不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

2016年度 第3回秩父巡礼の旅 弐

翌日の天気も前日と全く同じ、雨でした。 しかも歩きにくい靴で歩いた上に新しい履き慣れていない靴を買ったため、予定を変更して長距離は避けて、26番から29番までにしました。29番から30番までは7キロもあり、万全ではない状態ではいかがなものかと思った次第。26番から29番までは1/3程度が山道で6キロ少々。前日の歩行距離の1/3程度。昼頃には歩き終える予定です。
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車は29番札所に。旅館からはものの10分程度の距離。そこから昨日同様に浦山口駅に。 昨日同様にザンザン降りでしたが、昨日よりは遅かったので既に駅員さんがいた事と、中高生たちも結構いたのがちょっと驚きでした。初老の駅員さんは私と同行にお茶を出してくれました。旅路の情けはありがたい。まだ自販機も夏物が多く、ホットドリンクがないので温かい飲み物は大変おいしかった。 山奥の学生たちだから都会の子供たちとは違うのかと思っていたが、やっぱりみんなスマホをいじっている。若干その割合が少ないと言うぐらい。田舎だからと言うわけではありませんが、素朴な感じの子供が育ってくれると嬉しく思います。 前日と違い、当日は次の駅、影森駅で降りました。秩父市は合併などで広くなりましたが、この影森駅から次の3つぐらいの駅までが市街地に相当します。それ以外は本当に山間部の駅です。
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当日最初の札所は第26番円融寺。臨済宗建長寺派のお寺です。ここの住職は私の禅の師匠の後輩になるそうです。実際去年も巡礼の帰りに立ち寄りました。今回御朱印を書いてくれたのは奥様でしょうか。感じの佳い女性でした。
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26番円融寺には山中に所属の建物があります。岩井堂と言って、清水寺のような感じの懸造のお堂です。26番から27番は山中の巡礼道になります。 山への入口はユニークで円融寺すぐ近くの昭和電工の敷地を通る必要があります。入口の守衛さんに挨拶すれば問題なく入れます。登山道はその入口から真っ直ぐ前にあり、鳥居が見えるので分かりやすく。ほぼ直線で200メートルぐらいです。実は山中への入口は2箇所あります。ひとつは琴平神社の参道を経て岩井堂に行くルート、もう一つは琴平神社を経由しないで直接岩井堂に行くルート。折角なので琴平神社経由にしました。まず参拝道んが最初からかなりの石段になっています。雨が降っていたので滑らないように登りましたが、途中にため池があり、小型の鯉が泳いでいました。
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登り切ってまず「おお」と思ったの屋根付きの土俵。周囲にきれいな道具もあったのでよく手入れしてあるのでしょう。本殿はその奥になります。 大きくはありませんがよい場所にあるためか、重厚感がありました。
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本殿横の奉納額に武道家の方のものがありました。木剣大小と鉄扇をもした木製の扇子でしょうか、それが収められていました。鹿島神社などで見た事はありましたが、まさか地方のマイナーな神社にあるとは思いもよらず。武芸の神様が祭ってあるのであればまた行ってみたいところです。 神社の脇を過ぎてまた一路山道を歩きました。秩父巡礼の札所のほぼ半分は街中にあり、それ以外でも舗装された道を通る事が8割-9割ぐらい。よって山中を歩けるのはこのルートと一番最後の札所に行くときぐらいになります。
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途中、2.3の小型の神社を通り、岩陰が開けたところに岩井堂が西の崖に面して鎮座していました。霧の中から現れた感じはまさに神々しかった。 あいにく本尊は盗難の恐れありと、円融寺に移動されていて、お堂の上は色々散らかっていたのが残念です。別の仏像を新たに造って安置するとかして荘厳して欲しいところです。
