不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

ロシア人の気質

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私は毎年ロシアに行って概ね10日前後過ごしていますが、毎回大変気持ちよく過ごしています。 その中でロシア人の民族性などをちょっと書いてみたいと思います。 ロシア人はなかなか礼儀正しい。 私はロシア語を細々と独学していますが、丁寧な表現、敬意を持った呼称などが普通に出てきます。英語の比ではありません。英語では老若男女、既知未知いずれにも「you」ですが、ロシア語では社会的に敬意を持たれている人、年配の人、知らない人、客などには「вы」、知人や家族、親しい人には「ты」を使います。「вы」は「ты」の複数形でもあります。これは日常生活でごく普通に使われています。 また、名前を呼ぶときも色々な意味で目上の人には敬称として父称が使われます。ロシア人はファーストネーム、ファミリーネームの後に父称と呼ばれる別の名があり、父称とは普通、男性だったらその人の父の名の後ろにヴィッチ、女性なら同じく「ヴナ」を付けます。 これが普通に使われていますから日本人の心証としては何かホッとするものがあります。英語にもMr. Ms. はありますが、もっと一般的な会話で使われている感じです。 交通マナーでも、他の欧米圏よりも遥かに多くの「サンキューハザード点灯」を使っています。道を譲ってもらったときなど。最近ではアメリカやオーストラリア、ドイツでも少し見た気がしますが、ロシアでは日本とほぼ同じぐらいよく使われています。ま、もの凄いスピードで走る人もいますが(笑) ただしポイ捨ては日本よりも若干多い気がします。 これは良し悪しではないのかも知れませんが、人前で異性同士はベタベタしません。ま、昨今のティーンは多少違うのかも知れませんが。夫婦であっても人前でキスとかはほとんどしません。抱擁も挨拶の時ぐらいです。普通の欧米圏を見慣れているとあまりにつっけんどんに見えますが、逆に日本の社会からすると驚くほど似通っていて、目のやり場に困ったり、居心地の悪さを感じません。 ロシア人は笑わないと言いますが、これは結構な勢いで変わりつつあります。 個人的に社会主義国的サービスでぶすっとしている人を「オールドジェネレーション」、普通の西洋諸国や日本の店員のようににこやかにしている人を「ニュージェネレーション」と勝手に呼んでいます。低賃金っぽい職業ですら、比較的若い世代の人はよく笑うようになってきたように思います。中年ぐらいの方でもにこやかなのは珍しくなくなってきた気がします。職業に関係なくなってきた感ありです。帰国時なんかは出国審査官の若い女性なんかは隣の同じく若い女性と笑いながら仕事をしていました。美人が多いのでやはり笑ってくれた方が嬉しい。「公共の場でにこやかにしているのはバカっぽい」という考えは古くなってきているようです。ロシア人が他の欧米圏に較べると結構シャイ故なのかも知れません。それだけに日本人と気が合うのかも知れません。
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ロシアにはバーニャと呼ばれるいわゆるサウナがあり、家族や知人友人らと楽しむ習慣があります。詳細はネットで調べて頂くとして、そういう意味では比較的人前で裸になることも文化のようなので、これも日本人とは気が合うのかも知れません。 私はファッションについてはよく分かりませんが、特にアメリカ人のようなド派手さとは対極にあるように思います。暖色系で落ち着いたファッションというのか。まあファッションにはほとんど関心がない私でもロシア人のセンスは好ましいように思います。
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ロシア人女性は歳を取ると太るというイメージがありますが確かに日本人からしたらそういう人は多い。ただロシア人女性の名誉のために言いますが、それなら私がいたアメリカやオーストラリアの方が肥満率はもっと高いように思います。 肥満が出てきたので食べ物の話。 ここ10-15年ぐらいは西側陣営の悪い習慣に基づくジャンクフードが脅威的に増えているようです。 一方で日本料理は大変な人気で、アジア人など全く見かけないようなド田舎のカフェでも寿司があったりします(笑)
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ロシアの一般家庭に行って接待を受けた場合に気を付けたいことは、三食腹一杯に食べないこと。日本人は(ま、大方の国でもそうだと思いますが)一度食事を食べたら次に腹が減るまで食べませんが、ロシア人は常に胃袋がアイドリング状態になっていて、「空腹感」を感じないように思います。だからロシアには巨漢が多いのに三食の量はいずれも驚くほど少ない。食事と食事の間にお茶を飲み、甘いものを食べるからです。私は結構な甘党ですがそれでもさすがに辟易してしまうこともある(笑) 寒い国だからなのかも知れませんね。でも糖分の取り過ぎはやはりよろしくない。
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もの凄く心地よい彼らの資質があります。 それは人種に対する偏見が極端に少ないこと。私が見た限りでは肌の色よりも言動や立ち居ずまいの方でより判断されます。アメリカやオーストラリアにいたときは肌の色で差別されたことがありました。また、人種で差別はしないという意志を良く感じることがあります。 私がロシアに滞在するときは、かなりのド田舎であることが多く、場合によっては観光客も来ないところです。アジア人を初めて見たと言うこともありました。田舎の街を歩いていても他にアジア人を全く見かけない場合でも、物珍しげにジロジロ見る人は全くいません。一応武芸者の端くれですから視線を感じればすぐ分かります。取り敢えず私がアジア人だからと言う理由で注目されることはまずありません。これは何度思い直しても大変素晴らしい資質のように思います。 彼らは日本人がかなり好きです。 日本人どころか普通の外国人観光客すら来なさそうな場所で知り合ったロシア人でも私が日本人だと分かると大変歓待してくれ、嬉しそうにしてくれます。シャイな柄に日本ともっとお近づきになりたいと切に思っている人は多いように思います。(ロシアは今一応民主国家の体裁を取っていますが、今なお一部の権力者が牛耳っています、だから民意=政治的決定にはなり得ません)今回の旅行で行ったロッジ村のレストランのコックさんはロシアン・ポパイのような大男で、ロシア海軍の水兵だったそうです。大変な力持ちのようで腕の太さが私の太ももぐらいありました(笑) 私が日本人と知ると何度も握手して興奮気味に「日本とロシアは日本とアメリカよりもずっと近いのだからもっと親しくならなきゃ!オレの友人が長野に住んでいるんだ。いいところらしいね。」とか嬉しそうに語ってくれました。こういう人はロシアでは全然珍しくありません。 ソビエト連邦が崩壊してロシアになってから26年になります。これが短いのか長いのか分かりませんが、今や自由に自分の足でもネットでも交流が持てる時代である割には、日本人のロシアに対する知識というか理解は恐ろしく貧弱な気がします。これだけ距離が近い国であるのに、例えば台湾や韓国、一歩譲って中国に較べるとあまりにもロシアは知られていない。個人的には未だにアメリカの意向や国民の意識が働いて接近することを阻んでいる気がしますが、今少しよく知り、もっと交流を持つべきではないかと思います。
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ロシアはとてつもなく広いですが、大陸の最北を占めているため、自然は大変美しくそして厳しい。それが美しい女性、イケメンを育てているのだと思いますが、気質的には日本人と大変なじみやすい気がします。ビザなども煩雑な手続きも近い将来に廃止され、もっと多くの人が行き来するようになってくると思いますが、日本人がもっとロシア人をよく知って好感を持つようになればいいと願ってやみません。 平成二十九年神無月十七日 不動庵 碧洲齋