不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

再犯率に思うこと

ここ最近、凶悪事件が発生していて気分が悪くなりますが、以前からずっと気になっていたことがあります。

犯罪者は刑に処せられて懲役刑なら刑務所にて服役します。

・・・それだけでなのですが、何が言いたいかというと「再犯率」について・・・

どうも社会世論を見ていると、最近は何でもかんでも厳罰化傾向にあって、何と言うか社会の寛容さがなくなってきています。この辺りはアメリカ社会と同じ方向性なのだそうです。もちろん犯罪には厳罰で挑むべきですが、それなら厳罰の服役を終えたら社会は一般人とほとんど同じぐらいに遇すべきです。それがいやなら刑を軽くしてその後、生涯に亘ってレッテルを貼り続けるとか。どちらかを選ばせてもいいとは思いますが。

人道主義に基づいて言っているわけではなく、我が日本の人口は減りつつあります。モノに例えるのはいささか無礼千万ですが、不良を起こしてしまった製品が修繕を終えて世にまた出てきたとき、それを大過なく再利用できるような社会が望ましいと思うのです。またまたモノに例えて恐縮ですが、中古車で事故歴があってもちゃんと直せば売れます。ちゃんと直せる人がいるからです。自動車販売業界ではそういうインフラが確立されています。私はそこが重要なように思います。

今の刑務所を見るに(私は警察関係ではありませんが)、どうも懲罰が先に来ています。懲らしめることが重要でそれ以外は余り重視されてない気がします。もちろん被害者からすれば懲らしめないわけにはいきませんし、場合によってはこの世から抹殺してしまいたいほどに思うことでしょう。しかしそういう憎悪の念が限りなく理性によって処理できればこその文明社会です。服役中に懲罰を与えると同時に再犯させず、かつ人間としてのスペックを少しでも上げることができたらこれは社会にとって決して不利なことではないでしょう。

日本の再犯率は5割だそうです。刑務官の皆様の努力の半分は水の泡です。もっと簡単に言えば私たちの税金は刑務所では半分が浪費されていると言えます。どうでしょうこの現実。少年犯罪に関して言うと少し減って45パーセント前後だとか。でも多いですね。世界で最も再犯率が低いノルウェーでは驚くことに12パーセントだそうです。つまりノルウェーでは犯罪をした人でも比較的容易に社会復帰ができて、かつ再犯する人が少ないことで税金の無駄遣いを抑えている。素晴らしいことだと思います。

教育とは文明国にあってはその国の知恵が集約されたいわば奥義のようなものです。

効果があるかどうか、です。一般社会では日本はまずまず世界的には優れていますが、服役囚の教育では大したことがないと言えます。しかも半分がまた戻ってくると言っても世の中でお騒がせをしてから戻ってくるのですから、お騒がせの場合も警察が動きます。つまり再犯5割というのは警察も法務も1人の為に少なくとも2回以上稼働させているという、大変効率の悪いことをしています。再犯率が1割ぐらいだったら警察官も刑務官などももっと減らせる上に世界中でも世間体がよくなり、労働人口維持にも一役買えます。いいこと尽くめです。

ノルウェーで12パーセントですから日本でもできなくなさそうな気がしますがどうでしょうか。

そういえば「鬼平犯科帳」でおなじみの鬼平こと長谷川平蔵も囚人の社会復帰を織込んで作った人足寄場という施設を作りました。昔から心ある人はそういうことも考えていたんですね。

ちなみにこれがノルウェーの刑務所の紹介、こんなところなら私も行きたい(笑)

http://frihet.exblog.jp/17985465

繰り返しますが、被害者の心情は計りきれません。

特に人を殺めた場合は何をしても生き返りませんから、尚更です。

私だって息子を殺されたら行じている禅なんてクソくらえ+ランボーターミネーターになってしまうかも知れませんけど。

一番簡単なのはハンムラビ法典のようにやられたら完全対等な仕返し以上の事は禁じるようにするのがいいのですが、そこから理性的に進歩しての文明社会です。

犯罪者を許せとは何とも腹立たしくもあり、気安くそんなことはしたくもありませんが、犯罪者全部が情状酌量の余地無しと言うほど凶悪なのかといえば、逆にそんなことは希でしかなく。

この寛容さ、理性の向上こそが国家が真剣に取り組むべき永遠のテーマかと。

私は法の専門家ではありませんが、凶悪犯罪には厳罰で挑んだとしても、逆にそれ以外は社会に還元できてかつ再犯が起らないような懲役の在り方であって欲しいと思います。

国連が採択して、日本を含めた多くの国が批准している「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の第10条第3項には『刑事施設の目的が更生と社会復帰である』ことを明記しています。世界的にはやはり更生と社会復帰を謳っている以上、日本は社会全体でそのように力を入れることはできないものかと、思ったのでした。本当に難しい課題だとは思いますが。

平成二十七年弥生五日

不動庵 碧洲齋