不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

私が見た中国人 弐

今の会社に入って初めて中国に行きました。中国で一番イカす都市と言われている上海です。

上海の空港に着いて、中国工場から来た迎えのバスに乗り、空を見てみると、なにやら摩訶不思議な天気。曇りのようでもあるし、霧がかかっているような感じもするし。現地のドライバーさんに聞くと「気にしない。タダのスモッグだから」と素っ気ない返事。私は内心「ぎゃ~」と叫びました。何かさっきから肺が押し潰されそうな息苦しさを感じていました。季節にも依るんでしょうけど、金曜日土曜日がMAXにひどくて(到着したのは金曜日)、週末を挟むとまた多少天気が良くなり、週末にかけてまた、どんどん天気が悪くなっていくという繰り返しでした。

上海の街。確かに近代的です。しかしドライバーは野獣かと思うくらい恐ろしかった。特にタクシーの運転は狂気的でもありました。未知は絶対に譲らず、ウインカーなんて出す人もほとんどなし。一番参ったのは何でもないのにずっとホーンを鳴らし続けていること。いつでもどこでもです。こっちは気が狂いそうになります。

タクシーでもオバサンのドライバーはとても親切で丁寧な運転でした。

上海も展示会でしたが、展示会会場のマック、絶対にクオリティを維持していないだろうに!飲み物は2.3種類しかない上に最初から氷が入れてあって飲み物をつぎ足すので薄まっている。ポテトは冷えてひからびている。ハンバーガーは冷たくなっている。それを受け取るのに30分以上も待たされた。もちろん割り込みもたくさんあった。(中国人の名誉のために言うと、忍耐強くちゃんと待っていた中国人も大勢いました。)

毎朝、ホテルの外を散歩しましたが、驚いたこと。ものすごい数の清掃員さんが早朝から掃除してました。あれはみんな税金で雇っているんでしょうか。しかし夕刻にはまた歩道がメチャクチャ汚くなります。あと分からないのが道路のど真ん中に尿が撒かれていたこと。ど真ん中ですよ?人なのかペットなのか。

公園では年寄りたちが太極拳とかやっていたのには感心。日本でも同じぐらいの高齢者も健康に気を付けてますね。

書店がない。ホテルは中心地に近く、毎朝それぞれ東西南北2キロぐらい歩いたのですが、ほとんど書店がなかった。雑誌スタンドだけだった。見過ごしただけなのか?それが一番異常に感じました。

横断歩道を渡るのは命がけ。どんなに気を付けていても1.2回引かれそうになった。あちらのドライバーはマジ怖い。

ホテルで働いていたスタッフは割に皆、いい人でしたよ。

部屋の片付けに来ていた年配のおばさんなんか、笑顔で挨拶してくれましたが、顔を見て良い人だと思いました。家にいる子供のために一生懸命に働いているんだろうなと思ったものです。最後の日には十分なチップを置いていきました。

食堂で給仕をしていた若い人たちも懸命に仕事をしていました。じっくり見ていましたがいい加減な仕事をしている人はいませんでした。みんな真面目に仕事をしていました。客として来ていた中国人の方がやや態度が悪かったぐらいです。

ホテルの玄関で。みんなタクシーを並んで待っていたのに、横から勝手に乗った不届き者がいました。西洋人の中年の女性です。待っていた中国人の若い女性は最初、礼儀正しく「私が並んでいたんですが・・・」と言ったのにその西洋人は全く無視してドライバーに「行って!」とだけ言っていたようです(遠かったので分かりませんが)。女性が更に何か言おうとすると、西洋人は軽蔑したような目つきで何か言い、タクシーのドアを締めました。私はその時の西洋人の表情が忘れられません。多分、西洋人が持つアジア人への偏見そのものなのでしょう。確かに中国のマナーはひどいですが、あの場は絶対にあの西洋人が悪い。日本人がそういう風に軽蔑されることがなくなって割に長いですが、同じアジア人が軽蔑されていい気はしません。日本人は皆、そういう風に感じて欲しいと思います。

上海では有名な観光地、豫園に行ったときのこと。豫園は東京で言うと浅草みたいなところでしょうか。

土産物を買うので、茶器の店に立ち寄りました。店主のご主人は英語はダメそうでしたが、そこのお嬢さんが良く英語を話しました。多分中学生ぐらいでしょうか。彼女もきっと英語を話す機会を持ちたかったのか、色々話しましたが、その商魂たくましいこと。1500元の急須があったのですが、どう考えてもそんな値段ではありません。散々値切って500元で買いましたがそれでも本人は嬉しそうでした。オイオイ元値はいくらなんだよ(苦笑)。まあ、なかなか可愛らしい女の子で、生意気でなかったら完璧だったのにと思ったものです。もっと負けられると思いましたが時間もなかったので500元で買いました。

