不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

稽古時の身だしなみについて

よく武芸者の中には長い髪を束ねている方がいます。また、仙人よろしく、髭を伸ばしている人もいます。

これは以前、当流の宗家も言っていたことですが、本物の武芸者としてはこれはあまりお勧めではありません。

実戦的に言えば、簡単に掴まれます。頭には脳を始め重要な感覚器官が内蔵されている上に、首という細い部分でつながっているだけです。故に相手になるべく掴まれないようにするのが賢明です。

当流では鼻の穴や口、目や耳に指を突っ込んで確保するということもしますが、髪の毛が一番掴みやすいことは言うまでもありません。

確かにザンバラで長い髭を蓄えているといかにも武芸者には見えますが、そもそもそういう風に見られた時点で負けです。孫子にも書いてありますが、戦いは始まる前に勝ち、後に戦うのが最善です。ケンシロウラオウみたいなワコい風体でいたら、現実にはせずともよい余計な争いごとまでも吸い寄せてしまいそうです。

私的には知らない人が隣で拳ダコなんか見せたら最後、決して近寄りません。

当流の先代宗家は親戚や隣ですら、本人が武芸の達人だったとは知らなかったそうです。

私もHPやFB、ブログで随分エラそうなことを書立てているのでその段階ですでに失格ですが、たぶん、昔の本当に凄腕の武芸者は隣にいても気付かないものだったと思います。

そういう意味でも、ボロい胴着やすり切れ過ぎた帯をしている方もある意味、自己満足や自己主張したい方なのではないかと思います。ま、あくまで程度の問題ですけど。

私の場合は10年に1回、胴着を買い換えています。今の胴着は3代目です。2代目はまだ健在ですが、生地が厚すぎてあまり使い勝手が良くないので現在のものを愛用しています。

現在の胴着も3年後には買い換えようと思っています。何と言うか節目のようなものです。

胴着をしょっちゅうダメにする人がいます。まあ、私の稽古量が抜きん出て多いとは言いませんが(笑)。初代の胴着は16歳から25歳まで着ていましたが、あっちこっちほころびたり、切れたりしていました。2代目は生地が厚かったのでそういうこともほとんどなく、3代目、今のは薄い生地の胴着ですが、ほとんど破損なしです。

個人的な感想ですが、下手な人ほど胴着がよく破れるように感じます。海外からの出稽古に着ている外国人を見ても、うまい人ほど胴着が比較的きれいです。つぎはぎだらけ、帯もボロボロで印象に残るほどうまかった人はあまりいません。(希にはいますけど)

その人が道場に入ってきて着替えて受身などの準備運動を経て、先生の受けを終えたぐらいには、大体その人の力量が分かります。私はうまい下手よりも、自分にとって為になる稽古ができそうな人と組みます。自然、ひどい胴着を着ていたり、ザンバラの人と組むことは少ないと言えます。(古参だとそうばかりは言っていられませんが)

特に外国人が非常に多い当流です。その千差万別さは他の古流を遥かに凌ぐものがあり、それはそれで当流の悩みの種でもありますが、そういう根本的なところを観察することで自分の力量を上げる愉しみもまたあるものです。

平成二十五年霜月二十日

不動庵 碧洲齋