私が敬愛して止まない諸葛孔明は、現在に幾つか言葉を遺しています。
その中で孔明が書いたとされる兵法書があり、その中にこんな言葉があります。
それ軍国の弊に五害あり。
一に曰く、党を結びて相連なり、賢良を毀損す。
二に曰く、其の衣服を侈にし、その冠帯を異にす。
三に曰く、妖術を虚誇し、神道を詭言す。
四に曰く、是非を専察し、私に以て衆を動かす。
五に曰く、得失を伺候し、陰に敵人と結ぶ。
此所謂姦偽悖徳の人なり。遠ざくべくして親しむべからず。
現代訳に訳すとこんな感じでしょうか。
軍や国に弊害を与え崩壊に導くのはこの5つの害である。
1.仲間を語らい、徒党を組んで、能力のある者を誹謗する。
2.殊更人目に立つような華美な衣服を着用する。
3.空虚な妖術を誇示し、神がかりな言辞を弄する。
4.規律無視し、自分勝手に民衆を扇動する。
5.損得を推し量り、密かに敵と内通する。
この手の人間は低劣で信用ならぬ。かかる連中を近づけてはならぬ。
1800年も前の中国で書かれたことがほとんどそのまま現代の日本に当てはめられるという事実。人の精神の如何に卑小なことか。今でもまさにこの通りの輩が多数跋扈している様、人類がどれ程精神的に成長したと言うのか、ある意味絶望感にさえ苛まれます。
科学がこれだけ発展しているのに、精神性は何千年前といくらも変わっていない事実を突きつけられると愕然とします。
幼児に石つぶてを持たせても高の知れていることですが、石つぶてが銃の引き金、核ミサイルのボタンだったら。現代人の置かれている状況はそのようなものではないかと。
昨今、色々あって胸中を虚しい風が吹き荒れております。
一部の暗愚な者のために息苦しくなる始末。
今の政治にも言えることではありますが。
小さな世界で龍たろうと蛇が下手な舞いをする。
夜空の星の何と遠いことかと嘆息することしばしばです。
怒りは遥かに通り過ぎて哀しみも多く。呆れ憐れみすら想います。
私自身、質素倹約を旨とし、豪華な衣服も高位の冠帯も持ちません。
智慧に優れているわけでもないので妖術もできませんし神道に詳らかではありません。
ただ星の多さと空の広さは良く心得ている次第です。
人はこのようでありたいものです。
平成二十九年水無月十四日
不動庵 碧洲齋