不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

口を開くときは北京の中心にいるつもりで!

政治的な話しはしばらく書きたくないと言ったのですが、気が変わりました。取りあえず書かねばならないと思った次第。

先日の麻生副総理の発言。全文は最後に記載しますのでご覧下さい。

副総理が言った内容自体は概ね歴史的事実に基づいているようですが、今回の騒動はそういう意味ではありません。

私は欧州諸国の友人と、ナチス問題について語った事が何度かあります。

イギリス、フランス、スペイン、ドイツ、ポーランド、オランダ、イタリア、ロシア、デンマーク、ざっとこんな感じでしょうか。当事国と周辺国の人たちです。

言わんとすることは分かりますし、それには賛成ですが、用いた例がかなりまずかった。

日本人だけが気付いてませんが、世界で日本の何が一番恐れているか、それは一国家一民族が非欧米圏にあり、しかもそれは世界でも米国に次ぐ経済的な影響力を有していること。白色人種じゃない人種がすごいものを作って全世界に影響力を与え続けてきている。先の大戦核兵器を投入してまでボコボコにしたのに、気付いたら欧州全部の国を足したぐらいの経済力になっている。彼らにとって非白人圏、非基督教圏の民族が台頭していると言うことはそのくらい不快なことでもあります。

それでも日本が世界に受け入れられたのはやはりそれは日本人が持っている資質故。黙々とよいものだけを造り、なるべく迷惑をかけず、常に最高品質を追い求めて、可能な限り誠実に実行しようとする。そういうことがある意味当たり前だという信念、習慣を持っている日本だからこそ世界中で受け入れられています。

逆に言えば、そういう素晴らしい点も、欧米人によっては一皮むけば凶暴な非基督教圏の人間達だと思われているかも知れません。欧米人は何世紀にも亘って世界中の多くの国々を何世紀にも亘って支配してきましたが、それを当たり前のようにしています。一方日本は70年前まで併合なのか植民地なのか分からないほど、受け入れた国の約半分(つまり1カ国ですかね)から肘鉄を喰らわされています。悲しいことに慈悲のつもりか、やったかどうかも定かでないことまで、言われるがままにやったと認めたりする人もいます。それはまさに自白強要の様相です・・・と言いたいのですが、そこが欧米人にはとても理解しかねるところ。高額な資金援助をしているのにゴリ押ししてくる謝罪の要求に何度も応えたりする辺り、どうも日本人というのは自分を勘定に入れない崇高な民なのか、祖国愛のないバカモノの集団なのか、欧米人には少々理解しかねるものがあると言われたことがあります。私も理解に苦しむこと多々あります。己を無にする辺り、禅にも通じてますな(苦笑)。遠回り、バカ正直でいて、実は一番正解な道を歩んでいるんじゃないかとさえ思えてきます(笑)。

日本人には沈黙は美徳、自己主張したり、己を喧伝することは恥ずかしいことだと思っていても、欧米人からするといいものを造り、よいサービスをしていても、自己主張しない国民は不気味に映っています。もちろん日本人は相当プラスの評価を受けています。そもそも北朝鮮を除けばマイナス評価が優っている国は2カ国しかないのですから、大したものです。これだけ世界に強力な影響を与えておいて反日国家が2カ国というのはかなりの好成績じゃないでしょうか。

そういう自らを慎み戒め、誠実に精進することが世界に信用を持たせ、受け入れてくれる要素なのに、今回の発言は少々面倒な問題になりそうな感じもします。

ここにきてまだ麻生さんの発言を擁護する方をネットで何人か見かけましたが、まあこれが日本人の平均的国際感覚レベルなのか、とため息が出ます。悪いことは言わないので、そういう人たちは一度、欧州数カ国の方々と話す機会を持たれるとよいでしょう。この件に関しては、欧州人と日本人の感覚は結構ずれてます。残念ながら容易に外国と行き来ができない我ら日本人の国際感覚というのは、往々にしてぶっ飛んでいる場合がかなりあります。英会話教室が増えてネットが使えるようになり、web翻訳も少しは使えるようになってきたので、多少はこのズレを改善するかと思いきや、あまり変わってなさそうな気がします。残念ながら。この辺りの感覚さえ冴えていたら、多く語らずとも日本人の地位はもっともっと上がると、私などは思うのですが・・・。