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岩井堂の裏手から更に奥に行く事ができます。真裏の岩山の上には以前は何かが安置されていたようでしたが今は何もなく、観音菩薩の旗だけが幾つか立っていました。 10数メートルだったか少し尾根沿いに歩くと少し上がったところに鉄製の観音菩薩像がありました。
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そしてその奥に修験道の祈祷所がありました。構造は至ってシンプルで、屋根はありますが床板以外は周囲は角材で形があるだけ。祈祷所の中心には木製のマニ車があって南無阿弥陀仏と彫られ、右側面には干支とその守護仏の梵字が彫られていました。最初に回したら大きなクモが出てきたのでぎくりとしました。
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ご神体に手を合わせてからしばし休憩しました。この祈祷所も崖っぷちに建てられているようですが古くはなく、割と最近に再建された旨が書かれていました。祈祷所の脇に鉄階段があり、更に山に向ったコースになっています。 今回はそこから27番札所に行くのですが、そこまで山中の巡礼道があるとのことなので歩きましたが、幸いな事に祈祷所から出るときには雨が止んでいたので今回の巡礼で初めてポンチョを脱ぐ事ができました。これは本当にありがたかった。 27番までの道は多少の起伏はあったもののほぼ尾根沿いで楽に歩けます。一番の見所は護国観音像。建立は昭和10年!私の父が生まれた年です。ちょっと面白かったのは「護国」故なのか、左手に蓮華の花ではなくて剣を持っていた事でした。ネット上にあった幾つかの秩父護国観音像は汚れていましたが、最近高水圧洗浄でもしたのでしょうか、塗り直したのでしょうか、真っ白でした。観音様の場所からは秩父市街地が一望できます。またそこから下を見下ろすと27番札所の寺が見えます。
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27番札所大淵寺にさしかかると、祠に収まった2体の不動明王の石像がありました。2体並んでと言うのはあまり見た事がありません。何か所以でもあるのでしょうか。 一番奥のお堂は月影堂と呼ばれていました。入口側が本堂のようでした。どちらでも読経をしました。
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27番を出立して、次の28番札所に向いました。28番札所橋立堂は他のお寺とはちょっと違うものが境内にあります。それは鍾乳洞。この鍾乳洞はお寺のお堂のひとつとして存在しています。従って秩父巡礼34ヶ寺で唯一、入場料を取られます(笑) 本堂はかなりの高さになる切り立った崖の真下にあります。ここは普通の観光地でもあるので、ちょっとお洒落なカフェなどもあるのですが、あいにく行った金曜日は定休日でした。御朱印をもらい荷物を置いて鍾乳洞に入りました。実は数日前の連休日に息子が友人とこの鍾乳洞に遊びに来ました。曰く「中国人観光客がものすごくうるさかったし、鍾乳洞内撮影禁止なのにガンガン撮影していて腹が立った」とか。鍾乳洞は本堂の一部と見なされているので撮影禁止です。神仏を尊び畏れる姿勢は、品位ある人としては重要な要素ではないかと思っています。
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途中にあった稲荷神社。丁度浦山口駅の前。かなりの急勾配です。
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28番から29番までのルートはこれもまたなかなかの景色でした。重力式コンクリートダムとしては日本で2番目に大きい浦山ダムの目の前を通ります。丁度雨天だったためにダムから放水されていましたが、至近で見ても白銀の美しい扇状の模様に見えたのが印象的でした。ダムの前の橋を渡るとすぐに今回最後の札所、長泉寺にたどり着きました。先に御朱印をもらいましたが、ここの庭園は大変よく整備されています。秋などに来るといいのかも知れません。私たちは且く庭園を散策して、朝に駐車した車のところに戻った瞬間に大粒の雨が降ってきました。(笑)
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残すところあと5ヶ寺ですが、約120キロある巡礼道のうちこの5ヶ寺の距離だけでその半分になります。今から想像するだけで気が遠くなります。多分後2年ぐらいはかかるのではないかと思います。 今回の旅の所感などはまた別に。 平成二十八年長月二十五日 不動庵 碧洲齋