不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

器の大きさはハーロックから学んだ

「さようなら銀河鉄道999」をご存じの方、いらっしゃると思います。

映画版「銀河鉄道999」の続編として造られたものです。個人的にはこの続編の方が好きです。あのパルチザンの戦いぶりが実にカッコ良かった。沖田艦長を除くとジイサンになったらあの老パルチザンのようになりたいと今でも思っています。

そして星野鉄郎の父の驚愕の秘密。

かのキャプテンハーロックとかつて戦友だった父が、今は黒騎士ファウストとして機械化帝国の重鎮となっていた。どうしてそうなったのか?ずっと疑問に感じていました。巷でも何故そうなったのかハッキリしたことは語られてないと思います。松本零時先生も納得のいく形では説明していなかったと思います。

結婚して子供ができてから答えが分かりました。

黒騎士はハーロックやエメラルダス、トチローと違い家族を持っています。美人の妻に可愛い息子がいました。機械化人と戦っているうちに疑問を感じたのだと思います、今戦っているこの瞬間も、家族は飢えや寒さに苦しんでいる。限りある人間の命が尊いというなら、妻子たちの今の有り様は正しいのか。ハーロックのように失うものがない者にはたぶん分からなかったと思います。

私の周りにもカッコ良いことを言う人はいます。壮大な理想論を述べる人もいます。しかし人と言わず生き物は皆、子孫をうまく残して次の世代に繋げてなんぼのもの。子孫とは限らず、偉大な功績だったり知恵とかそういうものである場合もありますが、そんなのはごくごく一部、普通多くはちゃんと子供を巣立たせている親の方がずっとエラい。(笑)だから現実論としてはハーロックよりもそこいらのお父さんの方がエラいのです。

私が同じ立場であっても、同じ決断を下す可能性は極めて大です。雄大でピュアな理想を夢見る前に、自分の家族ぐらいちゃんと養え、という現実です。もちろん歴史上には家族を犠牲にして事を為した人もいますし、そういう人でも大いに尊敬されている場合もありますが、そもそも英雄を真似ろというのは少々イカれた人を見習えと言っているような場合が多くあります。結局人は、平凡なことを徹底する、それをしてきた人が多かったからこそ、人類は絶滅もせずにしぶとく生き残っています。これから先は分かりかねますが。

黒騎士がこの決断をしたとき、ハーロックが快く理解してくれたことが私のハーロック信仰を深くさせています。再会の折、「友よ」とためらいもなく言っている、この器の大きさ、信を違わぬ固さ、これあるからキャプテンハーロックはアニメで随一、私が尊敬できるヒーローなのです。違う人は許さない、去った人は認めない、異を述べる人は信じない、これでは漢というより人としてなり立っていません。ま、若かりし頃は私もこんなだったのですが、年齢と共にやや丸みが出てきた、少しばかりの違いは飲み込めるようになった気がします。気がするだけで、本当にそうか分かりませんけど。ともあれハーロックは「敵味方」でモノを観ない心の寛さを持ち合わせています。私は少年時代からそういうハーロックに憧れ続けてきました。

これはスタートレックで言われていたことだったと記憶しています。「無限の多様性にこそ無限の可能性がある」異星人と一緒に働いている世界ではこういう言葉も出るものだと、私はいつも心しています。なるべく異を唱え、反対側に立つ人を理解する努力を放棄しないように心掛けたいと思います。

平成二十五年神無月三日

不動庵 碧洲齋