一方で全文をよく読まずに一部だけ切り取って鬼の首を取ってきたかのような愚かな人間も大問題です。いつぞやの森元総理の「神の国発言」なんかは呆れました。あれのどこが問題だったのか。よほど悪意がないとあら探しはできません。

ちなみに日韓問題、日本も韓国も火に油を注ぐばかりにどちらもネットではヒートアップしてますが(ま、大方ヒートアップしているのは韓国ですけど)、世界的に見たらこの問題はかなりローカルで、しかもどうでもよい問題です。日中問題はよくニュースにも出ますが、日韓問題を取り扱っているニュース番組はあまり見たことがありません。(当然、来日する友人らの関心も非常に少ない。これが現実というものです。)

副総理の地位にある人がお気楽に語ってよい内容(例)ではないというのが今回の私の感想です。ちょい悪オヤジ系のスタイルは好感が持てますが、もうちょっと口を開くときは、大気汚染と言論統制がとんでもなくひどい北京の中心にいるときぐらい、用心して下さい。

以下、麻生副総理の発言全文

『僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。そして、彼はワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ。ここはよくよく頭に入れておかないといけないところであって、私どもは、憲法はきちんと改正すべきだとずっと言い続けていますが、その上で、どう運営していくかは、かかって皆さん方が投票する議員の行動であったり、その人たちがもっている見識であったり、矜持(きょうじ)であったり、そうしたものが最終的に決めていく。  私どもは、周りに置かれている状況は、極めて厳しい状況になっていると認識していますから、それなりに予算で対応しておりますし、事実、若い人の意識は、今回の世論調査でも、20代、30代の方が、極めて前向き。一番足りないのは50代、60代。ここに一番多いけど。ここが一番問題なんです。私らから言ったら。なんとなくいい思いをした世代。バブルの時代でいい思いをした世代が、ところが、今の20代、30代は、バブルでいい思いなんて一つもしていないですから。記憶あるときから就職難。記憶のあるときから不況ですよ。  この人たちの方が、よほどしゃべっていて現実的。50代、60代、一番頼りないと思う。しゃべっていて。おれたちの世代になると、戦前、戦後の不況を知っているから、結構しゃべる。しかし、そうじゃない。  しつこく言いますけど、そういった意味で、憲法改正は静かに、みんなでもう一度考えてください。どこが問題なのか。きちっと、書いて、おれたちは(自民党憲法改正草案を)作ったよ。べちゃべちゃ、べちゃべちゃ、いろんな意見を何十時間もかけて、作り上げた。そういった思いが、我々にある。  そのときに喧々諤々(けんけんがくがく)、やりあった。30人いようと、40人いようと、極めて静かに対応してきた。自民党の部会で怒鳴りあいもなく。《ちょっと待ってください、違うんじゃないですか》と言うと、《そうか》と。偉い人が《ちょっと待て》と。《しかし、君ね》と、偉かったというべきか、元大臣が、30代の若い当選2回ぐらいの若い国会議員に、《そうか、そういう考え方もあるんだな》ということを聞けるところが、自民党のすごいところだなと。何回か参加してそう思いました。  ぜひ、そういう中で作られた。ぜひ、今回の憲法の話も、私どもは狂騒の中、わーっとなったときの中でやってほしくない。  靖国神社の話にしても、静かに参拝すべきなんですよ。騒ぎにするのがおかしいんだって。静かに、お国のために命を投げ出してくれた人に対して、敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。静かに、きちっとお参りすればいい。  何も、戦争に負けた日だけ行くことはない。いろんな日がある。大祭の日だってある。8月15日だけに限っていくから、また話が込み入る。日露戦争に勝った日でも行けって。といったおかげで、えらい物議をかもしたこともありますが。  僕は4月28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だからと、靖国神社に連れて行かれた。それが、初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、毎年1回、必ず行っていますが、わーわー騒ぎになったのは、いつからですか。  昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。 憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。 ぜひ、そういった意味で、僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、しかし、私どもは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)のなかで決めてほしくない』

平成二十五年葉月二日

不動庵 碧洲齋