不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

騙されてはいけない

私が取っているとあるメルマガがあるのですが、今朝はこんな見出しでした。

「日本にいながら、世界レベルのビジネス英語力を手に入れる方法とは」

・・・こういう誤解を招く表記は止めて欲しいと思う。

英語を母国語とする国家数は58ヶ国とされています。しかしながら例えばフィリピンのように「タガロギッシュ(タガログ語とイングリッシュを掛け合わせた言葉」と言われるほど、正しく使われていないところが多く、私も仕事で印度などに電話をすると、聞き取りにくいこともしばしば。

実際、国際社会でやり取りしている非英語圏のビジネスマンの中で、英語を流暢に話している人はそう多くはありません。話せた方がいいのはもちろんですし、今後も国際社会で活躍するに当って、自己投資に時間を設けられる人は更なる英語のスキルアップは勧められますが、ちゃんと通じている以上にうまくなることにどれ程メリットがあるのかと考えます。

私などは「何とかちゃんと通じている」レベルですがこれ以上は望みません。費用対効果で考えると、勉強すればそれなりに伸びはするものの、それによるメリットが甚だ薄い。これがあと20-30歳若かったらもちろんもっと磨いたかも知れませんが。

今やっている自己投資は「ロシア語」何語でも良かったのですが、比較的縁があって日本人の中で話せる人が少ないと思われたため。独学ですが、何度も躓いて諦めて、3.4年後の今、やっとロシア語検定を受けられそうなレベルに達しました。ある程度まで来たら武器の質よりも武器の数を増やした方がいいと感じた次第。ま、人にも依りますけど。

留学時代に機関銃のように英語を操る日本人の女の子がいました。日本の英会話学校仕込みだそうですが、うらやましいほど完璧な英語でした。でもその子、日本の文化の「に」の時も知らず。神社と寺の違い、天皇についてはもちろんのこと、歴史、政治、地理など、中学校レベルのことすら知らず、本人はハリウッド映画と洋楽についてはかなり詳しかったようですけど。しかもそれを全く恥じていない様子でした。さすがのアメリカ人も呆れて見下していた様子でした。

当時の私は今ほど英語はうまくありませんでしたが、取りあえず確固とした「話すべきもの」「我が身に付いていること」があって、運良くそれは日本の香りがするものだったため、それなりに認めてくれたものです。ちゃんと話せるものを持っているという事実が重要です。日本人の語学レベルに良くある「カルチャーレベル」には大いに不満ですが、取りあえずやらないよりはずっと良い。例えば海外の日本語学習者はガチで「お金になる」方便なので、皆ギラギラしています。日本人ののほほんとしたクロスカルチャー気分では全くありません。私は日本語教師もしていたので分かりますが、教えるのが下手な先生は即クレームでした。そういう意味で「日本語が話せる」外国人は相当目的意識が高いと心してください。

国際社会では相手が「流ちょうに」話せることを期待していません。「流ちょうだったらシメタもの」程度です。国際ビジネスで重要なのは「相手にちゃんと分かり、相互理解がなされる」ことです。そういう意味で日本人ののらりくらしとした意思表示は問題ですが、英語の良し悪しではありません。完璧を目指して結局全然しゃべらない日本人が多いようですが、大丈夫、相手は決してあなたが完璧な英語を話せるなんて99.9%期待してませんから。相手が期待しそうなことは「とにかく話してくれること」それだけです。そういう意味で日本人の多くが国際的ではないのです。

ここ半年ほど、息子は積極的に英語を自宅で使うようになってくれました。

言語は使ってなんぼのものです。

我が家ではあまり乱れた日本語は使わないので、「英語の前にまず日本語」なんて無駄な努力はしません。

般若心経や教育勅語連合艦隊解散の辞、徳川家康伊達政宗の遺訓など、すぐれた文は閑があるときに読み聞かせ、読ませます。

実際、ある程度まで来れば「語学のための勉強」というのは大変効率が悪いことに気付いてきます。「学習している言語」で「何か」を学ぶのが効率的です。

うちでは私のロシア語学習の一環で、片言の言葉はロシア語にしています。ありがとう、さようなら、ごめんなさい、おやすみ、おはよう などなど。子供が多言語に囲まれた生活環境にあることはそう悪いことではありません。

特に日本社会では多言語を生活の中に取り込む必要がないほど濃密で高度なものだったため、意識して取り入れないことには多分使う機会もなく。どれ程かは微妙ですが、今後は今の割合よりは他言語を使う機会が増えるはずですから、我々日本人が英語を初めとした外国語に慣れ親しむという努力は決して無駄ではないはずです。それならせめて学校で習った程度でいいので、十全に使えるよう、日頃から楽しく使って学べる工夫をしたいところです。

写真は留学時代に訪れた米空軍基地のB-1爆撃機

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平成二十八年如月二十五日

不動庵 碧洲齋