不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

人種差別について

黒人少年射殺、大陪審の不起訴処分に暴動発生

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141125-00000531-san-n_ame

人種差別に遭ったことはありますか?

「日本人」というブランドは世界的には強烈な位に高いものなので、日本人が悪い意味で人種差別を受けるというシチュエーションはきわめて少ないと思いますが、それでもパスポートを掲げない限りは他国人にはなかなか分かろうハズもなく。

私は米留学中にも豪州赴任中にも何度か人種差別を受けたことがあります。

人種差別というのはある意味1人で抗しきれるものではなく、実際にそうのような目に遭うと意気消沈して反撃する気も失せてしまうほどです。ましてや英語をある程度自在に使いこなせなければ尚更。

よい意味で(名誉白人とか)差別されても、後々までいや~な気分にさせられます。

ネット上でよく見かけるネトウヨさんとか保守系の人で一体どれだけ人種差別に遭ったことがあるのか興味があります。まあ、差別をしたことはあってもされたことはほとんどないなと言うのが正直な感想。私自身、例に漏れずご迷惑な中国人やご迷惑な韓国人には大変辟易させられていますが、さりとて中国人全部、韓国人全部を嫌うほどには至りません。そういう柔軟性がない人は恥ずかしいので国内向けに不平不満をばらまくに留めて欲しい。

留学時に一番面食らったのは、寮の食堂にて、黒人と白人がハッキリと座る場所を分けていたところ。どちらが専用というわけではなく、何となくハッキリと棲み分けている感じです。どちらも通りがかりに挨拶をするので険悪な感じではありません。

困るのはアジア人。日本人の他、中国人(当時はとても少なかったですが)、台湾人、韓国人、その他東南アジア人は一体全体どちらに座るべきか。白人学生の中には日本人留学生「だけ」快く受け入れる人もいたのですが、普通の感覚でそんなことされて喜ぶ日本人がいるはずもなく。逆に気分悪かったです。

仕方ないのでアジア人などで固まって座っていることが多かったのですが、当時はバブルの絶頂期、アジア人は皆、日本人を頼りにしていることもありましたが、日本人にはそれも迷惑。ほとほと困りました。

旅行に行ってホテルとかで身分証明書として日本のパスポートを見せると、「アンタホントに見たんかい!」というくらい適当に見るくせに、それ以外のアジア人だと事細かにチェックします。他のアジア人と旅行に行くとこれも気分が悪かったですね。他のアジア人学生たちはうらやましそうでしたが、これは日本人だって気分が悪い。

21歳になり、初めてレンタカーを借りてサウスカロライナ州チャールストンに行った折、夕食を食べようとシーフードのレストランに行った時のこと。若い女性のウェイトレスに案内されて席に着きましたが、以後30分も無視されました。後から来ている客には非常に愛想よく注文を取るのに、私が呼んでも「ちょっと待って」と言ったまま一向にやってこない。さすがにこれはもしかしてかの有名な「人種差別か」と実感しました。ちなみにチャールストンに行ったのは、南北戦争の火ぶたが切られた場所だったから。私の怒りも火ぶたを切りました。席を立ってレジまで行き、ウェイトレスに「ちょっと責任者かオーナーか弁護士を呼んでください」と言いました。行った私もちょっとどぎまぎしましたが、言われた側はさすがにちょっとマズイという顔をして「じゃあ注文を伺います」と返してきましたが、態度が悪かったので、今度はやや語気を強めて同じ事を言いました。幸い彼女はビビって事務所にすっ飛んでいき、マネージャーらしき人を連れてきました。そこで私は一連の説明をしました。(さりげなく日本人であることも言いました・笑)米国人が私に対して平謝りしている姿を見たのは多分後にも先にもこのときだけです(苦笑)。ウェイトレスのお姉さんとマネージャーさんが真摯に謝るので許しましたが、お陰で店で一番高いシーフードポットをただでいただきました。正直に言うとザマアミロという感じでした。あ、味はよかったですよ。

