不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

私が見た中国人 壱

私は15歳の時に始めて中国史を知り、以後今までずっと中国史中国哲学を愛読し続けてきました。これは現在に在っても変わりません。三国志や秦末の動乱で活躍した英雄たちは、日本人にとってもやはりなじみの深いものだと思います。

幸か不幸か、現代の日本人は今の中国と歴史上の中国をかなりすっぱりと分けて観ている点が救いとも言えます。孫子論語老子韓非子を読んでいたからといって反日分子などと思われたりしません。そもそもビジネスマンなら孫子の一つも読んだことがないと恥だと思われるほどです。

こういう救いようがあるところに、活路があればと思いつつ、私が実際に会ってきた中国人たちについて書いてみたいと思います。

私が初めて中国人と会ったのは20歳の時、留学時でした。

多分30-40歳ぐらいの男性。今思えば彼はきっと公費留学とか、そんな感じだったと思います。当時留学をしていた中国人はとても少なく、東アジアでは日本人、台湾人、韓国人が多くを占めていました。(その三者はかなり仲が良かったと言えます、今はどうか分かりませんが)多分、今は中国人がとても多いんでしょうね。この辺りは日本人の内向性を悲しく感じます。

服装は共産国家共通だと思うのですが、とてもダサい。韓国人が何とか見られるようになってきたといった時代でしたが、別段ファッションセンスに敏感でもない私がみてもダサかったのだから相当なものだったのでしょう。

Mr.Wさんということにしておきます。中国史マニアだった私はWさんと速攻親しくなり、そのうちに彼を私の寮の部屋に招待しました。(彼も寮に住んでいました)部屋に入れると私はずらりと並んでいる、わざわざ日本から持って来た徳間書店・中国思想シリーズを見せました。(何しにアメリカまで来たんだか・苦笑)しばらくじっとそれを見ていたWさんは深いため息をついてから私に言いました。

「碧洲齋さん、あなたはまだ大昔の蒙昧な迷信を信じている可哀想な人だ。」

やおらジャケットの内側から手帳サイズの赤い本を取り出しました。最初、その言葉に私は全く理解できず、ぽかんとしたままでした。

「それだけ君が中国が好きなら、これを読むべきだ。そんな本を読んでいたら本当に頭が悪くなってしまうぞ。」

手帳を見せてもらいました。結構使い込んでいましたが、何が書いてあるかは字面で理解しました。いわゆる「毛沢東語録」という奴です。正直普通にドン引きしました(笑)。彼は冗談でも何でもなく、親身になって言ったので、余計に引きました。

以後、何人かの中国人に会いましたが、さすがに彼のような人は少数でしたが、逆に中国史についてはかなり無知な人が多いようでした。一度などは若い中国人の女の子に「孫子って知ってる?」て聞いたら「grandsonって意味でしょう?」って真面目に答えられてしばらく立ち直れませんでした。ま、日本の女子高生に日本の歴史的な書籍を尋ねても同じなのかも知れませんけど。

このW氏、すっごくわがままで自分勝手だということが判明しました。一度、当時通っていた英語学校の学生50人ぐらいでバスを借りてショッピングモールに行って映画を見ようと言うことになったのですが、W氏は時間になっても来ず。呼びに行ったら「気が変わった。行きたくない。」とのこともちろん謝るでもなく。みんなカンカンでした。以後、何度か誘っても3回に1回はドタキャンしていたのでその内誰も誘わなくなりました。私も疎遠になりました。

韓国人に比べて中国人の方が洗練されていないのは事実です。台湾人までくると日本人とほとんど変わりません。米国や豪州、または欧州では中国人の評価はあまり高くありません。中華街は犯罪地区の代名詞と言われても差し支えないほどですし、実際、豪州では中国人居住区を通らねばならないときはスピードを上げました。そのくらいには危険だという認識でした。

ニューヨークには2回ほど行きましたが、その際チャイナタウンというところにも行きました。今までチャイナタウンというと横浜の中華街のようなところをイメージしていたのですが、実際に行ってみてビックリ。取っても薄汚くて怖い。多分その国の雰囲気が現れているんだと思います。

