伝統の知恵や習慣、技法を重要視します。比較的前者のケースが多いのかも知れません。

現代に生きる武芸の場合はそこから規則性や法則性、概念を取り出して社会生活に応用できたら良いと考えます。あ、これは私の師の受け売りですが。流麗で卓越した武技の持ち主はアルバイトで糊口を凌ぐ貧乏暮らし、というのはあまり誉められたものではありません。もちろん武芸で身を立てても良いのですが、武芸の理念や哲学を社会に還元して活かす方がベターです。250年続いた江戸時代、最初と最後の数十年を除外しても200年は自然災害を除けば太平の世でした。これは日本有史以降最長ではないでしょうか。その太平の世で日本の武芸は至高のものに昇華されました。その前に約100年の戦国時代があった後の250年続いた太平の世に、です。故に私は武芸は須く戦場のもののみに在らず、泰平の世にも用を成しうるべきものだと思います。(私如きが言わずとも武芸をされている方々の多くはそう認識されていると思いますが)

ただ深化にしても進化にしても、それだけでは上下に突き進むのは単調です。自然界においてはおよそ直線的なものはありません。自然界は曲線や彩りに満ち溢れています。この進化と深化に彩りを付ける要素、それは「変化」だと思います。変幻自在で流れるような変化、この要素があって古から継承される知恵"knowledge"が"wisdom"に質的変化を遂げる、そう感じます。もっともその変化も調和の取れた変化でないと、とたんに「偏化」してしまいます。なかなかどうして、正しい変化というのは難しいものです。私的には今、この「正しい変化」をいかにすべきか、色々苦慮しています。ここは精進のしどころでしょうか。

 

令和参年皐月二十九日
武神館 不動庵道場
不動庵 碧洲齋

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自然は無限の変化に富む

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