当時も今も、学校等の施設で人種差別発言や人種差別的態度を取ると、法律に触れるところもあるそうです。(多分ほとんどの州で)大学の授業で一度、非常勤講師のジイサンが従軍慰安婦問題で(当時は世に広められてきたばかりかな)激怒して「日本人は戦争のことを何にも知らないんだ、ばかものめ」みたいなことを言って、さすがに教室中の学生全員がシラけたことがあります。(まあでもパールハーバーが真珠が取れる湾だと言ったアホ日本学生がいたのも事実なんですが)授業後に数人、捨て台詞を吐いて軽蔑のまなざしを残して出ていった米国人学生がいたので、私もそれに倣い「戦争のことを良く知っていたら核兵器を使ってもいいんですか。」と言って出ていこうとしたら、キレて「日本人如きが何を言うかキサマー」みたいな感じで怒鳴り散らし、教壇を蹴ってひっくり返したので、反射的に冷静に軽蔑のまなざしになってしまい、そのまま出ていきました。ちなみにその老講師は朝鮮戦争時代は士官でした。次の授業では打って変わって老講師は平謝り。「あの後家で妻にこのことを話したらものすごく怒られて口を利いてくれなかった。また学校では人種差別に関するいかなる発言も懲罰もので、法にも触れてしまうんだ。前回私はどうかしていた、どうか許して欲しい。」年金生活ができないのかなんなのか、理由にも笑ってしまいましたが許しました。まあ日本のネトウヨよりは健全な気がしましたよ。なにせ本物の戦争従事者でしたから。

黒人の生活に関して、確かに貧しい生活を送っている人が圧倒的に多い。

豪邸ばかりのブロックの隣のブロックでは、日本の借家並みの大きさの家がひしめいていたり。日本の貧富の差もどんどん開いてますが、それでもアメリカほどではないような気がします。今のところ。

たしかにそれでは貧しい人が犯罪をするのもよく分かります。それに乗じて黒人全部を悪く見る人がいるのも事実です。学校の先生にもそういうのはいました。

あるヒッピー系の女性講師なんかは「黒人の脳の容量は白人よりも少し少ないの」と真顔で言ってました。あまりにも真顔なので「じゃあアジア人はどうなんですか」と聞くと「日本人は脳の容量には因らないみたい」と、これまた真顔で答えたので少し困りました。

話が逸れましたが、普段から黒人のストレスたるや非常に大きなものです。それでも今でこそ表面上、もしくは法的には差別はありませんが、米国社会では今でも厳然と存在しています。特に中西部や南部ではまだ強烈かも知れません。逆にボストンなどの街では人種差別感はかなり希薄なように感じます。

一番いやなのが、仕事に貴賤を付けているところ。これは日本以外の多くの国に当てはまります。日本にだって職に貴賤を付ける人もいますが、他国の差別はそういうレベルではない、と言えます。多分日本の文化には「職人文化」があるがために、その道のプロに対してはどんな職であろうとある程度敬意を持たれる事が多いのかも知れません。しかしこのまま日本も貧富の差が開いてきたら分かりません。しかし今のところ、職ではなく人の品位に貴賤を付けようとする日本の文化はまずまずいい線をいっていると思います。

今の日本のステータスを築き上げたのは少なくとも150年ぐらい前、開国後に努力した先人たちのお陰であることを知るべきです。昨今ではあまりにも軽薄な言動のために日本の品位を損ない、ステータスを下げている人も見受けられます。それと一番愚かなのは日本人同士で特定の国に対して単に誹謗中傷すること。具体的な対策も無し、相手を納得させるためでも無し、単に不平不満をぶちまけているだけというのは何とも品がなくていけません。今の日本人の言動が100年後の日本の品位を決めます。家族があり、子供を持っている人ならその未来が実感として分かると思います。

いかなる場合においても人種差別に関する言動は品位を欠きます。

ましてや世界に冠たる日本人がそのようなことをするのは世界の国から失望を買うことは間違いありません。

本気で高貴な国の人間だと思うのであれば、それに相応しい言動を心掛けていただきたいと思います。

平成二十六年霜月二十五日

不動庵 碧洲齋