これは豪州に赴任したときも同じで、中国人居住区というのはとてもすさんでいた感じがします。ちなみにお金持ちの中国人は全然違うところに住んでいます。メルボルンのチャイナタウンは割にきれいでしたが、それでもやはり夜はかなり危険だとか。赴任中、中国人にも日本語を教えていましたが、ちゃんとした家庭を持った方などは、全然違うところに住んでいましたね。やはり教養の高い人ほど群れないと言うことでしょうか。

私が勤めていた日本語学校と同じフロアで中国人の学生起業家がいました。一部屋を借りてプロバイダー会社を設立するという学生2人です。多分資金とかは親から借りたのでしょうが、ものすごい意欲です。日本人学生などお子様です。こういうハングリーさは見習いたいものですが、パソコンのことでちょっと困って相談しに行くと、1人はいつもツンケンして相談料いくら、作業料いくらとか言ってきます。あまりに何度もあるので私はそういうときには女性の同僚にお願いすることにしました。日本人女性の笑顔というのはこれでなかなか強力です。ツンケン君もタダで色々やってくれました。その時、中国人ってこういうところは単純で純情なのかと思ったものです。数年後、彼らはもっと広いオフィスに引っ越してしまいました。

日本語学校の会計士も中国人でした。そいつもやはりすごくハングリーで、まあ、よくドラマに出てくるようなトンがってハングリーさ丸出しの感じでした。一度などは何かのついで、彼の車に乗せられて顔見知りの中華料理店に行き、大盤振る舞いされ(ってあまり食べる気もしませんでしたが)、そこで成功する方法とか大儲けするためには、とかそんな話を1時間以上。挙げ句には「俺は友達なんて要らないけど、社会で生きていくためには仕方なく人脈を持っているだけだ、ドライだと思うか?でも成功者は人情深いっていうのは絶対に嘘だと思う。」と熱烈にまくし立てていたので、多分そいつを見てから中国人があまり好きではなくなったのかも知れません。

21世紀になってから、中国の台頭とともに耳を疑うような蛮行や下品な行為が毎日ニュースに流れます。他国での中国人の態度に比べたら日本に来る中国人観光客の行動はおとなしいと感じます。これで犯罪も少なければもっといいのですが。犯罪者には犯罪天国のように映っているようです。

ドイツである国際展示会に行ったときの話。私が勤務していた会社のブースの横が中国のメーカーのブースでした。陶器関係だと思います。スーツを着た中国人が2.3人と留守番とおぼしき中国人のオバサンが1人。こういう工芸品関係の展示会では著作権などが非常に厳しく、広大な会場を弁護士とガードマンのグループが幾つも巡回しに来ます。それがまた怖くて、やってくるときはスーツでビシッとと決め、デカいバッグを手にした弁護士さんが怖い顔をしてガードマンや会場スタッフに守られながら「ザッザッザッ!」と、憲兵のように歩いてくるんです。まあ、先進国のメーカーはほとんど眼中にないようで、しらみつぶしにチェックを受けるのはほぼ全て先進国ではない国々のメーカーやお店。

ある日、朝からお隣さんは留守番のオバサン以外誰も来てませんでした。・・・ただし先の弁護士軍団がそのブースを取り囲んでいました。中国人のオバサンは英語も話せないらしくオロオロするばかり。後で聞いたらやはり悪質に著作権侵害、簡単に言うとパクリですな、を数点やっていて、弁護士が差し押さえしようとしたらオーナーたちは捕まる心配のないスイスまで逃げてしまったんだとか。(会場から高速鉄道で2時間半です)色々算段を付けてきてから2日後に何食わぬ顔で戻ってきましたが、さすが中国人と思いました。

ひどい中国人ばかりではなかったですよ。目の前のやはり中国人のブースでは、なかなか可愛らしいお嬢さんたちが幾人かいたので、ひとときの会話を楽しみました。若い世代は、特に海外に仕事に来る人たちには過去の歴史ってどうでもいいというのが多いように思います。・・・ま、そこの社長も成金丸出しだったのが気に入らなかったけど(苦笑)。

平成二十五年長月七日

不動庵 碧洲齋