不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

聖書から

20代の後半、色々あって結構基督教を熱心に学びました。実際に日本と豪州で教会にも足繁く通ったものです。聖書は何度も読みましたし、英語版も大変苦労しながら一度、頭から全部読みました。結局、基督教徒になったわけではありませんでしたが。個人的にはその基督教の哲学に傾倒したのであって、神の存在についてはどうでもよかった気がします。

聖書の和訳は大変素晴らしいと感じます。文語訳口語訳共々、全ての言葉は考えに考え尽され極めています。その当時はそれ程感心はしませんでしたが、30代、40代になって時折比較するとその芸術的な訳出にため息が出ます。強い信仰在っての言葉だと信じられます。

聖書には非常に多くの大変優れた言葉があり、私自身、多くの言葉を抜粋してパソコンに書き留め、時々読み返すこともあります。それは文語、口語、英語と、色々な視点で読むように心がけています。実際ラテン語などができるともっとよいのでしょうけど。

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*レンブラントの「エルサレム滅亡を嘆く預言者エレミヤ」

旧約聖書の中で愛について最も心に響いた言葉があります。それは予言者エレミヤが語ったとされる言葉が綴られた「エレミヤ書」です。その中の31章第3節、

(文語訳)「私は永久の愛を以ってあなたを愛し/変わることなく慈しみを注ぐ。」

個人的には口語訳の方が好きです。

(口語訳)「私は限りなき愛を以ってあなたを愛している。それ故、私は絶えずあなたに真実を尽くしてきた。」

英語ではこのように書かれています。

"I have loved you with an everlasting love; I have drawn you with loving-kindness."

翻訳者が使用したテキストが何なのか分かりませんが、もしも英語から訳されたとしたらかなり素晴らしい訳出です。

私も現在、仕事や趣味でそこそこの量を英語で書いたり日本語にしたりしますが、到底このレベルにはありません。ただ訳すときはいつも、このエレミヤ書の訳出の芸術的センスを思い浮かべます。下手なりに魂に訴えられるような訳出をしようと努力します。ある意味、日本文化や禅仏教について英語で書くようになってからは、このエレミヤ書のこの訳出は私の英訳の原点と言えます。

平成三十年如月七日

不動庵 碧洲齋