不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

息子のパスポート

昨日、息子のパスポートを見てしみじみ。実は息子は11歳にして既にパスポートは2冊目(苦笑)。最初の取得は妻がサイパン日本語教師として赴任する際に同行した3歳の時!約1年の滞在で、父が他界した折に一時的に帰国しました。計2往復。

2冊目は2回のロシア旅行。ビザまで取りながら行かなかったのが1回あるので、親子揃ってハンコが押してないきれいなロシアのビザが1ページあります。

で、来月はオーストラリアに約2週間の初単独旅行。私に先駆けること10年です。11歳にして私が想像する以上に海外に行っているな、というのが正直な感想。

日本の外に行ってみる、観光旅行であってもこれはとても意義深いことですが、息子の場合は最初が在住、ロシアは観光と言えば観光ですが、普通なかなかできないロシアの一般家庭に滞在したり、長距離列車に乗ったり。今度行くオーストラリアでもホームステイです。普通の観光以上に色々と見てきています。

私の祖母が「戦争が起きてしまって自分の夫が死んだのは、互いに良く知らなかったから、コミュニケーションが足りなかったから」と言って以来、40年少々、ひ孫はこのくらい世界を知るようになりました。

一族の思いというのは結構強いものだと思っています。私自身、子供の頃から何となく国際的な社会に身を投じるような予感はありましたが、20代の半分は海外にいて、今でも毎日英語漬け、毎週どこかしらの国の人と会うような生活になるとは思っても見ませんでした。多分息子が大人になる頃はもっと日本が世界に溶け込んでいるような気がします。私が息子に何か説くときは、日本がもっと世界に溶け込んだ時の、日本人としての有り様を見据えています。日本版ノブレス・オブリージュを根ざした教育を、息子には施しています。

海外にいると日本がよく見えるというのは間違いなく本当です。日本人の立ち位置もよく見えますし、世界的な評価も分かります。海外故に日本に対して無知な部分もある一方で、「よく見ているな」と感心するところもあり。もちろん、行った先ではその国を直接感じることができます。地理的要因で日本ぐらい先進国なのに外国人との接触が苦手な国も珍しい。車でサッと国境を越えるということができないだけに、飛行機に乗る、海を越えるという面倒で大層な儀礼通過が外国を遠くさせていることは間違いないでしょう。昔に比べたら海外は遥かに近くなりましたが、それでも多分、欧州人たちの感覚には遥かに及びません。なかなか海外に行けない人はその自覚だけでもあれば、良いのではないかとも思います。ただやはり、上記の理由から、多少無理をしてでも一度といわず何度かは海外に行って肌で感じてみるべきです。

同じ民族だけで70年も戦争もなく、顔を付き合わせているから、昨今ウンザリさせられるような祖国礼賛や過激な愛国主義、アンチ日本国に対する過剰な反応があるのだと思います。どうにもこうにも一般的な日本人には異国とやっていく上での熟成度がいまいち欠けています。バランスが悪いというのか慣れていないというのか。

控えめに言って理想に燃える高校生、悪く言うと中二病のような感じです。

そういう意味で日本人はもっと深く広く外国人と接してみるべきです。日本に来ている外国人でも構いません。一人二人とっ捕まえて仲良くなれば、後々でも良い関係を保てるかも知れません。そんな簡単なこともせずに日本人同士で日本語だけで日本礼賛やアンチ日本国の批判をしていてもただの格好悪い内弁慶、ヲタROMです。世界で高い評価を頂いている日本国民に全然相応しくない。

オーストラリアから帰ってきたら息子はもう一回りたくましくなると共に、私を通さない自分だけの感覚で見聞して考えられるようになると思っています。

ま、息子は火星探査まで見据えてますから、もしかしたら地球の大きさなどはさほど大きく考えていないのかも知れません。

平成二七年水無月五日

不動庵 碧洲齋