次は石印の店。これは私も思わず唸ってしまったほどに素晴らしいものでした。若い女性が経営していたのですが、抜群の技量。聞けば国家工芸師?のような資格があるとか。他の土産店で売っているような、次いでの品ではありません。間違いなくプロの技量です。100元で小さめの「不動庵印」を彫ってもらいました。今でも使っています。

このとき中国語が堪能な社員と一緒でしたが、せっかくなのでパクリショップにも行きました。道を歩いていると、小さく畳んだカタログを持った人が時々アプローチしてきて、ササッと見せて「どう?」と言ってくるのですが、そのうちの一つに行ってみました。商店の横の狭い路地を通り、ずっと奥張った外見は一見ボロアパートの扉を開けると、中はきれいに内装がしてあるパクリショップでした。完全に違法なんでしょうが、周囲にはアパート型違法パクリショップの巣みたいなところです。何も買わないと無事に出してくれなさそうなので、仕方なく差し支えないようなものを買いました。バッグの部屋とか靴の部屋、時計の部屋と色々分かれています。外側は本当にぼろいアパートです。それらを売っている人たちの何人かは多分、麻薬中毒者だと思います。魂が抜け落ちたような目のうつろさで分かります。米国で何度か見たことがあります。そうではない人も何か大事なものがごっそり抜けてしまったかのような表情がとても印象的でした。

弊社の社員。日本にも研修で来たことがある人もいますが、言われたことは割にキチッとこなします。が、何故それを言われたのか、何故それが重要なのか、それをすることによってどういう影響があるのか、という指示に至るまでと遂行後の影響について、全く思いが及ばないところには驚かされました。また、日頃から疲れないようにするのが習慣なのでしょうか、しょっちゅう座り込みます。体力がないからなのかも知れません。打たれ弱いのかも知れません。体調を保持するという点ではなかなか感心で、あまり冷たいものを飲み過ぎたりしません。またうちの会社の給料が低いというのもありますが、質素倹約です。

上海にいる間、キワドイ話もしました。共産党のこと政府のこと歴史のこと。普通はそういう話はタブーですが、私はこういう話に運んでいくのは割にうまいです。私自身、皇軍がしたことは全部正しかった、などというバカな考えはしません。略奪とかはほとんどなかったと思っていますが、そもそもよその国に軍隊を送り込んでいる時点でアウトです。よその国もやっているからうちでもやる、という思考形態もアウトです。日本は立憲君主制でしたから少なからず民意が反映されていたはずです。民意がその程度だったと言うことは問題でした。天皇陛下のせいにできないのはもちろんのこと、責任を余所に転嫁することもできません。これが専制君主制下にない国民の責任という奴です。欧米人なんかと同じ土俵に上がっている時点ですでに欧米列強と同罪なのです。そういう切り口で語れば相手も分かろうというもの。共産党政権下の大虐殺や理不尽な検挙、などなど、若い人たちには決して政府は認めないであろう歴史上のことや、今まさに起っていることなど、我慢ならぬ事は多々あります。普通に会社で働いている人たちは小市民です。やはり日本のサラリーマンと同じく、搾取されて腹は立っています。ちなみにチベット問題に関してもなかなかよく知っていて、憤りを感じている中国人も多くいるようです。ただし自由にものが言えないことにストレスを感じるようです。特に外資系企業に勤めていると、政府の発表やマスコミの報道がどれだけ偏向されているのかよく分かるそうです。そういうことに無関心であったり、無視するほど、中国人もひどい人はそう多くはありません。ひどい人はお金持ちには多いようです。

うちの会社の社員(事務方)はさすがにそれなりに日本人と比べても大きく遜色はありませんが、中国では要するに民度とか教養とか収入の格差がとても激しいのです。ジニ係数で0.5以上と言いますから暴動が起きないのが不思議なくらいです。(ま、実際は毎日起きてますけど)ただし格差というのは日本以外の国ではそれなりに多くあります。米国でもありました。私には日本人が格差ができることに恐れを抱いているように思います。私も貧乏はイヤですけどね。

出張中、ホテルに泊まったときのことです。夜にドアをノックする人がいました。

清純な感じのする若い女の子で、何か用事があったようでしたが英語も通じないので追い返しました。

更にもう一回。今度はいかにも売春といった感じの英語ができる女の子でした。

(と、そこで初めて最初の女の子もそういうつもりだったのかと気付く・笑)

なんでホテルに入ってこられるんだよ、と思いつつ、病気でもうつされたらたまらない、お金もないし、という実利的な意味で追い返しました。多分、ホテル側でマージンでももらっているのでしょう。結構いいホテルですよ、ちなみに。

人が集まると色々な商売が成り立つのでしょう。

海を隔てているという距離は、昔はほどよい距離で本格的に侵略もされなければ孤立もしない距離でした。しかし現代では地理的な距離は科学技術によって大きな問題ではなくなってきましたが、それだけに犯罪や領土問題で摩擦が大きくなってきています。中国に詳しい私の友人の言葉ですが、ここはひとつ人為的にでもある程度距離を置いて付き合うのが一番ではないかと言っていました。私もそれ以上の名案が思い付きません。幸か不幸か今の中国人と、歴史上、日本人が尊敬している中国人とは全く別物だと思っている以上、そういうことは不可能ではなさそうに思います。

ただし相手を知る努力だけは怠らないようにして欲しいところ。どうもネットではショッキングな事件や苛立たしい、つまりネタになる事件ばかりが賑わっていますが、実際に会ってみないと分からぬ事もたくさんあります。現実に例えば豪州に赴任したとき、私のホストファミリーは私は家では着物を着て、毎日魚とか寿司を食い、武道の達人だと思っていました。(ま、最後の奴は別として)日豪ですらこの程度です。日本人も中国人もどの程度実像を把握しているのか、心許ないものがあります。そもそも反日国家と言ったところで、普通の国よりも2.3割多いだけで、全国民の過半数よりはずっと少ないはずです。例えば韓国、一応選挙をして民主国家モドキですが、国民の過半数反日だったら本当に貿易が止まります。日本は困りませんが、あちらが困るのです。だから政府と一部が激しい反日でも、日本のおかげでご飯が食べられる人、日本が関係なくても反日を叫ばなくても問題ない人が大半です。まあ、政府が言ったことに対しては心になくても同調せねばならないという古くからの風習はあるかも知れませんが。

中国もそうです。都市部の一部だけでそう叫んでいるのだと思います。しかも彼らは統制されたマスコミ、ネット社会に生きています。それを何でも自由にものが言える日本に住んでいる私たちと同じように考えては少々可愛そうな気もします。研修生が日本に来たとき、日本のネットを見せてあげたらかなりショックを受けていました。規制されていることは知っていたようですが、規制されている部分がどんなものなのか、想像も付かなかったようです。そういう人たち相手に大人げない罵声を浴びせるよりも、こちらが冷静になって手抜かりなく備え、大人の対応をしていれば相手から襤褸を出してくる、そんなものだと思います。しかしながらこれだけの大国がまた王朝交代劇のような動乱にでもなったら周辺国が迷惑するのは間違いないでしょうね。そんなときほど日本の真骨頂が分かろうというものです。そしてそれはそう遠くの話ではないと思いますが、次の政権が共産党、更に前の専制君主王朝と異質なものになるかと言えば、残念ながらそう思えないところに中国の悪い伝統があります。普通の国はどこでもそうですが、日本のように江戸時代から明治時代のような切り替えは簡単にはいかないのです。

中国というと長い歴史がある国だと思われていますが、私はこんな風に考えます。

国は国家と言います。国と民がいての国家だと思っています。

伝統ある古い家があります。そこに劉さんとか楊さんとか李さんという家族が住んでいました。家族が住み替える度に内装をがらりと変えます。現在は共産党という会社がオフィスとして使っているかも知れませんが、やっていることは同じ事です。だから家は古いかも知れませんが、それだけであって、内装も違えば住んでいる人も違います。

一方日本はずっと昔から皇室という主が日本という家をずっと守り続けてきています。住んでいる人たちも間違いなくその家族の子孫です。

そういう違いです。現実に中国にどのくらい伝統的に古いものが残っているのか。ニュースでは良く古い史跡を間違って破壊してしまったというニュースが流れます。つまり同じ家でも別家族の民衆には古いと言ってもその程度の価値なのです。

現実にギネスブックには世界で一番古い国は日本ですし、同じく世界で一番古い家系は我らが皇室です。

非常に長くなりましたが、うまくまとまりません。しかし私は今まで中国人たちと接してきてこのように思いました。

平成二十五年葉月七日

不動庵 碧洲齋